乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は馬のご飯の回数についてです。
馬は草食動物
馬のご飯の回数を考えるときは、馬という大型哺乳類が草食動物であることを覚えておくことが重要です。
馬は何百万年にもわたって進化してきており、草地で野生下にいた馬は自由に草を食べながら暮らしていました。
そのため、消化管は放牧食に特化したものとなっています。
放牧動物は、一日中一貫して草や他の植物を食べることを目的としています。
したがって、馬の消化管はこの行動に合わせて特殊化されています。
また、潰瘍や疝痛などの危険な状態を防ぐための適切な飼付を行うためには、馬の消化生物学を理解することが大切です。
馬にとって大切な水の補給
平均して、成馬は 1 日38 リットルの水を消費します。
そのため、馬が一日中いつでも自由に選べる水を摂取できる必要があります。
水用のバケツや大きな容器を使用している場合は、一日を通して定期的に点検し、必要に応じて水を入れる必要があります。
自動給水器は毎日点検して、正しく機能していることを確認する必要があります。
最大18時間草を食べ続ける
1日に1回大量の食事を食べる肉食動物とは異なり、馬や他の草食動物は、1 日を通じて一貫して少量の食事を食べます。
野生の馬や他のウマ科動物の行動研究では、ウマ科動物お牧草地に放っておくと、1日あたり最大18時間草を食べ続ける事が実証されました。
対して厩舎で管理されている馬は同量の乾草を2時間程度に干し草を食べてしまいます。
干乾草の消費を抑えるために、乾草ネットの使用の推奨が増えています。
これらの網を使用すると、平均して、馬は 2 時間ではなく 5 時間程度かけてゆっくり乾草を消費します。
ですのでネットを使用することで馬が一日中食べるという自然な生態をサポートする事ができます。
馬の消化スピード
平均的な体格の馬 (450kg) は、1 日あたり体重の約 3%(12〜14kg)の飼料を摂取する必要があります。
穀物中心の食事を与えられた馬の消化には、わずか36時間しかかかりません。
牧草の多い食事の場合、消化にさらに時間がかかり、最大72時間かかることがあります。
これにより、繊維質物質が分解され、後腸で栄養素が吸収されるのに必要な時間が確保されます。
馬の生態では、飼料が常に消化管に出入りすることが想定されているため、馬は 1 日に4~13回排便します。
成馬の胃は体の大きさに比べて比較的小さく、最大12 リットルを収容できます。
興味深いことに、食物は小腸に送られるまで、馬の胃の中に約15~20分間しか留まりません。
ここでは比較的わずかな消化が行われます。また、データによると、胃への継続的な栄養補給は潰瘍形成の発生率の低下と関係していることが示されています。
小腸の長さは、中型の馬でおよそ21 メートルです。これは栄養素の消化と吸収の主要な場所です。
ここは胆汁が分泌される場所でもあります。
胆汁は脂肪の分解と乳化を可能にします。
他の哺乳類とは異なり、馬には胆嚢がなく、胆汁を蓄えることができません。
したがって、馬の場合、胆汁は常に小腸に分泌されます。
これもまた、一日を通して一貫して食事をする動物をサポートします。
大腸、主に盲腸は、馬の消化が遅くなる傾向がある場所です。
ここは、後腸が飼料を「発酵」させる場所でもあります。
中型の馬の盲腸は大きな桶のようなもので、最大70リットルの物質を入れることができます。
ここは、馬にさまざまな種類の疝痛が発生する場所でもあります。
簡単に言うと、疝痛は非常に痛みを伴う消化障害であり、馬の死につながる可能性があります。
宿便疝痛は最も一般的なタイプの 1 つです。
このタイプの疝痛では、部分的に消化された飼料が大腸内に蓄積して「詰まり」、動きが止まり、宿便が生じます。
最も一般的な給餌方法は馬に 1 日 2 回(通常は朝と夕方)与えることであるため、研究データによると宿便疝痛の発生率とリスクが増加することが示されています。
まとめ
総合すると、濃厚飼料や乾草を与えるときは、最低限、食事の重さを量り、均等に分けて与える必要があります。
餌は1日3~4回に分けて与えるのが理想的です。
1 日を通して少量の食事をより頻繁に与える習慣は、馬における疝痛やその他の消化器疾患の発生率の低下と深く関わっています。
馬は常に食べ続けて、常に消化しながら消化器官を働かせておく事が、馬の健康にとって大切という事です。
飼育されている馬の場合、また乗馬クラブなどで仕事をしている馬の場合は一日18時間放牧で過ごすというのは現実的に難しいです。
1日の適正な量をなるべく回数を増やして与えたり、乾草をネットで吊るしていつでも少しずつ食べられる様にしてあげるなど工夫して馬の本来の生態になるべく近づける様にしたいですね。