はじめに
ガンドックレスキューCACIは、千葉県動物愛護センターに収容された鳥猟犬を引き取り、新しい飼い主を探す活動を行っています。現在の日本では、猟犬は「狩の道具」であり、狩の現場で飼い主が放棄してしまうことが多いのです。これらの猟犬たちは、動物愛護センターに保護されますが、鳥猟犬を家庭犬として引き取ってもらうのは難しく、多くの犬たちはガスによる殺処分によって命を終えてしまいます。
ガンドックレスキューは、このような鳥猟犬たちを一匹でも多く救いたいと、保護活動を行っています。
●活動の概要
平成5年度より、千葉県市川市塩浜護岸沿いの捨て犬(三番瀬の犬達)のレスキューを始める。 平成20年度より千葉県動物愛護センター登録ボランティアとなり、イングリッシュ・セッター、ポインターを主に保護活動を行っている。
●保護の状況
・シェルター
市川市福栄:アパート2部屋 現在保護頭数 20頭
市川市行徳:アパート1部屋 現在保護頭数7頭
・市川市の金子さんのご自宅
保護頭数 猫20匹 犬14頭
・三番瀬護岸
餌やりリリース猫 7匹
CACIの活動を始めるまで |
-シェルターは2年前にはじめられたのですか。
この場所では2年前からですね。本当にこのCACIという名前でこのシェルターを借りてというのは、実際は3年ですが。最初の一年というのは、物資庫に使っていました。物資をおいたりとか、数頭の保護犬をおいたりとか。2008年の3月に本格的にガンドッグレスキューの名前で活動を始めました。ガンドッグだけの専門レスキューと決めたのは、その年の8月ぐらいです。でも、最初の保護犬はポインターでした。
-この会は2代目でしょうか。
CACIというのははじめてですが、もとのコンパニオンアニマルクラブ市川というのが、2代目です。ガンドッグレスキューCACIというのは、2年前です。ただコンパニオンアニマルクラブ市川は、前の代表からだとたぶん35年ぐらい続いているのではないでしょうか。私で、今17年目になります。私の前に、私より年上の代表が一人でやりだして、仲間が館山と東京に散らばっていって、離れているけれどもその人達と連携してやってきていました。私が会を継いだときには、館山のボランティアさん達とつながっていましたので、富津港からフェリーで横浜のボランティアのところまで、船に乗って犬を届けに行きました。
-今は、それが合体しているのでしょうか。
いえ、今はその当時のボランティアさんとはあんまり関わりがなくて、新規に立ち上げてボランティアさんを集めて、その方達と一緒にやっています。前の代表と私の活動の拠点は館山でしたので、私の活動自体は館山が主でした。
私が活動をやりはじめたのは、三番瀬での保護活動からです。その時に集まってくれたメンバーの写真が後ろにあります。ここにのっている人達がもともとその三番瀬という海のほうの活動に参加してくれたみなさんで、その方々を引き連れて、ガンドックレスキューの活動をはじめました。
-その館山などの団体は残っているのですか。
個人的な活動は残っています。もともとそこにシェルターがあったんですね。そのシェルターを運営されていた方が、私が当時行き始めた頃は84歳でしたので、高齢になって引き上げられて、今は北海道の老人ホームに行かれて、年に1回帰ってきます。土地を売り払うときに「金子さん、このシェルターをやらないか」と言われたんです。ちょうど三番瀬をやりはじめた時でしたので、「買わない?」と言われて、600坪ぐらいあって、200万円だったんです。今となっては買っておけば良かったと思いましたよ。すごい犬舎、パドックがあって、ドッグランがあって、すごくキレイにされていました。でも本当にそうなったら、やっぱりあのときは離婚しなければいけなかったかなと・・・。今はもうなくなってしまっていますが・・・。
CACIの活動 |
-スタッフさんは、シフト制でしょうか。
そうですね。朝当番とか夜当番があります。その合間に、今日は病院に行く子が誰が担当だとか、そういう感じで決めています。
-だいたい会の事業経費とかはどのような具合でしょうか。
ひと月70万円ぐらいです。
-そうするとだいたい年間では、その12倍ぐらいでしょうか。
ただし、それが医療費で変わってきてしまいます。たとえば去年は年間通しての医療費が180万円だったとしますよね。ところが、たった2頭でも年間で180万円を超える医療費になってしまうこともあります。病気の種類によって金額が大きく変わってくるので、保護頭数で経費が決まるわけではないんですね。
治療方法によっても、年間の経費がすごく変わってきます。不治の病になってしまったら、一頭分の医療費が半年で90万円になることもあります。お金がかかるから治療しない、そんなことはできないですよね。苦しませるために保護したわけではないですから。
私は最新医療で生かそうとは全く思っていないのですが、緩和をしてあげて楽に最後の時を迎えられるサポートをするだけだと思っています。ですから、このような経費は最新治療をしてもらったがための金額ではないわけです。それでもやはり検査をしてもらったりお薬がでたり、手術があったりはやむを得ない。ですから、だいたいどのぐらいあれば一年間足りますかと聞かれても、何とも言えないですね。
ただ、ここの家賃などは決まっているので、最低限自分が用意しておかなければいけないものというのはあります。それ以外のものについては、その子その子によってです。ですから、この子たちの具合が悪くなり、自分で負担ができなくなったときには、インターネットを使って呼びかけます。自分の手の中で面倒を見られるならば、その子に限っては声をかけてはいません。自分がその子を全部受ける覚悟で保護センターから引き出していますから。
-活動費というは、基本的には金子さんが出しているんですか。
いまはカレンダー販売による収入があります。それと、あとはやっぱりみなさんのご寄付が大きいです。私の持ち出し分というのは、本当に我が家で看取る子達数頭分で、ここにいる犬たちはみなさんの寄付で生きています。この子の手術もみなさんのご寄付でさせていただいて、本当に手術しなければ死んでしまうところでした。心臓の血管に虫が詰まってしまい、フィラリアの除去手術をしました。それをしなければ、たぶん一週間も生きなかったと思います。
-そういう方がいるとやっぱり助かりますよね。
このような活動は、やはり一人ではできないことです。どれだけ今、私ががんばって仕事をしても、それは無理です。私の家だけで犬を保護するのでしたらできますが、シェルターを運営して、アパートを他にも借りてということになるとちょっと難しいなと思います。
この鳥猟犬の問題は、財源的なこともあって、本当に苦しいです。でも、この問題に取り組まないと、いつまで経っても、絶対に変わらないんです。私の命が終わるまでには何の答えも出ないと思います。しかし、鳥猟犬の問題は、命が終わるまでは声を大にして言い続けたいことです。やはり、実際に猟をされる方も全国にいらっしゃるわけですから、その方達の意識改革がなされないと、この問題は解消されないんです。
とはいえ、決してハンターの方が全員悪いわけではないです。ここにも支援者の一人として、自分も猟をやっているという方が実際に来てくださっています。その方のワンちゃんも連れて来られたのですが、ちゃんと愛されています。鳥猟犬でも、しつけの入り方も違ければ、やはり違うんです。この施設の犬たちもそうです。その方も「これだけ多くの猟犬が、千葉、埼玉、茨城、群馬、栃木で出てきているということ自体がおかしいし、模様も色も似たり寄ったりだ」ということをおっしゃっていました。「猟をやる自分達もそういうことを伝えていかなければならないし、やはりマイクロチップの重要性もわかる」と言っています。
いろいろな方に、よくメールで励ましていただいています。レスキュー活動に参加するにあたって、どのように手伝ってよいのかわかっていらっしゃらない方も多くいますが、そのような人からフードを安く買えるお店を知っているよとか、「○○」だったらここで買えるよとか、インターネットでここに呼びかけてリンクを貼ってもらったらいいんじゃないかとか、いろいろなアドバイスをいただくようになってからは、活動が広まってきています。
CACIの犬たち |
-今、こちらにいる子達の犬種を教えてください。
イングリッシュ・セッターとイングリッシュポインターですね。
ミックスもいます。ミックスの中でも近い種であれば、今まではセッター・ポインターならレスキューしていました。一頭残らず収容されたものは全頭検疫をお願いして、ワクチンを打っていただいて、全部引き出していました。昨年末、11月ぐらいからは引き取った子の問題行動が見えはじめたので、自分で本当に対応できるかどうか確認してから引きだすようになりました。かわいそうだけれども、中にはやっぱり助けられなかった子もいます。鳥猟犬はセッター・ポインター以外、ビーグルやラブラドールもいるのですが、全てはできないので犬種を決め保護をしています。
-ビーグル犬などもでてくるのですか。
千葉県は多いです。特に館山、房総ですね。今もそうですが、私が木更津と館山の活動を20年前にやっていたときに、一番多い犬種がビーグルでした。飼っている人も多いです。それから千葉県はラブラドールがすごく多くて驚くほど毎回入ってきます。
-鳥猟犬としてはいってくるのでしょうか。
いいえ、家庭犬かもしくはブリーダーの親として使えないとか、産ませられないとか、売り物にならないといった犬たちがたくさん入ってきます。イングリッシュセッターとイングリッシュポインターに関しては、過去に飼い犬だったという子は少ないですね。猟犬としてかフィールド競技をする競技犬として育てられたという犬が多いです。
―競技犬として大会に出場させるような飼い主さんでも捨ててしまうことは多いのでしょうか。
この施設の子達がそうだったんです。猟をやるときのタイプがあるらしいのですが、この奥にいる白黒の子たちはやっぱり実猟の訓練が入っているみたいです。競技でも実猟でも訓練が思うように入らない、逃げる、迷子など理由はさまざまだと思いますが、こうして保護する現実が全てを物語っていると思います。