乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は馬のひげについてです。
皆さんは馬にもひげが生えているのをご存じでしょうか?
口元や、目の下に生えている長くて太い毛がひげです。
以前はトリミングされていましたが、現在は多くの国で馬のひげのトリミングが禁止されました。
馬のひげの役割
馬の口の周りや目の周りに生えているひげは、特殊な接触センサーとなっています。
他の毛よりも長く、硬く、太いです。
馬の神経系にも繋がっていると言われています。
位置は目の周り、鼻孔と上唇の間、下唇の下の下顎に集中しています。
これらの場所は、馬の顔の前と鼻の下にある、馬の視界の死角を補っています。
物体からの安全な距離を決定し、潜在的な危害から保護しています。
物体の位置を特定したり、動きを感知したりし、距離感、質感、温度、形状、動きを識別し、新しい環境を探索する場合や、薄暗い馬房や夜間などに役立っています。
仔馬のひげ
生まれたばかりの仔馬は成馬よりも長いひげを持って生まれます。
胎児の発育中に形成される最初の毛髪です。
顎の下まで伸びる長いひげで、仔馬は母馬の乳頭を見つけて母乳を飲むために長いと考えられています。
トリミングの禁止
馬のひげのトリミングについては、国によってルールが異なっています。
国際馬術連盟(FEI)は2021年7月から口や目の周りのヒゲを含む馬の触覚毛の除去が禁止されました。
この禁止は、馬場馬術、障害馬術、総合馬術を含む全ての競技分野に適用されています。
外科手術や、馬の不快感を取り除く目的、治療目的など医学的理由によるトリミングは例外となっています。
日本でもこれを受けて日本馬術連盟は2022年4月より、同じく禁止となりました。
ひげはとても敏感で馬の感覚認識にとって重要な役割をしています。
触覚毛であるひげの除去は、馬に不快感、認識障害、怪我をひきおこす可能性があります。
以前は見た目を美しく整える目的でトリミングされていたひげですが、国際的な機関が禁止にしたことにより、ホースウェルフェアの動きが広がり個々のライダーの意識が深まるのはとても良いことですよね。
ビヨンビヨンと生えているので、何となく気になるかもしれませんが、刈ったり切ったりしないであげてくださいね。