乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回はホースグルームについてです。
皆さんはグルームって聞いたことありますか?
厩務員さんだったり、競技会場では「馬付き」と呼ばれる方達です。
馬が今日も元気でいてくれるグルームさんの存在は欠かせません。
乗馬クラブに通っていると、ふとした瞬間に
「この馬、いつも毛並みがきれいだな」
「落ち着いていて乗りやすいな」
と感じることってありませんか?
実はその“当たり前のように元気で健康な馬たち”の裏側には、日々馬たちを支えてくれているホースグルームの存在があります。
今回は、馬に一番近い場所で寄り添うグルームたちの目線を通して、改めて「馬のケア」についてお話したいと思います。
馬のお世話は、単なる“作業”じゃない。
朝一番、馬房の扉を開けたときのその表情。
耳の向き、まばたきの多さ、ちょっとした仕草…グルームたちは、そういった小さな“変化のサイン”を見逃しません。
ブラッシングは、毛をきれいにするだけでなく
「昨日よりも元気か」「どこか熱を持っていないか」「虫刺されはないか」と、
全身をチェックする時間でもあります。蹄の掃除、水桶の減り具合、糞の状態などすべてが馬の体調や気分を知るヒントです。
日々、細やかな観察とケアがあってこそ、私たちは安心して馬に乗ることができているのです。
「今日はなんだかピリピリしてるな」
「昨日より少し、そわそわしてるかも」
グルームたちは言葉にしなくても、馬たちの“気分”や“気持ち”の変化に気づきます。
それは毎日お世話をして、向き合ってきたからこそできること。
そしてその気づきを、インストラクターや獣医師、時にはお客さまにも伝えてくれています。
馬にとっての“いちばんの味方”が、グルームなのです。
グルーム目線で見ると、馬に好かれる人にはちょっとした共通点があります。
お世話の時間を大切にしている人
馬の気持ちに寄り添おうとする人
「ありがとう」「今日もよろしくね」を自然に伝える人
馬はとても敏感で繊細な生き物です。
自分の存在を大切に扱ってくれる人のことを、ちゃんと覚えています。
だからこそ、乗る前後の時間や、触れ合いのなかで交わす“小さな思いやり”が信頼関係につながっていくのだと思います。
知り合いのグルームさんに聞いた「グルームからのワンポイントアドバイス」
「馬の名前を呼ぶときは、気持ちも添えてあげてください」
名前を呼ぶって、実は馬にとってすごく大事なコミュニケーション。
「○○ちゃん、おはよう」「ありがとうね」「今日はがんばろうね」
その一言に、馬は反応してくれることがあります。
グルームたちは、ただ無言で作業するのではなく、いつも声をかけながら接しています。
馬も“自分が大切にされている”と感じられると、自然と心を開いてくれるもの。
次に馬と過ごすときは、ちょっと意識して「名前+気持ち」を添えてみてください。
それだけでも、関係は少しずつ変わっていきますよ。
私たちが馬と過ごす時間のすぐそばには、いつもグルームたちの尽力があります。
彼らの手によって、馬たちは清潔に保たれ、健康を維持し、心地よく過ごせる環境が整えられているのです。
もし今日、馬に乗る機会があったら、馬に「ありがとう」と伝えると同時に、その馬の世話をしてくれている人にも、ちょっとだけ感謝を込めてみてください。
「馬に優しい人は、自然と人にも優しい」
私自身もそうでありたいし、この気持ちの循環で馬と人が暖かい空気の中で暮らせたらいいなと願っています。