家族の理解 |
-ご家族は、この活動には理解されているのでしょうか。-
理解してくれるようになったのは3、4年ぐらい前です。それまでは、救いたいのなら、世の中の全部の犬を救ってこいとやはり言われていました。犬猫を追って保護して、家に連れて帰ることで、家庭に負担がかかることは確かですから、「なんで俺たちがこういう思いをしなければいけないんだ」という思いが家族にあったのだと思います。
本当に主人の気持ちや態度が応援してくれる方向に変わったのは、ボランティアさん達が集まって、この子達のためにフリーマーケットを開いたときではないかと思います。そこに主人が来たのですが、今まで私一人でやってきたことに仲間がいるということで、この活動を続けていくことを認めてくれました。
あとは年賀状ですね。圧倒的に主人と枚数が違うんです。それを見た主人は、「動物をレスキューすることは世の中にとっては悪いことではなく、やはり必要なことで、それを自分自身の生きる道として私が活動をしているということならば、それもいいと思う」と言ってくれたんです。最近では、「子ども達は(私の)背中を見ているよ」と言って応援してくれます。
-今、お子さんは何歳なのでしょうか。-
小学校5年生と4年生です。
-では、まだ難しい年頃ではないのでしょうね。-
そうですね。私には年の離れた弟がいますが、その弟も一時的に接し方や距離感が難しくなって、でもまたもとの雰囲気に戻りました。一時話さなくても、親と話さない時期があっても、兄弟で話をしない時期があっても、必ず仲良く話すときがくるんですよね。自分もそうでしたし、誰でも通る道ですから、もしうちの子どもたちとそういう難しい状況になってしまったとしても、大丈夫かなと思っています。
-家の中にも犬はたくさんいるのでしょうか。-
そうですね。でも、常に人間のそばというわけではなく動物たちのスペースと私たち家族のスペースは分かれています。もともとこの活動をしたいと思い、古い家を買って造ったので、1階を動物のレスキューのために猫部屋、犬部屋に分けてあります。そういう造りにして、主人と子ども達が関わらなくてもよいようにしました。
でも、どうしても具合が悪くて、そばに置かなくてはいけない子は、家族のところに連れてきて看病やお世話をしています。以前はうちの飼い犬にした犬が家族と一緒に暮らしていたのですが、もう亡くなってしまったので、今は保護犬だけです。
-とくにお子さんも旦那さんも問題もなく、生活できているのでしょうか。-
それが、去年事故がおきてしまって。今まで全く問題のなかった保護犬が、ある日突然小学4年生の息子に襲いかかってしまい、息子は何度も噛まれてしまいました。
その犬をシェルターに連れて行ったのですが、その犬の心の中には、複数の人を受け入れることができず、世話をしてくれる人は一人だけでいいという思いがあったようでした。「あっかわいいわね」と声をかけられても、本当はそれだけでは触って欲しくないと思っているので愛情を受けることがストレスになってしまうんです。
私達に犬の心を正しく読む目がないために、その子を余計に傷つけてしまう。それである日突然暴れてしまって、近くにいた人が噛まれるということが起きます。私ももちろん噛まれたことがありますが、そのことによってはじめて、ここにいるボランティアさん達全員が犬たちのことをもっと深く考えるべきではないかと気づいたんです。
やはり息子はあんな事故があったので、もう犬は嫌いになってしまいました。しかしだからといって、私にレスキュー活動をやめて欲しいとか、もう犬を連れてくるなということは言いません。できる限り安全に、事故などが起こらずに活動を続けられるようにと応援してくれています。
事故が起きたとき主人は、「おまえは間違っている」と一言いって、「おまえは犬の心を直そうとするよな。でも、おまえでも直しきれない犬っていうのがいるんだ」と言ったんです。その言葉を聞いて、ズキっと何か刺さるモノがありました。本当にそこは誤っちゃいけないと思いました。
優しくしたり、かわいがったりすればいつか犬たちは心を開くんじゃないかと思っていましたが、そうではないとやっと気づいたんです。人でも直しきれない心の傷を持っているワンちゃんに対して、どういった方法でレスキューをしたらいいのかをみんなでしっかり話し合いました。
シェルターでは一人が一匹を世話するという状況はあり得ない。みんなで世話していくのだから、個々一人一人が気をつけていくことや、もっと理解したり認識する技術をあげることが、必要になってきているということを確認し合いました。
ここのところ、ボランティアさんと本当によく話し合いをしています。お世話よりも話し合いのほうが長いんじゃないかと思うぐらい。話をして共通認識を持つことはとっても大事ですね。