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ゾウが絶滅する?

ゾウが絶滅する?

    


 いま、野生のゾウが絶滅の危機に瀕していることをご存じでしょうか?
アフリカのサバンナで、群で生活するゾウの姿を映像などでご覧になることも多いでしょう。大きな体をもつ、地上最大の動物と言われるゾウ。子ゾウがライオンなどに襲われることはあっても、生存を脅かすような天敵はいません。生態系の頂点にいるともいえるゾウが、絶滅の危機に瀕しているというのはどういうことなのでしょう。

アジアゾウの姉弟 (C)WTI

◆生態系のカギをにぎるゾウ
 ゾウはベジタリアンで、さまざまな植物の葉や茎、根、果実、葉のついた枝や樹皮など、さまざまな部位を食べます。1日に30〜40kmも移動し、その間にたくさんのフンをすることで、広い草原に種をまき、そこにはやがて新しい木々が育ちます。また、大きな体で草を踏みしめ、低い木をなぎ倒して森の中を移動するゾウの通った後には、「ゾウ道」ができます。そこはほかの動物たちの通り道になるだけでなく、日の光が入り、新たな草が育ちます。
 こうして、草原の中に森ができ、森の中に草原ができるのです。森と草原が絡み合った大地には、多様な生き物の世界が展開していきます。ゾウはまさに、生態系のカギを握っているといえるのです。


アフリカゾウの母子 (C) 田中光常

◆ゾウの生態
 ゾウは、母親と子どもからなる「家族」を中心とした群で暮らします。群れのリーダーは母ゾウ。親、子、孫の3代、時には姉妹とその子どもたちも一緒に群を作っていることがあります。年取った母ゾウは、水や食料のありか、安全な場所などを熟知しており、リーダーとして群を統率します。オスのゾウは12〜15歳くらいになると家族の群から離れ、単独行動をとるか、オス同士で群を作ります。群のメンバーはとても強い絆をもっており、群全体で子どもを守り、生活します。
 このように、ゾウの社会は人間の社会とよく似たところが見られます。非常に高い認識力を持つとも言われ、人間の顔や言葉を見分け、聞き分けることもできると言われます。


◆絶滅の危機~なぜ?
 ゾウの平均寿命は60~70歳。私たち人間とかわりません。干ばつなどの大規模な天災でもない限り、天敵のいないゾウは寿命まで生きられることが多いはずです。そのゾウを、絶滅の危機にまで追い込んでいるのは、ほかでもない、私たち人間なのです。
 大規模な開発によって、ゾウの暮らし場所は、「島」のように切れ切れになってしまいました。広い土地を移動して生活するゾウには、生活そのものが難しくなってきています。

IUCN African Elephant Specialist Group and
Asian Elephant Specialist Group, Elephant Database 
http://www.elephantdatabase.org/  より作成

 1979年には134万頭と推計されたアフリカゾウは、1989年には62万頭にまで減少してしまいました。ゾウの数を10年間で半分以下にまで減らしてしまった最大の原因、それは、象牙を目的とした人間による「狩り」です。1989年に象牙の国際取引が禁止され、急な減少はいったん止まりました。しかし今、再び象牙目的の「密猟」が加速的に増加しています。2006年以降、象牙の密輸とともに密猟は増え続け、2012年の1年間では3万5000頭ものアフリカ象が象牙目的で殺されたという推計もあります。その時点でのアフリカ象の推定生息数は約42万頭。42万頭のうちの3万5000頭という数字は、日本の人口1億2000万人に当てはめて考えると、1000万人という数字になります。1年間で1000万人の日本人が…と想像してみてください。

 現在、中央アフリカの森林部でのアフリカゾウ(マルミミゾウ)の密猟が特に激しく、現在のペースで密猟が続けば、今後7年で生息数は今の半分に、近い将来「さいごのぞう」がほんとうのことになってしまうかもしれないのです。



密猟され象牙が抜きとられたアフリカゾウの死体 (C)KWS


2006 年に大阪港に密輸された2.8 トンの密輸象牙


◆絵本「さいごのぞう」

 2014年1月末に刊行された絵本『さいごのぞう』(井上奈奈 絵・文 キーステージ21)は、こうしたゾウの現状を知った井上奈奈さんの想いから生まれたものです。
 井上さんは、新聞の取材に答えてこのように話しています。「独りぼっちになる設定は、ゾウだけでなく、人間にも訪れるかもしれない。自分のこととしてゾウの悲しみを感じてもらいたい」(3/14 京都新聞)
 美しい絵の中に、独りになってしまったゾウの悲しみが見え隠れします。さいごのぞうはどこへ向かっていくのか、ぞうがいなくなった世界は、どうなってしまうのか…。この絵本は、そんなことを想像することから始まります。そして、「あとがきにかえて」のなかで語られているように、「なにもかもはじまりは『知ること』です」。ぞうの現状を知り、それがわたしたち人間の自然破壊や乱獲によるものだということを知り…。そのうえで、わたしたち1人1人がいま何をすべきなのかを考えていくきっかけになるでしょう。
絵本 『さいごのぞう』特設ページ

*NHK BSドキュメンタリーWAVE  http://www.nhk.or.jp/documentary/  
 「追跡 アフリカゾウ密猟の最前線」
 放送 : 4月5日(土)22:00~22:49
 再放送: 4月9日(水)17:00~17:49

*絵本『さいごのぞう』出版記念原画展(3/25〜4/25)
  江東区木場 EARTH + GALLERY  http://earth-plus.net/?p=1896

<関連イベント>
   2014年4月5日(土)19:30~
  女優 新井晴みさんによる 「さいごのぞう」朗読劇
   2014年4月12日(土)18:00~
  井上奈奈さん主催ブクブク交換
    ゲスト:テリー植田さん(ブクブク交換発案者)


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