進由紀

馬に「ごめんね」と思う瞬間|信頼関係を深めるための小さな気づき

乗馬インストラクターがお伝えする馬の話。今回は「ごめんね」がテーマです。

「馬に乗るのが上手くなりたい」「もっと信頼関係を築きたい」そう思っているのに、ふとした瞬間に「ごめんね」と感じてしまうこと、ありませんか?

私はあります。たくさんあります。

言い方が強すぎたとき。タイミングがズレてしまったとき。
不安そうな馬のサインを見逃してしまったとき。

馬は言葉を返してはくれないけれど、その目や耳や背中の感覚から、こちらの“雑さ”や“余裕のなさ”がまっすぐ伝わってしまうことがあります。

◯上手くやろうとするとき、見落としてしまうもの

乗馬が上手くなりたい、いい関係を築きたい。そう思うほど、つい「正しく動かすこと」に意識が向いてしまいます。けれどその“技術”を追うあまり、馬の声を聞く余白がなくなることもあるのです。

本当はもっとソフトに伝えることができたのに、「ちゃんと伝えなきゃ」と力が入ってしまったり。「言うことを聞かせなきゃ」と強く引いてしまったり。

そんなときに、耳を後ろに向けた馬の顔を見て、「ごめんね…」と胸がぎゅっとなるのです。

◯馬は、ぜんぶわかってる

馬は賢く、繊細で、人の空気をとてもよく読みます。だからこそ、こちらのちょっとした緊張、焦り、イライラまで、ぜんぶ伝わってしまいます。

それでも馬は、逃げるわけでも怒るわけでもなく、ただじっとそこに立って、受け止めてくれたりします。

その姿に、私はよく泣きたくなるほどの「申し訳なさ」と「ありがたさ」を感じます。
だから「ごめんね」って思うのは、悪いことじゃないと思うのです。

◯反省から始まる関係もある

人間関係でも、ついキツく言ってしまったあとに「ごめんね」と謝ることで、関係が深まることがありますよね。

馬との関係も、同じだと思います。

失敗したら、立ち止まってみる。馬の顔を見て、小さく「さっきはごめん」と心の中で伝えてみる。
そのあとで、そっと鼻筋をなでたり、頭絡をゆっくり外してあげたり。

言葉にはならなくても、馬はその“雰囲気”をちゃんと感じ取っています。

◯完璧じゃないから、やさしくなれる

私たちは人間で、完璧じゃありません。
気づかずに雑になったり、気持ちが前のめりになったりすることもある。
でもだからこそ、「ごめんね」と思える自分を持ち続けたいのです。

「ごめんね」が言える関係は、きっと信頼のある関係。
そしてその気持ちを込めて接したあとの馬の反応は、どこかやわらかく、少しだけ近くなった気がします。

 

馬に“教える”でも、“コントロールする”でもない。
馬と“分かり合おうとする”、そんな関わり方を大切にしたい。
今日の騎乗が上手くいかなかったとしても、
「ごめん」と「ありがとう」が自然に出てくる関係でいられたら、それだけで十分かもしれません。

 

進 由紀

進 由紀

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(すすむ ゆき)
乗馬インストラクター
全国乗馬倶楽部振興協会認定指導者

2002年より乗馬クラブでインストラクターとして働く

「馬は自分を映す鏡」の様な存在です。
自分の行動に対しての答えを、いつも分かりやすく返してくれます。
だからこそ、いつでも正直に、真剣に、謙虚に、馬と向き合う事が出来ます。
それは時に苦しいけれど、そんな時にもポッと何か閃きをくれたりする。
馬はとても賢くて、優しくて、そしてどんな馬もみな、真面目で頑張り屋です。

出会った馬には、幸せを感じながら人間と仕事をしてもらえるように。
また馬の素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂けるように。

馬と共に成長し、人々に貢献する事を目標に、日々奮闘しています。

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