進由紀

馬はどのように考えて学習する?(前編)

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は、馬の考えと学習方法についてです。

どのような競技でも、競技をしなくても、馬とコミュニケーションをとり、馬がどのように考え、学習するかの基本を理解することはとても大切です。

馬のトレーニングは馬の自然な本能と、馬が人の指示や扶助に反応することを学ぶ方法について考えてみましょう。

1. 馬は人間ではない

馬好きさんにありがちな最初のミスは、馬は人間の特性、感情、認知能力を持っていると信じて、馬を人間のように扱ってしまうこと。
これは馬にとって混乱を招くだけでなく、非常に危険な場合もあります。ですから、まず第一に、馬は馬のように考えるということを理解する必要があります。
馬が理解できる方法で馬とコミュニケーションをとるのが人間の責任であり、その逆ではありません。

2. 馬は群れをなす動物

馬は何千年にも及ぶ進化を通じて、安全な群れの環境で生活するように適応してきました。
群れの規模が大きいほど、捕食動物に食べられない可能性が高くなります。

馬は群れから安全だけでなく、仲間意識や食べ物がどこにあるのかという知識も得ました。

馬のほとんどは本質的に従順なので、家庭環境に置かれると、安全のために他の馬に従うのではなく、信頼できる人間に従うことを受け入れます。

3. あなたの馬は獲物である

自然界では、馬は獲物となる動物であり、脅かされるとすぐに逃げるという本能を持っています。

驚くことは乗り手にとっては迷惑ですが、馬にとっては無意識に行われます。
馬は潜在的な危険に常に警戒するようにプログラムされています。驚いた馬を罰すると、逃げようとする最初の反応が強化されてしまい、状況が悪化するだけです。

馬が逃げることができない場合、その「戦闘」反応がしばしば始まります。

ライダーが馬を固定してブロックしていると(拳や脚で)馬は自由に前進できず、閉じ込められていると感じ、抵抗して緊張し、逃げようとライダーの手と戦います。

したがって、馬を調教するときは、馬が閉じ込められたり緊張したりしないように、常に逃げ道を用意する必要があります。
それは、内側の手綱を緩めたり、より簡単な運動を選んで馬にかかる圧力を軽減したりすることで実現できます。

4. 馬は(生まれつき)怠け者

野生の状態では、馬は生存に必要のないエネルギーを消費しません。食べ物や水を探すときは、必要最小限の労力で探します。

馬を訓練するときは、馬が常にあなたの質問に対する最も簡単な答えを探しています。ですので馬に要求するすべてのことが簡単になるよう、論理的かつ段階的に馬に伝えましょう。

5. 馬にはバランスが必要

野生では馬が危険から逃げて転倒すると、獲物になってしまう可能性があります。
そのため馬にとってバランスは非常に重要で、馬はなるべく転倒しないようにしています。

乗馬やトレーニングの際、馬は常に騎手の体重の下でバランスを取ろうとします。
馬が騎手とバランスを保ちながら働く必要性があるからこそ、ライダーは一体となって動く調和のとれたパートナーシップを築くことができるのです。
また、バランスの取れたライダーは馬にとって安心感(転倒のリスクの少ないため)を与え、馬がリラックスした状態を保つのに役立つと言えます。

馬のボディランゲージを読む

〈 馬の感情状態は耳で見る 〉

  • 耳を後ろに反らすのは、怒り、不快感、癇癪の表れ。
  • 耳を前に突き出すのは、馬が目の前の何かに注意を払っているという合図。
  • 耳が前後に動いているということは、馬が自分の前と後ろ(例えば、馬の背中に座っている)に注意を分散していることを意味する。
  • 耳が横に垂れているのは、馬がリラックスしていて、眠っている可能性もある。

馬に乗っているときは、リラックスした耳があなたのほうを向いているのが望ましいです(耳を後ろにピンと立てるのではなく)。
これは、馬が周囲で起こっていることではなくあなたに完全に注意を向けており、緊張していないことを示しています。

後編では、馬の学習プロセスについてお話しします。

進 由紀

進 由紀

投稿者の記事一覧

(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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