3月22日「さくらねこの日」は、
不妊手術を終えた猫の耳先を、目印としてさくらの花びらの様にカットした「さくらねこ」のことを全国に広げるために制定されました。
年々減少していますが、2020年、日本では27,108匹(2020年)の猫が行政により殺処分されています。
その多くが生後間もない子猫であることをご存じでしょうか?
「産まれてスグに殺される」
そんな悲劇をなくし殺処分ゼロを実現するため、現代の生活には、さくらねこや地域猫活動を社会全体で理解し支える必要があると思っています。
アメリカ在住の現役臨床獣医師、シェルターメディシンでもある西山ゆう子さんの情報サイトより、許可をいただき「猫の不妊去勢手術」について転載、ご紹介させていただきます。
GORON 吉川奈美紀
西山ゆう子さんの情報サイトより(2021年3月9日)
https://yukonishiyama.com/spay-neuter-by-five/
【 この情報についての注意 】
・不妊去勢手術の施行時期については、猫と犬では見解が異なり、今回は猫に限った話です。
・アメリカにおける猫の不妊去勢手術の情報に関する情報サイトを許可を得て転載しています。
・アメリカの専門委員会「Veterinary Task Force on Feline Sterilization」が出している公式な見解です。
子猫の手術は本当に安全ですか?
「猫は、何か月齢になったら、安全に手術できますか?」とよく質問されます。
「体重何キロになったら、手術可能ですか?」とも聞かれます。
答えは、単純ではなく、その猫の個体・病気の有無・環境、その他を考慮して決めます。
今回は、猫の不妊去勢手術の「適齢」「専門家の意見」「懸念されるリスク」「長期の副作用」「安全性」等についてお話したいと思います。
初めに明確にしておきますが、これは猫に限った話です。
不妊去勢手術の施行時期については、犬と猫では見解が異なります。
犬の話は、また別の機会にしたいと思います。
時代によって変わった
今から半世紀前のアメリカでは、猫の不妊手術は、「1度子猫を出産してから」というのが主流で、その後「最初の発情が終わってから」という時代がありました。
その時は、科学的な根拠に基づいたものではなく、おそらく麻酔、抗生剤、鎮痛剤などが未発達だったため、経験からのものだったとされています。
当時は、麻酔の前にも後にも、長い時間の絶食が必要で、痛みや感染に耐える体力と内臓機能が要求されたのでしょう。
やがて麻酔、手術器材やモニター機器、薬物が改良され、約6か月齢くらいでも安全にできるようになりました。
その後、アメリカのシェルターでの殺処分数が社会問題化し、もらわれることのない不幸な命を、1匹でも減らしたいということで、全米で不妊去勢手術の普及運動が起こりました。
最初は、生後6か月くらいになったら必ず手術してね、という譲渡契約をした上で渡していたのですが、それでも気が変わったり、忘れたり、逃げるということがたまに発生してしまう。
そこで、譲渡される子猫を、もうその時に手術をしてしまおう、そうすれ絶対妊娠しない、ということで、生後4か月未満の「早期不妊去勢手術」が普及し始めました。
また近年、不妊去勢手術のする年齢と、成長ホルモンと、骨格や尿道の発達等が関係しているらしい、ということが犬で報告され、それゆえ、猫も骨格が十分成長し終わるまで手術を待つべきではという仮説も出てきました。
アメリカの専門医の見解―生後5か月齢までに
このようにアメリカでは歴史的に、不妊去勢手術を行う時期が変動したため、臨床獣医師も市民も動物愛護団体も、本当はいつがベストなのかわからなくて混乱していました。
何とかしなければということで、科学的なエビデンスと統計、臨床医学知識、社会事情に精通したプロを集めて、専門委員会が立ち上がりました。
2016年に、Veterinary Task Force on Feline Sterilization (猫の不妊化に関する獣医特別委員会)が発足し、専門委員会としての見解を発表しました。
結論は、
「猫は生後5か月になるまでに不妊去勢するべきである」
です。
そしてそれに伴う利点を説明しています。
その後この見解は、米国獣医師会、米国動物病院協会、猫臨床専門学会、シェルター獣医専門学会など、複数の獣医専門学会から広く支持、承認され、現在に至っています。
私たちアメリカの臨床獣医師も、この専門委員会の声明文に基づいて、猫の不妊去勢手術をする時期を考え、個別に奨励しています。
〈 2 〉~早期に不妊去勢手術をすすめる理由~
https://goron.co/archives/10702
に続きます。