進由紀

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話「馬の生態」

今回は、馬の生態についてのお話です。
その中でも人が介入していない場合の馬の行動を掘り下げていきます。

1 . 食べる

放牧地に放された馬が草を食べる時は、一か所にとどまることなく、広い地域を歩き回ります。
上唇で草を口の中にくわえ、前歯で噛み切ります。草を食べる時間には 1 日のリズムがあり、最も活発に食 べるのは夕方 4 時頃から 8 時頃です。
草を噛むか回数は 1 秒間に 1〜2 回で、1 時間に 6000 回以上か噛んで います。
昼夜放牧した時に 1 日に食べる草の量は約 30kg。この時歩く距離は 12〜15km です。長い草が密生 しているところでは馬はあまり摂食せず、そこを排泄場所にします。

2 . 排泄する

馬が尿や糞(ボロ)をする時には、立ち止まるのが普通です。
しかし、身を守るためにボロは走りながらでもする事ができます。
雄馬は、後肢を開いて後方に伸ばし、背中をややへこませて排尿します。
牝馬は尻尾を上げて後肢をやや開いて排尿します。
野生の雄馬は、自分のボロによって占有地を定めています。匂いが消えかかっ ているとその上に新しくボロをします。飼われている馬でもこれが習慣化されている馬がいます。
健康な馬 は 1 日に 5〜10 回ボロをし、7〜11 回排尿します。

3 . 身づくろいする

2頭の馬が互いに反対の方向に向いて、き甲を咬みあい、お互いの顔や体から、ハエやアブを追い払ったりしています。
自分で身づくろいするのは痒い時で、背や頸を木の幹や牧柵などに擦ります。

4 . 探す

若馬は、好奇心が強く目につくものは何でもその匂いを嗅ぎ回ります。
子馬が成長して、自分に害を及ぼすものと、そうでないものの区別がつくようになってくると、新しいものに対する恐れを示すようになります。
新しいものに出会うと、遠くからぐるぐると回ってよく確かめ、それからゆっくりと近づいて匂いを嗅ぎます。
新しい放牧地に馬を放すと、牧柵に沿って狂ったようにしばらく走り、自分の置かれた状況を知ることに懸命になります。
環境を理解すると落ち着いて草を食べ始めます。
馬も他の動物と同じように帰巣本能があって、外に出した時に自分の厩舎へ戻る習性があります。
しかし、馬は風に向かって歩くのでき厩舎とは逆の方向から風が吹いている時は、帰巣に失敗する事があるそうです。

5.  休む

馬は、日中によく仮眠します。
立ったまま、あるいは横になる事もあります。熟睡する時は、肢をしっかり伸ばして体を横に投げ出しています。疲れた時には大きないびきをかいて寝ます。
しかし、物音や動く気配に で敏感に反応して、警戒を怠ることはありません。
睡眠時間は環境によって異なりますが、住み慣れた馬房では計 5・6 時間、昼夜放牧の馬は計 2・3 時間です。
長い時間寝続ける事はなく、寝ては起きのトータルの 睡眠時間です。

知っている様で知らない馬の生態。
あの行動はこういう意味だったのか!と思い当たる事がありましたか?
次回は、馬の集団行動についてお伝えします。

 

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話「馬の生態 」– 2 馬の集団行動

進 由紀

進 由紀

投稿者の記事一覧

(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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