アニマルライツ

イギリスとスイスの動物事情 第2回 イギリスの動物福祉「Southridge Animal Centre(サウスリッジ アニマル センター)」実務体験

イギリスとスイスの動物事情

第2回 イギリスの動物福祉
「Southridge Animal Centre
(サウスリッジ アニマル センター)」実務体験


イギリスで私が訪れたのは「RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)」が運営するセンター「Southridge Animal Centre(サウスリッジ アニマル センター)」でした。
そこで施設内の見学・運営方法・日々の業務などを教えていただきながら、実務体験をしてきました。

「RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)」「Southridge Animal Centre(サウスリッジ アニマル センター)」 とは

「RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)」は、1824年に設立した世界最大そして最古とされている動物福祉団体です。
その事業は、全て寄付金や物品販売などで得た資金で賄われているにも関わらず、日本の動物福祉団体とは比べものにならない大きさの規模で、設備やスタッフの数もとても充実していました。
そして「Southridge Animal Centre(サウスリッジ アニマル センター)」(以後、「センター」と称す)では、常時約250前後もの動物を保護しているそうです。
その種類は、犬や猫だけに限らず、馬・うさぎ・豚・ハムスター・ネズミ・デグー・チンチラ・鳥など様々な動物がいます。
2013年には、犬:313匹/猫:530匹/うさぎ:53羽/馬:1頭/他小動物などを含め:249個体もの動物たちが、新しい飼い主さんのもとに引き取られたそうです。

約18名のフルタイムスタッフがシフトを組み、動物の世話や清掃、訪問者の対応、敷地内の芝刈りや整地などのメンテナンス、ボランティアスタッフの取りまとめなどの業務を毎日こなしています。1日の必要スタッフ数は約11名、必要経費は30万円以上とのことでした。

こちらのセンターは、ほぼ毎日一般に公開されており、誰でも気軽に訪れることができます。
センターを訪れる人々の目的は、
○寄付のため
○動物を譲り受けたい
○自分自身が飼っている動物や知り合い・近所が飼っている動物に関する相談や通報
○さまざまな事情で自宅で動物が飼えないため、センターの動物と触れ合いにきた

など、さまざまです。
 
施設は、誰にでもオープンなため開放感があります。しかし、その分事故などが起こらないようにするために運営側が行う管理は、とても大変だと思いました。

センターにいる譲渡対象の動物は、それぞれに「インフォメーションシート」と呼ばれる、その動物について詳細が書かれた紙が貼り出されています。
例えば、犬の場合
○名前 ○年齢 ○毛色 ○犬種 ○性別
その他に、飼育上の必須要件として
○庭の設備(何フィートの高さのフェンスが必要など)
○留守番できる時間 ○先住犬・猫との相性
○子供との相性 ○運動量
○乗り物(車など)乗車時の状態
○新たに飼い主となる人に飼育経験が必要かどうか

などが記載されています。
 
引き取りを希望する人は、受付スタッフにその旨を伝え、申込書を記入します。
その申込書の内容を踏まえて、スタッフが譲渡対象の犬と引き取りを希望する人のマッチングが適切かどうかを判断します。申込書上で要件を全てをクリアすると次のステップとして、譲渡対象動物と家族の面会を行います。
この時、先住動物を含む(先住犬や猫がいる場合)全ての家族と面会することが条件となっています。
引き取ることが決まると、その譲渡対象動物は「予約」とされます。
必要があるとされた場合、引き取り希望者の自宅への家庭訪問が行なわれます。
この家庭訪問では、家や環境が飼育に適しているかどうか判断するだけでなく、希望者からの質問や相談を受け付ける場ともなっています。
このように、事前に双方の意思を確認する機会を多数設けることで、引き取った後のトラブルなどを未然に防いでいます。
 
全てのステップが無事終了すると、センター側から引き取り希望者へ連絡をし「rehome」=新しい家族の元へ帰る手続きが行われます。
そして新しい家族との生活が始めた1ヶ月後、センターのスタッフによる家庭訪問が行なわれ、その動物が新しい環境になじんでいるか見定められます。
 
これらのプロセスの中で、引き取りを希望する動物がその家族にとって必ずしもベストなマッチングではない可能性があることや、場合によってはスタッフが譲渡を拒否することがあるということが、センターの冊子や、センター内の張り紙など、あらゆるところに記載されています。
それらの判断を適切に下すために、その動物がこのセンターに運び込まれたその日から、その動物がどういう気質を持っていて、どんな反応を示すのかなどのアセスメントを入念に行い、その情報を常時スタッフ間で共有を図っていました。

日常のお世話 – 犬舎班

「Southridge Animal Centre(サウスリッジ アニマル センター)」では、担当エリアを振り分けており、スタッフはその日の自分の担当エリアを確認してから仕事を始めます。
スタッフは、動物関連のバックグラウンドを持つ人や持たない人、様々な方がいます。
犬や猫など世話をする上での必要な基本的知識はスタッフ全員が持っていますが、馬や豚など専門的な知識が必要な動物の世話は資格を持っている専門スタッフが行なう決まりになっています。
 
今回私が参加させてもらった犬舎班は、センターの中で収容頭数が1番多いので、スタッフの数も約5〜6名と最も多く振り分けられています。
(1日のスタッフ総数は、約11名です)
犬舎班内での仕事内容の振り分けは、
○常勤・非常勤のスタッフが、犬舎の掃除・犬の食事や健康管理・来客対応など
○ボランティアの方が、犬の散歩や犬舎内で使われている毛布の洗濯など
と、されていました。

犬たちの健康状態・投薬情報や注意事項は、犬舎ごとのファイルに記載されており、担当者はそれらを確認した後、朝食の準備に取りかかります。
調子があまり良くない犬については、前日の担当者に様子を聞くなどして、食事内容の細かなところまで気配りされていました。
こちらのセンターの犬舎では、基本的に1部屋1頭づつ収容しており、その部屋は床暖房が整備されている室内部分と屋外部分を犬たちが自由に行き来できるつくりになっています。
各部屋には室内部分と屋外部分の間に「ハッチ(hatch)」と呼ばれる出入り口があり、犬舎の外からそこの扉を開けたり閉めたりできるようになっています。
 
犬舎の掃除は、犬たちが室内部分で朝食を食べている間にハッチを閉めて、屋外部分から始めます。
屋外部分の掃除が済んだらハッチを開けて犬たちを外に出します。その後ハッチを閉じて、今度は室内部分の掃除です。室内部分の掃除は、朝食のボウルを回収し、床を洗い、毛布を取り替えて、お水を満タンにし、支援物資としてもらったおもちゃなどを置いて、完了です。
掃除完了後、ハッチを開けると犬たちはまっしぐらに入ってきて、フカフカの毛布で巣作りを始めたり、おもちゃを確認したり、、、それぞれのこだわりが垣間見れて、とても可愛らしかったです。

そして日中には、ボランティアさんたちがセンター内の広大な敷地に犬たちを散歩に連れ出します。また、犬舎の横に運動用スペースが設けられているので、犬たちを1頭づつローテーションでそこに連れて行き、犬たちを自由に運動させます。運動用スペースでは、走り回ったり、ボールで遊んだり、日向ぼっこをしたり、、、犬たちはそれぞれ思い思いのことをして過ごしています。
犬たちは、それぞれの健康状態などをもとに1日の運動量が大まかに決められています。1日に何回散歩が必要か?何時ごろ散歩へ行ったか?運動スペースにどれ位の時間行ったか?など、表に細かく記入していき、スタッフと散歩ボランティアの間で情報を共有していきます。
 
これ以外にも日中の仕事として、洗濯や交換する毛布の用意・夜ごはんの準備・敷地内の排泄物の処理などがあり、スタッフやボランティアさんは、お昼の休憩時間以外は常に動き回っています。また、週に1回、獣医の訪問診察があり、診察が必要な動物は担当スタッフが診察室まで連れて行きます。
そして夕方になると、犬たちに夜ごはんをあげ、汚れている毛布は取り替え、ベッドメイキングをして、お水を満タンにし、犬たちを犬舎の中に入れ、ハッチを閉めて、就寝の準備を始めます。
スタッフが、最終チェックを行なう間、犬たちはおもちゃで遊んだり、毛布で巣作りをしたり、スタッフから最後のおやつをもらおうと柵の一番前でお行儀良くおすわりしたり、、、思い思いの時間を過ごしていました。
 

次回は、「スイスの動物事情『SVPA(Société Vaudoise pour la Protection des Animaux ヴォー州動物保護協会)』」をご紹介いたします。

 

2015年2月13日掲載

 

イギリスとスイスの動物事情 第1回 イギリス・スイス、そして日本の犬文化

イギリスとスイスの動物事情 第3回 スイスの動物事情「SVPA(Société Vaudoise pour la Protection des Animaux ヴォー州動物保護協会)」

栗山典子

栗山典子

投稿者の記事一覧

(くりやま のりこ)

CPDT-KA

幼少期をスイス・ジュネーブで過ごし、帰国後、日本の保護団体にて保護犬のリトレーニングなどを学ぶ。
トレーナー育成アカデミーを卒業し、現在は保護団体でのボランティア活動を引き続き行いつつ、動物病院に勤務している。
 
犬のこと トレーニングのこと 日々のこと。栗山典子さんのブログ
 「あびりんぶー」http://ameblo.jp/abirinbu/

関連記事

  1. 絵本 『さいごのぞう』 作者 井上奈奈さんインタビュー
  2. 保護犬を迎えた家族のお話
  3. アメリカの動物事情 第10回 アメリカでの動物ボランティア・アメ…
  4. アメリカの動物事情 第6回 刑務所や少年院でのドッグトレーニング…
  5. アメリカのシェルターにおけるコロナ対策「これからに備え、緊急事態…
  6. 犬と共に踏み出す一歩「KIDOGS」 第5回 ドッグトレーナーと…
  7. 鳥猟犬をたすけるために 第6回 ルールの認識不足が事故を生む
  8. 2019年動物愛護法改正、変更ポイントは4つ

今月の人気ランキング

PAGE TOP