健康・病気

ペットの応急処置 – 屋内編

今回は、屋内でペットがケガや事故にあった時の処置について考えてみます。緊急の場合の心得や処置は屋外の場合とほぼ同様ですが、いずれも飼い主さんの一瞬の判断でペットが助かることもあり、普段から知識とスキルを身に着けておきたいですね。

屋内でケガややけどをした場合

 東京都国分寺市にあるオリーブ動物病院の有薗浩見院長に、屋内でのケガについてお尋ねしました。

「転落などで骨折した場合、ペットを動かさないことです。痛がっている動物は触られるのを嫌って抵抗しますし、興奮して噛みついてくることもあります。不慣れな状態で添え木などをするよりは、すぐ病院へ向かったほうがよいでしょう。また、刃物や棒状のものに刺さってしまった場合は、それらを抜かず、動かさないこと。傷口周辺をガーゼ等で保護し、そのまま静かにペットを病院へ運んだほうがよいです。」 また、やけどの際の処置は、「範囲が狭ければ流水で患部を15分ぐらい冷やして、病院へ。熱湯をかぶったりして患部が広範囲であれば、タライに水を入れて全身を冷やしてからでよいです」

ということですが、近年は家電が発達したお陰で、ペットのやけどや感電事故はかなり少なくなっているそうです。

 

誤飲や誤食してしまった時

自宅での誤飲・誤食は屋外での場合と比べ、何を食べたのかが分かりやすく、有薗先生はこうアドバイスしています。

「何かを食べてしまった場合、周辺が散らかっていたりして、大抵は痕跡が残っています。例えば台所で食べ物をあさったり、いたずらしていて食べ物に入っている乾燥剤を食べてしまったり、その辺に置いてある消臭剤、防虫剤、殺虫剤等を誤って食べることはよくあります。おおよそ1時間以内であれば誤食したものがまだ胃に残っていて、吐かせることも可能ですので病院へ連絡して指示を仰いでください。1時間以上たってしまうと、胃から腸へと送り出されていきますから、発見が早ければ早いほどよいです。食べたものが小さいほど早く消化されますから急いでください。」 また、液体の場合は、「何を誤飲したか分かった場合は、薄めるためにたくさん水を飲ませたほうが良い場合もあります。ただし、毒物を口にした場合は水で流すと消化器官へ送られてしまって逆効果、即、病院で処置してもらってください」

とのことで要注意です。

突然発作を起こした時

 自宅でも散歩中でも、ペットが突然、発作を起こすことがあります。例えばてんかんであれば、犬では1~2%前後、猫では1%未満ぐらいの割合で起こります。発作を起こしている間は噛まれる恐れがあり、触らないほうが無難です。

「初めてのてんかんだと飼い主さんもびっくりすると思いますが、発作は5分位で一旦回復します。そしてまた定期的に発作が起こります。てんかんも、症状に合わせた投薬治療になりますので、病院で診察を受けてください」と有薗先生。発作の症状には脳腫瘍や伝染病、中毒症状その他ざまざまな原因があるため、発作時の状況やペットの意識の有無、様子等をよく観察して獣医師に告げ、診察を受けて原因を特定してもらいましょう。

 

息をしていない、心臓が動いていない時

病気や事故でペットが意識を失っていて息もしていない時、人工呼吸・心臓マッサージを行う必要があります。ただし実習や実体験をしたことがなければ難しいことでしょう。

 有薗先生は、「心臓マッサージや人工呼吸は、自分のペットの体の構造が分からなければできないでしょうし、呼吸していない状況自体、非常に厳しい状況ですから一刻も早く獣医師に電話して状況を告げ、その場でできる指示を仰ぐか、即、病院へ行くことです」と、救急救命措置経験のない飼い主さんにはそう助言しています。このような場合、ほぼ往診対応はできないため、かかりつけの獣医師の緊急連絡先の把握、また万が一その先生が不在の場合にも他で診てもらえる動物病院を紹介してもらっておけば安心です。

人工呼吸・心臓マッサージについては、幸い今はインターネット動画でも見ることができますし、かかりつけの獣医師に相談し教わることも(獣医師により)可能なようです。犬猫のぬいぐるみなどを使ってデモンストレーションしていただき、一通りのやり方を経験しておくとよいでしょう。飼い主さんが普段からペットの身体をよく観察し、触って、心臓の場所や肋骨や背骨等の位置を覚えておくことも重要です。

犬や猫の人工呼吸は、人間のマウス・トゥー・マウスではなく「マウス・トゥー・ノーズ」。ペットを横向きに寝かせ、人の口でペットの鼻をくわえ込み、息を3秒程ずつ吹き込み、ペットの口は手で押さえて塞いでおきます。呼吸が戻るまで、約1分ずつ確認をします。息をしておらず脈がない場合は心臓マッサージを行いますが、ペットの右半身が床に着く向きで寝かせ、前足の関節部から後ろへ約5センチの位置にある心臓に人が手を置き、押し付けるようにして圧迫します。最初は1分後、脈の確認をし、その後、脈が回復するまで繰り返し、数分ごとに確認します。

これらは概要ですが、ペットの大きさや種類、年齢にもよっても加減が違いますので、詳細はかかりつけの獣医師に相談して、それぞれのペットに適切な処置を教わってください。そしていざという時のために、ぜひ役立てましょう。

 

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