乗馬インストラクターがお伝えする馬のお話。今回は冬の風についてです。
犬が風に耳をなびかせて気持ちよさそうにしているとき。
猫が窓際で風のにおいをくんくんと楽しんでいるとき。
その横で、ふと感じるのが――「馬って、風は好きなのかな?」という疑問。
答えは、「基本的にはあまり好きではない」です。特に、冬の冷たく強い風は、馬にとってストレスになることも多いのです。

◯馬にとっての「風」とは?
馬は、非常に感覚が鋭い動物です。聴覚や嗅覚が優れていて、私たち人間が感じる以上に、周囲の変化に敏感に反応します。そのため、風によって運ばれてくるにおいや音、気配にはとても神経を使っています。とくに、強風や突風のように予測できない動きには、身構えることが多くなります。
風が吹くと、こんな変化が見られることがあります。
・耳をピクピク動かし続ける(周囲を探っている)
・目を細めたり、ぱちぱちと瞬きを増やす
・鼻をふくらませて、においをかごうとする
・急に動きが硬くなる、もしくは挙動が落ち着かなくなる
風そのものが“怖い”のではなく、風によって「何かが起こるかも」と警戒している状態なのです。
◯冬の風がもたらすもの
さらに冬は、風そのものが「冷たさ」「不快さ」をともないます。
毛の流れを逆なでされるような風は、馬にとって不快に感じやすく、首をすくめたり、尻尾を振ったり、そわそわと落ち着かなくなる様子が見られることも。馬房の中で風が吹き抜けていると、リラックスできずに立ちっぱなしになってしまったり、騎乗中に風上を向くと、突然スイッチが入ったようにテンションが上がってしまうこともあります。
馬にとっての「風=苦手要素」の具体例
・風に乗って動く影(人には見えにくいけど、馬には脅威)
・木々のざわめきや遠くの音が風で混ざる
・ハミや装具が揺れたり鳴ったりする
・遠くから急に近づく他の馬のにおい
こうした“刺激”の連続が、馬の緊張や混乱につながることがあるのです。
◯人にできること
「風だから仕方ない」で済ませるのではなく、馬の変化に気づく目を持つことがとても大切です。
たとえば…
・風が強い日は、準備運動を長めにとる
・首や肩まわりを温めてから騎乗する
・馬装の時間にいつも以上に丁寧に声をかける
・風の強い日は、乗る時間やタイミングをずらす選択肢も持つ
また、風が吹いていること=馬が集中しづらい日と考えて、「ちゃんと動いてくれない」ではなく、「ちょっと不安定になる日」と捉えることも大切です。
◯馬にも“苦手”がある
犬が花火を怖がるように、猫が雷に隠れるように。
馬にとっても、風は「本能的に身構える要素」のひとつです。
でも、風の日にこそ見えてくる馬の表情や反応が、私たちと馬との“距離感”を育てるチャンスにもなるのです。
「今日はちょっと風があるな」
そんなときに、いつもより少し丁寧に接してみてください。
馬の目が、ふっと柔らかくなる瞬間があるかもしれません。






























