乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は高齢馬の健康についてのお話です。
馬の平均寿命は、25歳から30歳くらいまで。
18歳以上になると高齢馬(シニア)と呼ばれます。
人、犬や猫、そして馬も、シニアになったらそれまで以上に健康に気を配る必要があります。
高齢馬の健康を維持するために大切なこと
特別な治療が必要な症状を早期に発見するには、獣医師や装蹄師など専門家の意見を求めることが大切です。
馬の変化を「老化の始まり」とスルーせずに認識する事は、高齢馬の世話をする時に負う責任の大きな部分を占めると言えます。
被捕食動物で肉食獣の獲物になる馬は、肉食獣の注意を引かないように、痛みを隠す傾向があります。そのため、馬はストイックで酷くなるまで痛みの兆候を示さないことがあります。
反面、馬は痛みに対して弱いので、早期発見のためには日頃から馬の行動や態度の変化に注意を払いましょう。
「疝痛」を予防するために
疝痛(せんつう)とは、馬の腹痛を伴う病気を総称で便秘疝・風気疝・変位疝などがあります。
どんな年齢の馬も罹る病気ですが、高齢馬はそのリスクが増加します。
腸の運動性が若い健康な馬と比べて低下しやすく、宿便疝痛のリスクが増加する可能性があります。
また、腫瘍や寄生虫の増加により胃腸管に問題が起きたり、高齢馬は水を飲む意欲が低下する傾向があり、水分摂取不足も危険因子となります。
また歯に問題があり、餌を咀嚼するのが難しいと、未消化の食物が腸に入りガスや疝痛を引き起こす可能性が高まります。
ケアを怠り、歯の咀嚼面のバランスが崩れると痛みによって食欲が減退することもあります。
歯を健康に保つことは、おそらく長寿を促進する最良の方法です。
健康な歯できちんと食べ、きちんと消化することが大切です。
その他、気を付けてほしいこと
高齢になり体重が落ちてきている馬の場合は、寄生虫、感染症、歯の状態、餌の摂取など、原因がどこにあるか調べる必要があります。
痩せた高齢馬にとって冬はより厳しい負担となるため、馬が寒さの中で体温調節する為にしっかりとエネルギーを取り、体調のスコアをチェックします。
他に、高齢馬は関節炎を発症しやすいです。
高齢馬は関節の摩耗や、過去の怪我が蓄積されて炎症を引き起こします。
馬の破行(はこう)の60%は関節炎によるものです。
※破行とは、歩様(歩き方)に異常をきたしている状態です。
関節炎はすぐに命に関わるものではありませんが、馬の場合は自力で立ち、歩くことができない、もしくはそれに強い痛みがあり困難を伴う状態は、結果的に他の部位が悪くなったり、動けない事により内臓に影響が出て、予後が悪くなってしまいます。
高齢になるとどこかしらに痛みが出やすいので、そのひとつひとつを出来る限り取り除いてあげましょう。
痛みがある場合は、早めに痛みを取り除き、歯のケアを定期的に行い、馬の行動や態度の変化に気を配ること。
あとは基本的な適切な飼料と適切な運動、適切な飼育環境で、高齢馬の健康を維持しましょう!