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イヌに教え、教えられ 第21回 得か、損かで考える

イヌに教え、教えられ

第21回 得か、損かで考える


今、私が一時預かりをしている保護犬シェリは、推定 8 歳メスのシェットランドシープドッグです。
穏やかで人当たりも優しく、8歳という年齢から日々のお散歩などの運動量も適度にあればよいので、飼い方のポイントさえ分かっていれば、イヌと暮らすことが初めての家族にこそ向いているタイプのイヌでした。
でも、シェリは里親を希望する家族とのトライアルがうまくいかなかった経験が一度ありました。
 
ハウスでぐっすり寝ていても、ちょっとした刺激で「ハウスから出たい!」 と吠え出すことがあるシェリ。
早朝や夜は、イヌの吠え声がとても響きます。
飼い主にとって、大きな吠え声は、近所迷惑が気になる。
シェリが、自分たちを困らせようとして吠えているのではないと分かっていても、近所のを考えると慌て焦ってしまう。そんな家族は、吠えるシェリに声を掛けなだめ、ハウスから出してしまったようだ。
 
イヌの「要求吠え(何かをして欲しい吠え)」に対し、声を掛けたりなだめる対応は、イヌに「吠えたら構ってくれた」意識を持たせてしまう。その結果、吠える行動がより増えてゆく。
逆に、こうして吠えた時、イヌを構わず・見ず・声を掛けず・知らんぷりすれば、イヌは「吠えても構ってもくれない」=「吠える意味が無い」とイヌは考えます。
さらに、イヌが落ち着いている時にハウスから出すようにすれば、イヌは「静かに待つ方が得なのだ」と考え、吠える行動は減っていきます。
 
「要求吠え(何かをして欲しい吠え)」を減らすには、イヌにどうすればしてほしいことが叶うのかを教えてあげるのがいちばんの近道です。
損得で考えるなんて可愛くない!と思う方がいるかもしれない。
でも、こうしたイヌの行動パターンを知らず、困る行動をとるイヌを可哀想となだめたり、感情的に叱ったりすれば、イヌに間違いを理解を与えてしまう。その結果、困る行動はますます増え、最終的にそんなイヌを捨てる人もいるのが事実です。
「損得」から起こるイヌの行動パターン知っていれば、お互い気持ちよく生活出来るヒントになる。
 
イヌが、損得を考えたっていい。
だって、彼らはそのままで十分可愛く、愛情深く、人を魅了する素晴らしい存在なのだから。
ボールを投げして欲しくて、ちょこんと座って待つシェリは、現在家族募集中です。

 


 

2015年7月24日掲載

 

イヌに教え、教えられ
第20回 相手を知る

イヌに教え、教えられ 第22回
手段を選ぶとき優先するものは

里見 潤

里見 潤

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(さとみ じゅん)

ドッグコーチ

1975年、横浜市生まれ。2004年、警察犬訓練校に入学、出張トレーニング会社を経て、保護活動団体「Dog shelter」の専属スタッフとして、保護犬のトレーニング、一時預かり家庭と里親家庭の間に入り、アフターフォローを担当する。
2012年7月より独立。出張、及び預託トレーニングを柱に活動する傍ら、保護犬の一時預かりを継続中。
 
日本警察犬協会公認訓練士
ジャパンケネルクラブ公認訓練士
東京都動物愛護推進員

 保護犬預かりを主に、トレーニングのことを書いている里見潤さんのブログ
 「イヌと歩けば。」http://setahachidog.blog.fc2.com

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