東京都世田谷区にある「ドッグシェルター」は、動物愛護センターに収容されている犬を引き取り、新しい飼い主を探す活動を行っています。そのままでは処分されてしまう犬を一匹でも救い、温かな家庭で幸せに暮らせるようにと里親となる方々を探す活動です。
今回は、ドッグシェルターの実務を担当している里見潤さんにお話をうかがいました。
早朝のできごと -小さな出会い-
私の実家には雑種犬が2匹います。11~12歳くらいでしょうか。はじめて飼ったのは、私が22、3歳くらいのときでした。現在、自宅で飼っているのは、「おまめ」という名前です。柴犬で、3歳2ヶ月です。
現在保護中の犬は、「ごまちゃん」という名前で、おそらくシェパードの雑種です。2歳くらいですね。愛護センターでもこの名前で呼ばれていました。(※ ごまちゃんは、その後、里親さんが決まり、新しい家族の一員として生活しています。)
もともとは、犬が好きというわけでもなかったんです。1頭目の犬は、生後2ヶ月くらいのとき、公園で拾ってきました。かわいそうという理由で拾ったわけではなくて、すなおにかわいいな、という気持ちからでした。ただ、飼うのがたいへんでした。ひっぱる、ほえる、かむ。ブラッシング中や、2頭の犬が食事のとりあいのけんかをしているときに仲裁しようとすると、よくかまれました。人嫌いなわけではなく、むしろ人好きの犬でした。
この頃は、「犬のしつけ」というものの存在すら知らなかったんです。
1頭目の犬と出会った当時は、病気のため仕事をやめ、1年半くらい休んでいた時期でした。仕事は、犬と関係のあるものではなく、ふつうの仕事でした、ふつうの社会人でした。
アレルギー性の皮膚炎が全身に発症し、顔も肌が荒れてしまったんです。さまざまな医者にかかったりしたのですが、なかなか解決せず、結局、薬で抑えることになりました。やや引きこもり気味になり、人の少ない、朝と深夜に外出するような生活だったんです。
1頭目の犬を拾ったのは、そんな生活のなか。早朝でした。
当時、話し相手が家族くらいしかおらず、寂しかったのもあると思います。特段の犬好きというわけでもなかったのですが、その犬と共鳴するものがあったのかもしれません。
肌の病気は、さまざまな療法を試してみたのですが、先ほどお話したとおり、薬で抑えるくらいしかなかったんです。そんなとき、たまたま温泉療法というものを知り、草津の温泉地で1年間、アルバイトをしながら1日5回温泉に入る生活を送りました。このおかげで、27歳で病気が治り、警察犬の訓練士の養成学校へ行くことになったんです。
大きなシェパードを悠々とコントロールする女の子
たまたま拾った1頭目の犬が、ひっぱる、ほえる、かむ、となかなか手のかかる子でしたので、「犬のしつけ」というものがあって、それが職業になる可能性があると知って興味がわきました。長い療養生活のため、なかなか仕事にはつけないかもしれない。資格を取れるなら・・・という気持ちで訓練士の養成学校に通うことにしたんです。
訓練士養成学校では、2年間、犬生活、犬ざんまいでした。シェパードしかいない環境。シェパードは、見た目は怖いのですが、実習のときにはとくに怖さは感じませんでした。学年は先輩ですが、自分より年齢がずっと下の女の子が、本人より大きなシェパードを悠々とコントロールしているのをみて、すごいと思いました。
その後、東京都江東区の出張トレーニングの会社に就職しました。一般家庭などに出張し、犬の留守番トレーニングや散歩などを行っていました。2年間勤務したのち、ドッグシェルターへ。
ドッグシェルターでは、訓練校の同級生が、すでにボランティアをしていました。その頃のドッグシェルターは、駒沢に店舗をかまえていたのですが、私が専属スタッフとして入る頃には店舗を廃止しました。現在のように預かり家庭で犬を保護する形に運営を転換したときでした。