ある日、実家で暮らす母が、保護犬の「にじ」と暮らし始めました。
先代犬が亡くなってから外に出る機会が減っていた母。
一緒に歩いてくれる犬がいれば、散歩で外出するだろうと勧めたのがきっかけでした。
にじは、ブリーダー廃業で放棄されたポメラニアン。
推定8歳のおばあちゃん犬です。
私は、完全室内飼育と小型犬を飼うことが初めての母と、初めて家庭で暮らすにじの生活をフォローするために、トライアル開始のタイミングで実家に通うことにしました。
今まで犬と暮らしてきた経験がある母には、母なりの飼い方があります。
そこに「脱走」や「誤飲」の危険性、防止ゲートの必要性を伝えても「先代犬は平気だった」となかなか理解してくれません。
そんな母に、親子の甘えなのか、私も犬の飼育についての正論を並べるだけで、状況は悪循環に、、
「にじ」との暮らしは、日常的なお世話に加え、
散歩の途中、立ち止まり動かなくなってしまうにじにとって必要な散歩トレーニングや室内飼育とセットになるトイレトレーニングもしなくてはなりません。
そんな状況に、「1日がにじの世話だけで終わっちゃう、、」とつぶやく母。
皆さんも経験があるかと思いますが、
他人同士であればスムーズにいくのに、親と子になるだけでなかなかうまくいかないことがあります。
トライアル開始から1週間後。
母から「にじは、いつも笑ってるけれどなんで?」と聞かれました。
私は、にじが
繁殖場で子供を産まされていたこと
散歩をしたこともないだろうこと
多くの時間をケージで過ごし、人との関わりが少なかったこと
を伝えました。
そして、きっと今は毎日楽しいのかもしれないねと。
すると、母は少しの間をおき「あぁ~」とだけつぶやいた。
母なりに思うところがあったのかなかったのか、私には分かりませんでした。
それから1週間が経ち、トライアルから2週間後。
実家に行くと、そこには以前と違う雰囲気がありました。
「にじ、散歩だよ~」と大きな声を掛ける母。
母の得意技「ご飯前のスワレマテ5秒」絶好調!
夜、母に抱かれ、ゆっくりお腹を撫でられているにじの姿。
「忙しい!」「1日がにじの世話で終わる!」と言いながら、母の口調は軽やかで、なんだかとても活気がある。
母に、この1週間の様子を聞くと、
にじと散歩をしてると声を掛けられて立ち話になるだとか、ご飯作ってる時大人しく待てるにじは、夜も吠えず、なかなかいい子だと。
そして、「にじは、他に行くとこもないだろうしね」と。
言葉は素っ気ない感じだが、嬉しそうに話す母の様子を見て、
・・・もう大丈夫かな
ホッとしました。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、にじは今日も笑っている。