乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
馬とファッションの第6弾はHERMESと馬についてのお話です。
エルメスは超高級ブランドとして多くの人に知られていますが、元々馬具工房からスタートした事はご存知ですか?
1837年、初代ティエリ・エルメスがパリのランバール通りに、高級馬具の製造工房を開きました。
品質と技術を何よりも優先させた商品作りがポリシーで、彼が作る鞍や乗馬靴は高品質のなめし革としっかりとした縫製定評がありました。
ナポレオン3世帝室御用達となり、乗馬や狩りなどを趣味とする趣味とする王侯貴族に愛されました。
エルメスの鞍は、1878年にはパリ万博博覧会の馬具部門でグランプリを受賞し、「鞍屋」として確固たる地位を築きました。
20世紀に入ると、エルメスは転換期を迎えました。
3代目のエミール・モーリスは、時代が急速に変化し、パリの街から馬や馬車の姿が消え、自動車の時代が来ることを予見して、婦人用のバッグや財布の製造、販売を始めました。
それは職人たちの技術を守るためでもあり、バッグ作りには斬新さと馬具職人たちの高い技術が活かされました。
エルメスの馬具職人の技術の一つとして有名なのがサドルステッチです。
鞍を縫う特別の手法で、1本の糸の両側に2本の針をつけて、同じ穴に革の両側から針を通して縛るように縫います。
この手法で製造されるバッグは縁の縫い目に頑強さが求められる鞍と同様に入念に縫われ、革の切り口には蜜蝋で滑らかに固められています。
1930年頃までに時計や宝飾品、旅行用品などエルメスの事業は多角化して行きました。35年には有名なケリーバッグが発売され、37年には第一号となるスカーフが発表されました。
1945年には四輪馬車(デユック)と従者(タイガー)のロゴマークが商標登録されました。
19世紀の優雅な時代を彷彿とさせるマークは、馬車を御する主人の姿が見られません。
「エルメスは最高品質の馬車をご用意しますが、それを御するのはあなた自身です」というメッセージが込められているそうです。
エルメスは、180年を超える歴史がありますが、職人による高い品質を守る精神が受け継がれていることは、移り変わる世の中で一流を保ち続けた秘訣と言えます。
また、現在も鞍をはじめ様々な馬具が製造されています。エルメスの原点である鞍は、「馬に優しい」鞍作りを基本に、腕利の職人が常に新しい技術を研究し、時代やライダーのニーズに応じた製品開発に取り組んでいます。
鞍や馬具以外にも、馬や馬具をモチーフとした商品がエルメスには沢山あります。馬好きの憧れのブランドです。