乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は、装蹄について掘り下げてみたいと思います。
装蹄とは
装蹄とは、馬の蹄に蹄鉄を打ち付ける事。
蹄鉄はU字型の金属片で、いわゆる馬蹄型でみなさん一度はそのモチーフを目にしたことがあるのではないでしょうか。
蹄鉄は摩耗や裂傷から馬を守り、肢元の問題を修正します。したがって、馬の福祉のため、また競馬や馬術でより高いパフォーマンスを発揮するために、適切なタイプの蹄鉄を選択し、適切にメンテナンスすることが重要です。
蹄鉄は、馬の健康に直結する重要な道具であるため、馬の足の状態や使用目的に応じて、適切な種類を選ぶことが大切です。
そして、馬の発育、健康、QOLにとっても不可欠です。
蹄鉄は、蹄を保護し、さまざまな地形で優れた牽引力とグリップ力を発揮します。
このため、各馬の特定のニーズに応じて、さまざまな種類の蹄鉄から選択できます。
蹄鉄の種類
・鉄製蹄鉄
伝統的な蹄鉄で、最も一般的に使用されています。
丈夫でコストパフォーマンスが良いですが、比較的重いことが欠点です。
・アルミニウム製蹄鉄
鉄製より軽量で、特に競走馬などのスピードが求められる場面で使われます。
軽量なため馬の足への負担が少ないですが、鉄に比べて柔らかいため摩耗が早いです。
・プラスチック製蹄鉄
軽量で、衝撃吸収性が高いです。
馬の足に優しく、特にリハビリ中の馬や高齢馬に使用されることがあります。
また、金属アレルギーの馬にも使われることがあります。
・チタン製蹄鉄
軽く、強度も高いため、特に競技用馬に使用されますが、価格が高いのがデメリットです。
・ゴム製蹄鉄
柔軟性があり、特に馬の足への衝撃吸収に優れています。
舗装された道を歩く際に使われることが多く、馬に優しい素材です。
蹄鉄の装着方法
蹄鉄の装着方法にもいくつかのタイプがあります。
釘による固定は一番一般的な方法で、鉄製やアルミ製の蹄鉄を馬の蹄に釘で固定します。
この方法はとても」安定しており、長期間の使用に耐えます。
ボルト式(ネジ式)は、蹄鉄を蹄にネジで取り付ける方法です。
釘を使わないため、蹄に対するダメージが少なく、着脱も比較的簡単です。特に特別な用途(競技馬や特殊な療養が必要な馬)で使用されることがあります。
接着式は、蹄鉄を接着剤で蹄に固定する方法です。
この方法は釘やボルトを使わないため、馬の蹄に対する負担を減らすことができます。
特に療法的な目的で使用されることがあります。
ケア型(治療用)治療用として特別に作られた蹄鉄で、足に問題がある場合(例えば蹄の裂け目や病気)がある馬に装着します。
このタイプの蹄鉄は、馬の足を保護することを目的としています。
蹄鉄は馬の蹄の形や目的に合わせた形ですが、基本的なU字型以外にもO字型や、ブリッジが施してあるもの、また装蹄師さんがオリジナルで作成するものなど様々なものがあります。
その馬の状態や問題がある場合はその解決のために工夫されています。
装蹄の工程
- 蹄をきれいにします。蹄にオガや土が詰まっていたら取り除きます。装蹄の前には蹄が濡れていない方が良い場合が多いです。(装蹄師さんによる)
- 変形やひび割れなどの有無を確認します。
- 蹄鉄のサイズと具体的な形状を決定します。
- 削蹄します。蹄の伸びた部分を切り形を整えます。
- 蹄鉄の形を整えます。必要に応じて蹄鉄を熱して形が合うように打ち込んでいきます。
- 蹄鉄が完成したら、釘または特殊な接着剤で取り付けます。
- やすりがけ。これが最後のステップです。蹄を取り付けたら、馬にとって滑らかで快適な状態になるように、やすりがけする必要があります。
これは時間のかかる作業であり、特に馬が緊張している場合はなおさらです。
良い仕上がりを得るには、馬が落ち着いて冷静でなければならないため、落ち着いて慎重に作業する必要があります。
乗馬では問題のない馬は35日位の間隔で装蹄をします。
その間に蹄鉄が緩んだり、釘が浮いていないかなどは毎日チェックし、少しでも緩んでいたら締めたりなどします。
装蹄は蹄を削るのも、釘を打つのも高い技術が必要なので、装蹄師さんにお願いするのがベストです。蹄無くして馬なしと言われる程、馬にとってとても大切。
馬のコンディションの大きな部分でもあるので、装蹄師さんは獣医さんと並んで頼りにしている存在です。
みなさんも身近な馬の装蹄、どんな蹄鉄をつけているか注目してみてくださいね!