日本は動物愛護後進国!
-海外に学ぶ動物愛護 第5回-
これまで、ヨーロッパ諸国の動物愛護の歴史や取り組みについて紹介してきました。他国の実情を知り、日本で生活してきた実感と比較してみると、日本の動物愛護が他国に遅れを取っていることがよく分かります。実際のところ、日本の動物愛護は現在どのような状況なのでしょうか。
最終回では、日本の動物愛護についてお送りします。
日本は、ヨーロッパ諸国と比べて「動物愛護後進国」だといわれています。
たとえば、イギリスやイタリアではマイクロチップの装着が義務化されているのに対し、日本は、国内で飼育するだけなら装着する必要はありません。
マイクロチップに関しては、環境省がポスターなどを利用して普及を呼びかけていますが、その普及率は驚くほど低いのが現状です。首都圏で5%から多くても10%未満にとどまり、地方では、なんと0.2~3%程度の地域もあります。
厚生労働省の都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等で、登録されている犬は平成22年度で6,778,141頭、動物ID 普及推進会議への登録数は450,414 頭となっており、そこから計算すると登録されている犬のうちマイクロチップを装着しているのは6%程度。
また、環境省の中央環境審議会動物愛護部会 第19回 配布資料5によると、犬・猫の所有明示措置の実施率は増加傾向にあり、現在、犬で約58%、猫で約43%(インターネット調査)。(ただし、対面による世論調査では犬36%、猫20%にとどまる)とあります。
犬・猫の所有明示措置とは、動物の愛護及び管理に関する法律の第7条第3項にある努力規定のことです。ここには首輪、名札、マイクロチップ、入れ墨、脚環等によって家庭動物に装着・施術するようにと示されています。突然の何かが起こってペットと別れてしまうこともあります。義務ではなく努力規定とはいえ、いまだに首輪、名札、マイクロチップ、入れ墨、脚環等を全て含めての実施率が58%程度というのは驚きの事実です。
(厚生労働省:都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等,環境省:中央環境審議会動物愛護部会 動物愛護管理のあり方検討小委員会(第19回)配布資料5)
徐々に動物愛護関連法の整備が進められてきている日本ですが、未だにイギリスのような動物福祉国としては機能していません。動物愛護先進諸国と日本には、なぜこれほどの違いがあるのでしょうか。
日本ではペットショップで購入することが一般的ですが、イギリスでは「ペット動物法」により販売に規制がかけられているため、ペットショップやブリーダーから犬猫を購入することは大変難しくなっています。
また、保護施設などのシェルターから譲り受けて飼うという方法が広く一般に浸透していることも大きな違いの1つです。
また、日本では子犬・子猫の需要が非常に高く、ペットショップで売られている動物の9割以上は生後2か月以内といわれています。
犬や猫は、生後間もなく親から引き離されると、噛み癖、吠え癖などの問題行動を起こしやすくなるといいます。さらに、成長してから障害などを持つことが発覚することもあります。このような犬猫を疎んで、保健所に連れてくる飼い主が後を絶たないのです。
年度 | 犬 | 猫 | 合計 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
引取り数 | 処分数 | 引取り数 | 処分数 | 引取り数 | 処分数 | ||||
返還・譲渡数 | 殺処分数 | 返還・譲渡数 | 殺処分数 | 返還・譲渡数 | 殺処分数 | ||||
平成16年度 | 181,167 | 25,297 | 155,870 | 237,246 | 4,026 | 238,929 | 418,413 | 29,323 | 394,799 |
平成17年度 | 163,578 | 24,979 | 138,599 | 228,654 | 3,936 | 226,702 | 392,232 | 28,915 | 365,301 |
平成18年度 | 142,110 | 28,942 | 112,690 | 232,050 | 4,427 | 228,373 | 374,160 | 33,369 | 341,063 |
平成19年度 | 129,937 | 29,942 | 98,556 | 206,412 | 6,179 | 200,760 | 336,349 | 36,121 | 299,316 |
平成20年度 | 113,488 | 32,774 | 82,464 | 201,619 | 8,311 | 193,748 | 315,107 | 41,085 | 276,212 |
平成21年度 | 93,807 | 32,944 | 64,061 | 177,785 | 10,621 | 165,771 | 271,592 | 43,565 | 229,832 |
平成22年度 | 85,166 | 33,464 | 51,964 | 164,308 | 11,876 | 152,729 | 249,474 | 45,340 | 204,693 |
平成23年度 | 77,805 | 34,282 | 43,606 | 143,195 | 12,680 | 131,136 | 221,000 | 46,962 | 174,742 |
(注)16,17年度の犬の引取り数は、狂犬病予防法に基づく抑留を勘案した推計値
(環境省:犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況)
以前に紹介した通り、ドイツでは殺処分数は「0」です。
動物を飼っている方は、その子がどのような環境で生まれたかご存じでしょうか?
ブリーダーの中には、利益を得るため、子犬工場(パピーミル)で大量繁殖を試み、何度も帝王切開を繰り返し、生まれた子犬や親犬たちを小さなゲージに閉じ込めているような悪質業者も少なくありません。もちろん、そのような業者には行政により営業停止を申し立てられますが、これが「抜き打ち」ではなく、「事前通告」であるため、実効性がないとの批判もあります。
このように、日本では動物の繁殖・譲渡方法に多くの問題点を抱えています。
しかし、最近日本でもペットショップへの法規制に動きがでてきました。まず、平成24年9月5日に「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律」が公布されました。これを受け、施行後3年間はペットの引き渡し禁止期間を生後45日までとし、以降はそれが生後49日まで引き延ばされることとなりました。また、今後「施行後5年以内/生後56日」に変更するかどうかの検討がされる予定です。
法で縛ることによって、殺処分数減少への希望は高まります。しかし、まずは日本が動物愛護後進国である現状を私たち自身が理解し、問題意識を高めていくことから始めなければならないのではないでしょうか。
現在、日本は動物愛護をめぐった多くの問題を抱えています。
特に深刻なのはやはり殺処分数の多さですが、他にも、野良猫、ペットショップ、外来種、動物愛護批判など、問題は多岐に渡っています。これらの課題に対し、日本はどうするべきでしょうか。また、みなさんは何をすればよいと思いますか?
これからもGORONでは、日本の動物愛護法に関するニュースや解説、国内の愛護団体の紹介などを通し、人も動物も共に幸せに暮らすための意識の普及に役立つ記事をお届けしていきたいと思います。
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