進由紀

馬の脱水チェック方法

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は馬の脱水のチェック方法についてお話します。

馬は主に発汗と呼吸によって水分を失います。
たとえば、軽い運動を行った後、馬は約4ℓの汗をかきます。
激しい運動をすると、馬は最大18ℓの汗をかくことがあります。
体から大量の水分が失われ脱水症状を引き起こす可能性があるのです。

馬の脱水症状のサインは?

馬が十分な水を飲まなかったり、長時間水を与えられなかったりすると、脱水症状に陥る可能性があります。
脱水症状はどんな馬にとっても危険な状態です。
馬は食べ物がなくても(数週間ではないにしても)何日も生きられますが、水がなければ数日以内に死んでしまう可能性があります。
馬が1日以上水を飲まなくなった場合は、すぐに獣医師に相談する必要があります。

馬が脱水症状を起こしている場合、次のような兆候の組み合わせが顕著になります。

  • 無気力や憂鬱などの異常行動
  • 食欲減少
  • 落ち込んだ目と脇腹、引き締まった腹部
  • 歯ぐき(粘膜)が乾燥して赤くなっている
  • 濃い尿

馬がこの様な兆候を示す前に、脱水をチェックして、脱水があれば対処してあげる事が大切です。脱水のチェック法はいくつかあります。

・皮膚ピンチテスト

馬の脱水症状のテストとしてよく使用されます。
これは、馬の首や肩の周りの皮膚をそっとつまんで放すだけです。
水分を含んだ馬の皮膚は1、2秒ですぐに回復します。
皮膚がテントの様に盛り上がり3、4秒かけて元に戻る場合は脱水状態であることを示しています。

・歯肉のテスト

歯茎はピンク色で湿っていますが、指を押し当てると少し黄色くなってから元の色に戻ります。
通常であれば1、2秒で元の色に戻りますが、脱水している馬は3、4秒かかります。
もし歯肉が乾燥して赤や紫に見える場合は重度の脱水症状の兆候です。

・心拍数&呼吸数

安静時の心拍数は25〜40拍/分ですが脱水している時は60拍  /分を超える場合があります。
また呼吸数は通常1分間に8〜12回です、呼吸数が20を超えて浅く速く呼吸する場合は、脱水の可能性があります。

重度の脱水症状の場合は、補液などが必要になりますが、軽度ならまずは水をなるべく飲ませる様にします。
スポーツドリンクやアップルタイザーなどで味をつけて飲水を促すなどの方法があります。また岩塩を馬房に設置していつでも舐められる様にしておくと、馬に毎日適量の水を飲むよう促すことができます。より確実な方法は、馬の毎日の飼料に塩分を与えることです。
暑い夏の時期や激しい運動をしているときは、毎日最大150gの塩分を2 回の食事に分けて摂取させます。夏場は塩分だけでなく電解質の補給も脱水を防ぐために大切です。

そろそろ蒸し暑い季節になってきました。馬がきちんと水分補給できているか、脱水していないか、注意してみてあげましょう。

進 由紀

進 由紀

投稿者の記事一覧

(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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