アニマルライツ
イヌに教え、教えられ 第32回 しつけは、家族みんなで
犬を飼うことが初めてのWさん家族は、柴犬の保護犬「藤丸」を引き取りました。
ある日、家族みんなが咬まれて困っていると連絡があり、様子をうかがいに家を訪問し、部屋に入ると藤丸は大興奮。
飛び付き、噛んだと思ったら、部屋をグルグル走り回る・・
前の飼い主は、若齢のオスらしい活発さと柴の勝気さを持つ仔に困り、何も教えてもらえないまま捨てたのだと容易に想像できました。
「走りたい」「追いたい」「噛みたい」というのは、元来犬が持つエネルギーです。
藤丸とWさん家族は、このエネルギーの適切な発散方法が分からず、家族にエネルギーが向けられているのが今の状況。
Wさん家族には、小学生の3姉妹がいます。
藤丸に悪気はなくても、このままでは咬むことが習慣化し、飼育が厳しくなる。
ここから、ご家族と藤丸のトレーニングが始まりました。
トレーニングポイントは、
元気の塊のような藤丸が持つエネルギーを生活の中で適切に発散する習慣づくりと家庭のルールを教えること
「家族の誰かひとりだけ」頑張りトレーニングを続けるのは、難しいことです。
家族みんなで役割を分担し、トレーニングしていくことが必要です。
【一緒に過ごす時間が長くいちばん接点が多いママの役割】
散歩の時間をしっかり取り、「嗅ぐ散歩」をしてもらう。
【遊び上手な長女の役割】
「引っ張りっこ遊び」や「ボール投げ遊び」を担当。
【コツコツ根気よく続けられる次女の役割】
「フセ」のコマンドトレーニング。
【まだ小さい三女の役割】
「スワレ」のコマンドトレーニングとママの散歩訓練のサポート。
【仕事が忙しいパパの役割】
お休み日の散歩を担当。
「大好きな藤丸のために」
家族みんながトレーニングへの自発性が高いことが、Wさん家族の強みです。
子供たとは、勉強・友達と遊ぶ・習い事など忙しく、気まぐれな部分があっても当然ですし、風邪などで体調を崩してしまうこともあるでしょう。そんな時でも、分担できていればカバーし合えます。
ハウスを抵抗する・子供たちへの噛み・夜泣き・散歩で強く引っ張る・・・大変な時期もありました。
トレーニングを始めてほぼ1年、毎日の散歩や家庭ルールを伝え続けてくれているママ。
長女は、藤丸と息のあった友達のように遊び、勢いよく突っ込んでくる藤丸と遊ぶことが怖かった次女はボール投げができるようになり、三女はスワレ・マテ5秒をしっかりこなしてくれます。
藤丸は、末っ子の手が掛かるやんちゃで可愛い弟のようです。
仕事で疲れていても週末の散歩は欠かさずやってくれるパパ。
パパとの散歩が大好きで、パパが玄関側に向かうだけで「散歩か!」と勘違いして喜び、飛び跳ねる藤丸。
いつしか咬まれることはほとんどなくなり、トレーニングを始めた頃、クレートやゲージを3個も壊したことが今では笑い話になっています。
藤丸は、本当の家族の一員になりました。
出張宿題レッスン卒業です。
でも、家族が藤丸をトレーニングし続けることは、ずっと続く宿題です。