進由紀

馬の蹄(ひづめ)

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は、馬の蹄についてです。

『蹄なくして馬なし』と言われる程、馬にとって蹄は大切なものです。
蹄は、より速く走るために中指の先端(爪)が進化したものです。
ですので、蹄は爪と同じ角質(ケラチンという物質)で出来ています。 
爪と同様に放置しておくと伸びる性質があります。
ひと月に1センチほど伸びますので、人の爪と同じくらいのスピードでしょうか。
野生の馬は、行動範囲が広いため蹄も自然と摩耗します。
でも、牧場や乗馬クラブなどの馬は、人の手で定期的にメンテナンスしてあげる必要があります。
また、蹄の裏側もデリケートな上に土など汚れが溜まりやすく、病気になりやすい部分なので適切なケアが欠かせません。

馬の蹄を守るために、蹄鉄を蹄に装着します(装蹄)。
馬にとっての靴(ホースシュー)ですね。
乗馬では月に 1 回のペースで、蹄の伸びた部分を削り(削蹄)、形を整えて蹄鉄を装着します。
釘で打ち付けるのですが、蹄には神経が通っている為、神経を避けて釘を打ったり、また少
しの角度の違いで馬の歩様に変化が生じてしまう、時には痛みを生じてしまうので、装蹄はプロの装蹄師さんが行います。
蹄鉄も運動と共に摩耗していくので月に 1 回、競走馬は 2 週間に 1 度装蹄します。
また、蹄は第 2 の心臓とも言われます。

蹄には、大きく分けて、足の先端から
「蹄尖部(ていせんぶ)」
「蹄側部(ていそくぶ)」
「蹄踵部(ていしょうぶ)」
という 3 つの部分に分類されます。
このうち、蹄踵部は柔らかい造りになって
いて、着地のたびに伸縮します(蹄機作用といいます)。
この蹄機作用がポンプの役割を果た
し、心臓に血液を送り返す手助けをします。
蹄機作用は蹄自体の成長にもとても良い働きがあ
ります。
蹄を中長期的に改善させたい時などは、蹄機作用がより働きやすくするために、
あえて装蹄をせずに裸蹄にする事もあります。

蹄の病気

・裂蹄

蹄にヒビが入ったり割れたりする病気です。
特に、冬場などは乾燥するために蹄がもろくなり裂蹄になりやすくなります。
ほとんどの場合、地面に着地する蹄負面の方から上側の蹄冠部に向 かって縦方向に発症し、亀裂のひどいものだと知覚部まで達し、出血や疼痛を伴い歩様が悪く なります。
裂蹄の原因は、冬場に乾燥するために起こる場合が多いので蹄油を塗って乾燥を防ぐなどの 予防が大事です。
また乾燥の他に、堅い地面での運動が原因で発症する場合もあります。

・蹄叉腐爛

蹄叉の部分が腐り悪臭をはなつ病気です。

厩舎や放牧場などが不潔な環境であったり、蹄底に汚物がつまっていたりと蹄の手入れ不足が原因で発症します。
この病気になると蹄叉の部分 がボロボロと崩れやすくなり、悪臭が出て化膿した液がにじみ出てきます。
悪化しひどくなると出血し歩様が悪くなります。

予防には、厩舎などの環境を清潔にし、蹄をキレイに手入れしておく ことが大切です。

・挫跖

石などの硬いものを踏んだ時や走っている時に後肢の蹄の先端を前肢の蹄底にぶつけた時などに蹄底の知覚部が圧迫されて起こる炎症や内出血のことを言います。
蹄底の浅い馬や肢勢 の悪い馬、または後肢の踏み込みが良すぎる馬に発症しやすい疾病です。
前の蹄に発症することが多く、蹄に熱を持ち内部が化膿している重症な例では歩様が悪くなります。
予防策としては 石などの硬い物質をあらかじめ除去しておくことが重要です。

・蟻洞

蟻洞は、蹄壁の奥深くに空洞ができる病気です。
蟻洞の原因としては馬房環境が不衛生であることや蹄の手入れ不足によって真菌(カビ)や 細菌による白線部の腐敗に起因していることが多いです。
真菌は、人間でいう水虫に似ており蹄壁の内部を食べてボロボロにしてしまい、細菌は蹄の表 面から徐々に角質を溶かして空洞を作ります。

蟻洞の原因は、その他にも蹄尖部に荷重がかかる外傷性が要因のものや蹄葉炎に起因するものもあります。
治療法としては、薬を塗って殺菌、消毒したり削蹄(蹄を切る)し患部を空気にさらすことによって真菌や細菌を殺菌します。
ただ、蹄を深く切ってしまうと蹄が伸びるまでに時間がかかるために完治には期間を要する病気なので、馬房内を清潔に保ち蹄の管理をしっかりするなどの予防が大切です。

・蹄葉炎

馬は、蹄機作用によって蹄の内部に血液が十分に行き渡るようになっています。
しかし、肢に故障などを発症し動けずに他の肢で体重を負重し続けると蹄の内部の血液の循環が阻害され て蹄の内部に炎症が起こり激しい疼痛が起こります。

症状が重くなると蹄と蹄骨の結合が悪くなり、蹄が変形し蹄骨が蹄の裏側へ抜けてくることもあります。
馬は、体重が重いために病状の進行を止めることは難しく、重症になると命を落とすこともある病気です。

蹄の手入れ

蹄の病気は痛みを伴わない軽いものから、命に関わるものまであります。
軽い病気だとしても慢性化することにより、馬の歩様に問題が生じ、身体全体へ影響を及ぼすので、日頃からきち んとチェックし、ケアをすることが大切です。

蹄の裏に土や敷料が詰まっていないように清潔にし、乾燥させ、保護のための油を塗ります。

・馬房が湿っていたり梅雨の時期などは
 蹄が湿気を帯びて柔らかくなってしまうのでしっかりと時間をかけて乾燥させます。
・冬季の乾燥時期は
 蹄も乾燥しすぎて裂蹄しやすくなるので蹄油をし っかり塗る、など蹄のコンディションによって対応するようにしましょう。

馬にとって蹄は要です。
馬のお手入れの中でも蹄のケアは特に念入りにしてあげましょう。

 

進 由紀

進 由紀

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(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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