進由紀

しっぽは語る 馬と犬 “気持ちの見せ方”の違い

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は、馬の尻尾と犬の尻尾の気持ちの見せ方の違いについてお話します。

しっぽを見れば気持ちがわかる

これは、犬を飼っている人にとってはおなじみの感覚かもしれません。
うれしいとき、怖いとき、警戒しているとき。犬は、言葉を使わなくてもその長いしっぽで感情を語ります。

でも実は、馬のしっぽにも“気持ち”が現れることをご存じでしょうか?

馬のしっぽは、ただ虫を払ったり飾りのように揺れているだけではありません。
そこには、そのときどきの「気分」が、意外なほどリアルに出ているのです。

たとえば、馬が尻尾をパッと上げて振り始めたとき。
その動きが速く、力強くなればなるほど、馬はちょっと興奮気味だったり、不快感や緊張感を抱えていたりするサインです。

実際、私ももこれまでに何度も経験してきました。
しっぽが高く上がって、ふんふんと鼻を鳴らしながら足取りも軽く速くなる。
ほーほーと言いながら(馬をなだめる時の掛け声)、こっちはもう「やめてやめて、落ち着いてぇ〜〜!」と内心手に汗握りながら、馬と呼吸を合わせようと必死になるわけです。
だけど、その状況に出くわすと、「あ、しっぽが先に教えてくれてたな」って、あとから気づくこともしばしば。

対して、犬のしっぽは「感情表現」としてもっとポジティブなイメージがあるかもしれません。
うれしいときはブンブン、尻尾が千切れそうなくらい振ってくれる。
でも実は、犬も馬も「しっぽの動き」には共通点があって、どちらも“気持ちの高ぶり”がダイレクトに出る場所なんですよね。

面白いのは、馬の場合、尻尾が動いていないときのほうが実は落ち着いていたり、気を許していたりすることもある、ということ。
ふわっと力が抜けて、垂れ下がった尻尾に、「ああ、今この子は安心してるんだな」ってわかる瞬間もあるんです。

しっぽの動きだけで、その子の感情を読み取ってみる。
それは犬でも馬でも、人間でも…もしかしたら同じかもしれません。
「言葉ではなく、気配で伝えあう」って、なんだか静かで優しいコミュニケーションですよね。

しっぽが教えてくれること、それは、
「ちゃんと見ててくれる?」という、心のつぶやきなのかもしれません。

馬の尻尾に少しだけ注目してみてくださいね。
これからの季節はぶんぶん振り回しながら虫を追い払っているかもしれませんが。

進 由紀

進 由紀

投稿者の記事一覧

(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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