乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は、馬の行動を馬からの視点で考えてみようというお話です。
馬の行動は、狩人ではなく狩られる側の視点から理解される必要がありますが、地球上で最も成功した狩人である人間にとって、この視点は当然ながら自然に得られるものではありません。
馬の行動をどのように理解し、人とコミュニケーションを図るにはどうしたら良いかという事は近年とても注目されるようになりました。
集団動物である馬が馬同士で行っている行動を人に置き換えて、自分が群れのリーダーとして馬に認識される事でトレーニングを行うナチュラルホースマンシップなどがその代表ですね。
自分が馬のリーダーになるために、馬のボディランゲージを真似して行うというお話はしたことがあると思います。
どんなに馬のリーダーになろうと馬の行動を模倣したとしても、人の意図が単純な支配である場合それは馬に伝わってしまいます。
リーダーは身の安全のために方向やスピードをコントロールしてくれる存在でなければいけません。
ですがどんなに頑張っても、見た目や匂い、鳴き声や身体的な感覚は馬になりきれません。
れほど長い間、捕食者に対する本能的な恐怖を培ってきた動物にとって、無害であり信頼できる有能なリーダーとして馬が人を受け入れることが簡単ではない事は想像できると思います。
野生の馬が生き残るのに役立った野生の本能は現代の馬にもまだ残っています。
・捕食者を避けたいという欲求
・食べ物を求め、避難できる安全な場所を求める欲求
・群れを形成したいという欲求
このような馬の本能は、捕食者がいない厩舎やいつでもきちんと与えられる飼料や、多頭放牧などでその欲求を満たす事ができ、馬の信頼を得るための基本的な部分です。
人が安全であると考える環境に住んでいる馬は、それを同じ様に安全だと受け入れるだろうと想定していますが、それでも人の視点では馬にとって足りない事も多々あるのだろうと思います。
そこに思いや考えを至らす事が馬と関係を築くためにとても大切だと思います。
次回は後編、馬の本能の中で人が理解しづらいが最も尊重しなければいけない防衛本能のお話です。