進由紀

馬の毛色の名前が、美しすぎる

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。

馬の毛色の名前って詩的だとおもいませんか?
犬や猫にも毛色のバリエーションはありますが、どちらかというと「茶トラ」「黒白」「クリーム色」といったシンプルな表現が多いように感じます。
それに対して、馬の毛色はまるで詩のように美しく、どこか奥ゆかしささえ漂っています。

たとえば「鹿毛(かげ)」

赤みがかった茶色の体に黒いたてがみとしっぽ。最もよく見かける毛色でありながら、光の加減によってツヤツヤと輝き、見るたびに印象が変わります。
鹿毛でも、明るめだったり、暗めだったりいろいろな色合いの馬がいますね。

「栗毛(くりげ)」は明るく赤みのある茶色。

オレンジっぽく元気で陽気なイメージを持たれることも多く、ポニーなどにもよく見られる色です。
栗毛も、少し暗めな栃栗毛や、もっと明るくて、ゴールドのような尾花栗毛などの毛色もあります。

そして、私が特に心を奪われたのが「月毛(つきげ)」という毛色です。

淡いベージュに白いたてがみとしっぽ。
まるで月明かりのようなやわらかさをたたえたこの毛色は、実在の馬で見かけると、思わず見とれてしまうほどの美しさがあります。
まさに名前通りの、幻想的な存在です。

「芦毛(あしげ)」という毛色も、また独特です。

一見白馬のようにも見えますが、実は黒と白の毛が混ざり合ってできており、歳を重ねるごとに少しずつ白っぽくなっていくという変化のある色でもあります。
年齢とともに毛色が変化する――そんなところにも、馬という生き物の奥深さを感じます。
毛色の名前には、ただの色以上の「雰囲気」や「物語」が宿っているように思います。

たとえば「青毛(あおげ)」

一見真っ黒に見える毛色ですが、光が当たると青みがかったツヤが浮かび上がるのが特徴です。
このクールな響きと美しい毛並みに、どこか凛とした孤高の印象を受ける方もいるのではないでしょうか。

犬や猫のように家庭にいる動物とはまた違い、馬は「距離感を持って接する存在」です。
そのぶん、外見の特徴ひとつとっても、そこに性格やイメージを重ねてしまいたくなることがあります。栗毛の子には、明るく元気なイメージ。
芦毛の子には、ちょっとミステリアスな雰囲気。
そして、月毛の子には、静かな強さと優しさを――。もちろん実際の性格は毛色だけで決まるわけではありません。
けれど、「この子はどんな子かな」と想像しながら眺めることで、馬との関係が少しずつ近づいていくような気がします。毛色の名前を知るということは、
ただ見た目を表すだけでなく、その馬の物語のはじまりに触れることなのかもしれません。

進 由紀

進 由紀

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(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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