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イヌに教え、教えられ 第25回 急がないことが、近い道

イヌに教え、教えられ

第25回 急がないことが、近い道


Iさん家族が、保護団体から迎えたミックスのアキは、元野良犬でした。
人の社会の中で生活した経験がないアキは、散歩ですれ違う自転車・バス・ 宅配の台車・走る子供など、多くのことが怖くて逃げ出そうとしていました。
そんなアキの家族から、アキが安心して散歩できるようにトレーニングをしたいと依頼をうけました。
「野良犬」の恐怖の特徴は、「なにか嫌な経験をして恐怖をもった」のではなく、ほとんどが「未経験さゆえの不安からの恐怖」です。
アキは、仔犬の頃から人の手のぬくもりを知らず、散歩もした事がない。そのことが、人と接する中で起こるいろいろな出来事に対するアキの恐怖を強くしています。
撫でたい可愛がりたい気持ちからアキに伸ばされる人の手でさえも、アキにとっては「何かされる!?」と不安や恐怖の思いを抱く対象となってしまうのです。
 
私がご家族へ一番最初にアドバイスしたことは、

     恐怖の改善には、時間が掛かる
     そのために一番大切なのは「急がないこと」

 
散歩の訓練は、リードに慣らせることから始めていきます。
      リードをつけて、まずはリビングを1周
      次に、マンション廊下や階段の登り降り
      そして、裏口の通路へ
ここまで、急がず進めて約4ヶ月。そして、外へ散歩に出る日がやってきました。
最初は、怖がり引っ張ってばかりいましたが、怖くても次第に落ち着けるようになってきたアキ。
それでも、子供が蹴ったボールが近くをかすめた時は大パニック・・・怖がりの仔には1度の怖い体験が大きく響き残ります。
それでも、やっていくことは変わらない。体験の積み上げてを繰り返えしていく。根気よく、コツコツと。
アキと一緒に散歩をするママには、少々怖いことがあっても「ママがいれば大丈夫!」とアキに感じさせる強さも必要だ。
ママには、毅然とそして出来事に一喜一憂せず淡々と歩くように指導した。
そして、トレーニングを始めてから半年を超え、今まで積み上げてきた家族の頑張りが花開く時がやってきた。
散歩中に尻尾を緩やかに振るアキ・・散歩を楽しんで歩けるようになってきたのです。人と暮らすことに、安心感や楽しさを感じ知り始めたアキ。
そんなアキを感じられることがとてもうれしい家族。。。
 
急がないことが、近い道
 
そして今アキは、しっかりできていた「スワレ」や「フセ」の指示に知らんぷりして、試すような行動を見せはじめ家族にチャレンジしてきた。そのアキのチャレンジを家族一致団結しすぐさま却下!そこだけは絶対に譲ってあげないよ、いつまでもね。

 


 

2016年3月18日掲載

 

イヌに教え、教えられ
第24回 導く強さも必要

イヌに教え、教えられ 第26回
難しいときは、視点を変えてみる

里見 潤

里見 潤

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(さとみ じゅん)

ドッグコーチ

1975年、横浜市生まれ。2004年、警察犬訓練校に入学、出張トレーニング会社を経て、保護活動団体「Dog shelter」の専属スタッフとして、保護犬のトレーニング、一時預かり家庭と里親家庭の間に入り、アフターフォローを担当する。
2012年7月より独立。出張、及び預託トレーニングを柱に活動する傍ら、保護犬の一時預かりを継続中。
 
日本警察犬協会公認訓練士
ジャパンケネルクラブ公認訓練士
東京都動物愛護推進員

 保護犬預かりを主に、トレーニングのことを書いている里見潤さんのブログ
 「イヌと歩けば。」http://setahachidog.blog.fc2.com

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