イギリスとスイスの動物事情
第3回 スイスの動物事情
「SVPA(Société Vaudoise pour la Protection
des Animaux ヴォー州動物保護協会)」
「SVPA(Société Vaudoise pour la Protection
des Animaux ヴォー州動物保護協会)」
スイスでは、「SVPA(Société Vaudoise pour la Protection des Animaux – ヴォー州動物保護協会)」の動物保護施設を訪れました。
SVPAは1861年に設立され、ヴォー州での動物保護を行なっています。こちらも活動資金の全額を寄付から賄っています。
SVPAでは、ボランティアは基本的に受け入れておらず(犬の散歩ボランティアを除く)、100%スタッフ制になっています。
その理由は、こちらの施設では24時間体制で動物の受け入れを行なっており、その際に適切な処置ができる人材が必要だから、としています。
なお、スタッフとしてこちらの施設で働くためには、スイス連邦職業技能資格(Certificat Fédéral de Capacité)を持っていることが条件となるようです。
この資格は、3年間見習いとして現場で働き、その間に定期的に職業訓練学校に通い、見習い期間の最後に国家試験を受けて合格した人が受けれる資格です。この資格は動物関連のものに限らず、さまざまな専門職の資格があるようです。
このように、「SVPA(Société Vaudoise pour la Protection des Animaux – ヴォー州動物保護協会)」は、運営システムがしっかりとしており、体制が整っているという印象を受けました。設備なども隅々まで動物たちのことを考えて作られており、とても充実していました。
【充実した設備の例】
○換気システム
○溝に汚れが溜まらないように配慮された壁
○壁は字が書けるようになっており、スタッフ間で情報を共有している
○猫たちの憩いの場
こちらの動物保護施設を訪問しスタッフの方々に会い、特に印象深かった点が3つあります。
1つ目は、そこで働くスタッフとスイス連邦職業技能資格のこと。
『動物保護』という活動を行なう上で、安定した人材の確保はとても大切であり、それなくしては活動は成り立たないと思います。そして、さらにその人材レベルを高水準で保つことで、『動物保護』という決して簡単ではない活動を円滑に行なうことが可能になるのではないかと感じました。
「動物と接する」だけではなく、「人とも接する」ことを多く求められるこの活動で、資格を得るために重ねた3年間という経験値はとても大きいのではないかと思いました。
2つ目に、SVPAでは、保護された動物の新しい家族が見つかるまで一時的に預かる「一時預かり」のシステムを採用していないこと。
これは、施設に動物たちを収容するスペースが十分あることがその主な理由です。
そして、それ以外にもうひとつの理由がありました。それはSVPAが、いかに動物主体で物事を考えているかを理解できる理由です。
「一時」という概念を動物は持ち合わせてはおらず、あくまで人の都合によるものなので、それによって動物たちに余分なストレスを与えたくないという理由です。
今ある環境から別の環境に移り、また別の環境に移動させられる。動物たちにとって、その環境の移動を「一時的」な変化として捉えることはできないのです。
3つ目は、新しい飼い主を待つ動物たちの写真を一切ホームページに掲載しないことです。
それは、年間に約4,000もの動物を受け入れている中、施設に滞在する時間が短い仔だと数時間ということもあり、写真を掲載するための時間や手間が余計にかかるということがその理由です。
さらに、動物を見た目で判断して欲しくないという想いや、写真映えしない仔も写真映えする仔と同じくらいたくさんの良さを持っているのに写真というフィルターだけで損をしてしまうこと、またインターネットだけを見て早計な判断を下すのではなく、実際に動物に会いに来てじっくりと考えて欲しいという願い、そして動物を迎える側が一方的に動物を選ぶのではなく、協会側もその人を見極める権利を有しているから、など様々な想いが込められていました。
次回は、イギリスとスイスの動物事情 「人々の考え方」をご紹介いたします。
Copyright © GORON by ペット共生アドバンスネット All rights reserved.