進由紀

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話「馬の生態 」- 2 馬の集団行動

今回は、馬の生態のお話の第2弾『馬の集団行動』についてです。
馬が集団で行動する動物だという事はご存知ですか?

1 . 馬の社会生活

哺乳中の子馬は、社会的な順位にこだわらないが、母馬は、子馬は自立できるようになるまで子馬を監視し、他の馬に近づき群れの中に紛れ込まない様に注意します。
自立した馬は、群れの中から特定の相手を選び出して他の馬と区別し、好きな仲間として付き合います。
群れの中で優位性の争いがあり、しばらくすると群れの秩序が形成されます。
群れの中で仲間を認めるまでに、他の馬と鼻先と鼻先をつけたり、鼻先で相手の尾 や胴の匂いを嗅いだり、首筋をかかみ合う行動を取ります。
野生馬の場合、雄馬が数頭に対し、雌馬数十頭でハーレムを作って生活します。
群れの仲間以外の雄馬が近づくと、雄馬は闘争本能をむき出しにして追い払います。
雌馬は、基本的には雄馬に従って行動しますが、 気に入らない雄馬がいる場合は、群れから離れて気に入った雄馬のいる群れに移ったりします。

2. 優位性

野生馬の群れでは、優位な雄馬は群れを所有し種馬となりますが、リーダーとなるのは主に高齢の雌馬です。
雄馬だけの放牧群では、その中の強い馬が主導権を握ります。
群れの中に飼料が置かれると、奪い合う争いがあり、強い馬と弱い馬の順位が決まってきます。
この時の争いには、蹴り上げや足を狙う咬みつきが見られます。

3. 馬たちのコミュニケーション

馬は、コミュニケーションのためにボディランゲージはもちろん、色々な音声を用います。
鼻でプッと吹くのは、群れの全員に知らせる危険信号。甲高いいななきは苦悶の叫び声で、ヒヒンという短い発声は親交や求愛の仕草です。
仲間を呼ぶいななきや、威嚇のための短い声などは高低差を使い分けて鳴き、馬同士で 仲間の馬かどうか判別できます。

4. 遊び

2頭で相撲をとる若馬の遊びは、運動能力を増進し、馬群の中の社会的優位性を互いに知り合う事ができます。
馬房内では、飼い桶にお尻を何回もぶつけたり、ガチャガチャ鳴らして遊ぶ事があります。

乗馬クラブなどの施設で過ごしている馬たちは、集団で放牧されている事がほとんどないので、普段馬たちの社会性を目にする機会は少ないですよね。
野生ではなくても、多頭放牧されている馬たちには、馬の社会性を垣間見ることができます。
人と長く過ごしてきた歴史のある動物なので、人との触れ合いだけでストレスを最小限に暮らす事もできると思 いますが、やはり馬は馬同士過ごせる時間があるのはきっと幸せだろうな、と思います。

 

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話「馬の生態」

進 由紀

進 由紀

投稿者の記事一覧

(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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