しつけ・ケア

イヌに教え、教えられ 第33回 「怖い」を「期待」に変えていく

 

イヌに教え、教えられ

第33回
「怖い」を「期待」に変えていく

今回は、トレーニングを担当することになったミニチュアシュナウザーの「おん」とMさん家族から教えられた話。

「おん」は、散歩中に他犬を見つけると強く吠えてしまう。
他犬が遠くにいても、一度吠え出すとなかなか止まらない。
このままでは、「おん」もMさん家族も気が休まらず、散歩が楽しめない。

話を聞くと、小さい時に噛まれてから他犬を怖がるようになり、吠えるようになった「おん」。

「不安」「怖い」

自己防衛のために、他犬を追い払いたい気持ちが、吠える行動のきっかけになっている。
「叱って吠えることを止める」やり方でも効果があるかもしれないが、おんの「怖い」気持ちを放ったまま行動だけ変えれば、ぶり返す可能性も高い。
そこで、好きなこと(もの)を使ってトレーニングをすることにしました。

まずは、「食べ物」
【方法】… 他犬を見つけたら、オヤツで気を逸らしすれ違う。
距離が遠く離れていれば吠えないこともあるが、距離が近づくと「食べ物が好き」より「他犬が怖い」が勝って吠えてしまう・・・
食べ物では難しい。

次は、おんが大好きな「オモチャ」
【方法】… 他犬を見つけたら、おもちゃを見せ、遊ぶ。
反応がとてもいい。
それまで反射的に吠え出していたおんが、オモチャ遊びをしたくてこちらを振り返るようになってきた。「他犬が怖いから吠える」が、「他犬を見つけたらオモチャ遊び」という期待に変わりつつある・・・
一つ壁を越える感触が得られた。

ゴールは、まだまだ先にある。
それは、おんが今まで他犬に吠えてきた数の倍「吠えないで遊べた」楽しい成功体験を積ませる必要があるからです。

私がおんをトレーニングする時、私自身が他犬に会いたくて会いたくて、他犬を探しながら歩きます。
でも、Mさん家族は、他犬を見つけたときまだ慌ててしまうようです。
それはそうです、今までの積み重ねがあり、失敗させたくないという気持ちもある。
何年もの間、他犬に会ったら吠えるしかなったおんの気持ちや、散歩に連れ出したくてもその一歩が重かったであろう家族のことを考えると何としても軌道に乗せたい。

いつか、Mさん家族が他犬を探しながらおんと散歩したくなるように。

 

2017年7月28日掲載

 

イヌに教え、教えられ
第32回 しつけは、家族みんなで

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第34回 親に教えることは難しい

里見 潤

里見 潤

投稿者の記事一覧

(さとみ じゅん)

ドッグコーチ

1975年、横浜市生まれ。2004年、警察犬訓練校に入学、出張トレーニング会社を経て、保護活動団体「Dog shelter」の専属スタッフとして、保護犬のトレーニング、一時預かり家庭と里親家庭の間に入り、アフターフォローを担当する。
2012年7月より独立。出張、及び預託トレーニングを柱に活動する傍ら、保護犬の一時預かりを継続中。
 
日本警察犬協会公認訓練士
ジャパンケネルクラブ公認訓練士
東京都動物愛護推進員

 保護犬預かりを主に、トレーニングのことを書いている里見潤さんのブログ
 「イヌと歩けば。」http://setahachidog.blog.fc2.com

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