進由紀

馬の最長寿の記録と長生きのヒミツ ~

乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。
今回は馬の最長寿の馬をご紹介します!

「犬は10年くらい、猫は15年くらいって聞くけど…馬って、どれくらい生きるの?」
 乗馬クラブでそんな質問をされること、よくあります。

意外と知られていないんですが、馬ってけっこう長生きする動物なんです。
 そして中には、人間の想像を超えるような“超・長寿馬”もいるんですよ。

■ 世界一長生きした馬は、62歳!

まずは、ギネス世界記録にも登録されている“伝説の長寿馬”をご紹介。

名前は、オールド・ビリー(Old Billy)。
 イギリスで1760年に生まれ、1822年に62歳で亡くなったとされている馬です。

現代のような動物医療もなかった時代に、農耕馬として水運にも使われながら、 60年以上を生き抜いたのは本当に驚異的。
 その骨格標本は今もイギリスの博物館に残されていて、まさに“馬の歴史の証人”とも言える存在です。

■ 小さなポニーも、びっくり長生き

「それって特別な例じゃないの?」と思われるかもしれませんが、ほかにも“最長寿級”の馬はいます。

たとえば、シュガー・パフ(Sugar Puff)という名前のポニー。 シェットランドとエクスムーアのミックスで、イギリス生まれの小さな馬でした。

彼は1951年に生まれ、2007年に亡くなりました。 なんと56歳まで生きたんです。

小さな体の方が心臓や脚への負担が少ないこともあり、 「ポニー=長生きしやすい」という説もあります。

■ 最近まで生きていた“世界最高齢の現役馬”

そしてつい最近まで、“生きている馬としては世界最高齢”だったのが、モキー(Mokie)というアラブ種の馬です。

なんと、40歳と83日という年齢でギネス認定。映画俳優バート・レイノルズの所有馬だったことでも話題になりました。

2025年の春に惜しくも亡くなりましたが、SNSでは世界中の馬好きたちがその旅立ちを悼んでいました。

■ 馬の平均寿命ってどれくらい?

一般的には、馬の平均寿命は25〜30歳くらいとされています。

ただ、近年では獣医療の進歩や飼育環境の改善によって、30歳を超えて元気に過ごしている馬も珍しくありません。

「うちのクラブにいる◯◯ちゃん、もう28歳だけど元気よ〜」なんて話は、乗馬界ではよくある会話です。

私が携わってきた馬の最高齢は30歳のクウォーターホースです。

■ 長生きのヒミツってあるの?

では、馬にとっての“長生きのコツ”とはなんでしょうか?

いろいろな要因が考えられますが、代表的なものは…

  • 歯と消化のケア(年齢とともに歯が削れ、噛む力が弱くなる)

  • ストレスの少ない環境(他の馬との相性や、過剰な運動を避ける)

  • 寒暖差に配慮した馬房管理

  • 毎日の観察と、ほんの小さな変化に気づく力

特に高齢馬になると、体調を言葉で伝えることができない分、 「いつもとちょっと違うかも?」に気づける人がそばにいることが大切になります。

■ 馬は、長く一緒にいられる存在

「馬って短命なんでしょ?」と聞かれることもありますが、 実際には、長い年月をともに過ごせるパートナーでもあります。

たとえば、子どもの頃に乗り始めた馬が、 大人になるまでずっと同じ場所にいてくれる――
 そんな関係が築けるのも、馬の魅力のひとつです。

そしてもし今、長く生きている馬と出会えたら。

その子はきっと、たくさんの人に大切にされて、 幸せに暮らしてきた証なのかもしれません。

 

進 由紀

進 由紀

投稿者の記事一覧

(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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