進由紀

「馬の脳」と「人の脳」

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は、馬の脳についてです。

馬の脳について、考えたことはありますか?
馬の行動や感情を考えるときに、どうしても人間の思考や身近な犬や猫などの動物に照らし合わせて考えしまいがちですよね。

馬は自然界において、獲物となる動物であることは多くの人が知っています。
なので馬の反応や周囲に対する認識が人間とはかなり違います。
では馬の脳と人間の脳の実際の違いは何でしょうか。

脳の重さと脳化指数

馬の脳の重さは 600 ~ 800 g です。
馬の脳は、クルミほどの大きさしかないという古い言い伝えがありますが、これは決して真実ではなく、馬の脳は人間の脳よりも小さいくらいの大きさです。
因みに人間は、1200〜1500gです。
犬は60〜70g、猫は30g。

体重と脳の重さを知性の指標として示す脳化指数で言うと、人間は7.4〜7.8、馬が0.9、犬は1.2、猫は1.0です。

馬の脳の働き

脳は3つの主要な部分に分かれています。

1. 前脳:全体の容積の 75% を占め、4 つの領域に分かれています

〈 a 〉大脳
大脳は脳の最も大きな領域です。
過去の記憶を利用して、視覚、聴覚、温度、触覚、嗅覚などの感覚に反応します。
大脳はほとんどの身体的および精神的活動を制御および調整し、学習、気質、気分、感情、知性の中心です。

〈 b 〉視床下部
視床下部は前脳の基部を形成し、ブドウほどの大きさです。
視床下部は茎で下垂体とつながっています。
視床下部は内分泌系と自律神経系の腺を制御しますが、馬はこれらを制御できません。
これには血圧、体温、行動、性的反応、攻撃性、快楽の調節が含まれます。

〈 c  〉視床
視床は、入ってくるメッセージを最初に分類し、処理のために脳の適切な領域に送る役割を担っています。

〈 d 〉嗅葉
嗅覚に関係します。

2. 中脳:大脳の後ろに位置し、視覚や嗅覚への反応、呼吸、行動、運動の自発的な制御を制御します。

3. 後脳:3つの役割

  • 延髄は脊髄と脳を結び、心拍、呼吸、消化、呼吸などの生命維持活動を制御します。
    また、咳、くしゃみ、嚥下も調整します。
  • 小脳(小脳とも呼ばれる)は大脳の小型版のようなもので、姿勢、バランス、動き、筋肉の活動を制御する役割を担っています。
  • 橋は右半球と左半球の延髄と視床を結びます。

運動能力と言語能力

馬と比較すると、人間の脳はより洗練された運動能力を備えて拡大しています。
これにより、たとえば体の他の部分を動かさずにキーボードを素早く入力することができます。
また人間の脳には、複雑に発達した言語専用の広い領域があり、部分的には口頭言語が含まれますが、馬よりも多くのコミュニケーションのニュアンスも含まれています。

感情的コンピテンス(自分の感情に気づく能力)

人間には、複雑な感情や思考を専門とする領域もあります。
人間の脳には、思考と感情の両方に関連する複雑な機能を正確に処理できる非常に大きな領域があります。
この点が、この領域がほとんど存在しない馬との違いです。

全体的なバランスと動き

馬の小脳は大きいため、全体的な動きやバランスが人間より優れています。
ほとんどの人間は、馬ができることをやろうとすると、何度も怪我をするでしょう。
しかし、馬の脳のおかげで、馬は直立姿勢を保ち、非常に異なる地形でも長距離を移動することができます。
さらに、馬の脳は、複雑な精神的または感情的な干渉を受けずに、感覚入力を受け取り、それに基づいて行動することに特化しています。


次回は「馬の感情を司る部分の脳」のお話をします。

「馬の脳」と「人の脳」- 2 馬は嫉妬する?

進 由紀

進 由紀

投稿者の記事一覧

(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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