みんなの夢、猫の未来
第4回 「みんなでやっているからこそできる」
竹ノ塚里親の会
前回は会で猫を保護して里親に出すまでの取り組みについてお話をうかがいました。
ではそもそもどうしてこのような活動を行うようになったのか。今回はお二人に会の発足経緯から今現在までについてお話していただきます。
最初は一人だった―活動のきっかけ― |
同じ活動をすでに始めていた草加里親の会さんにお世話になったこともあり、もともと動物を保護することが多くありました。それなら自分の住む地域でも同じ活動をしてみようと思いました。
実際に自分の住む地域で始めてみると、動物の保護だけでなく、相談を受けることも増えはじめ、個人でやっていくのに限界を感じました。そこで最初は、名前だけでもいいからと仲間を5人集めました。今日同席してもらっている堀川さんは、最初は猫のことで相談を寄せてくださいました。それがきっかけとなり、仲間に加わってもらいました。堀川さんが活動に加わったのは、竹ノ塚里親の会ができて1年目の頃です。
メンバーそれぞれが本当に頑張って駆け回っています。各自が自分のできることをやり、本来の保護活動の他にも経理や手術確認の書類管理、相談電話の応対など、さまざまな事務作業があって大変なことも多くあります。
里親に出す猫の数も、年々増えています。日々の啓蒙活動も功を奏し、活動が知られるようになるにつれ、協力者も増え、各自で問題解決できる人々も増えてきました。それでも保護する猫の数は増え続け、活動地域も西新井や北千住にもおよび、可能な限りおもむくようにしています。引っ越しや事情があり猫を飼い続けられなくなった人からの問い合わせもあり、特に公団住宅や団地でそうした話が出ることが多いです。
-猫たちがのびのび暮らせるように-
千代田区では、殺処分になった猫は一ケタだったそうですが、足立区では未だに三ケタです。地域によりこれだけ差が生じてしまうことがもどかしい。地区的な経済状況の詳細はわからないのですが、他の地区でできて足立区でできないということはないでしょう。看板などしっかりしたものができれば、こうした問題も解決されると思います。
複数の住民たちの協力によって世話され、管理される「地域猫」という飼い方を、足立区でも実践したい。問題が起こった町会の会員の方に検討してもらっています。コンクリートの多い都市部では猫が生活できる環境が少なくなっているので、猫のトイレになる場所を作るなど、さまざまなことにチャレンジしていきたい。こうした活動は防犯の効果も得られると思います。虐待する人がいると、猫は敏感に気がつきます。そうした変化に地域の人々が気づけるよう、ときには監視も必要です。
優しい人に対しても、猫は同じく敏感です。「谷中の猫はおだやか」という言葉があるのですが、人間が猫たちに「安心だよ」と言ってあげられるように、猫たちがのびのび暮らせるようにしたいと考えています。
-猫が好きなら責任を持ってほしい-
私たちのところに相談に訪れる人には、まずシートに記入してもらっています。このシートには、猫を出す方への条件が記載されています。「活動日に連れてくることができ、引き取りに来れる方」、「猫を懐かせていること」、「健康診断をしていること」、「必ず里親さんが見つかるまで保護できる方」などです。ワクチンの接種、避妊・去勢が済んでいるか。なぜ、猫を里親会に出さなければならないのか。このような理由にきちんと答えてくださった方のみ、猫を里親会に出すことができます。
単に飼いきれなくなった猫を、誰かに任せてしまいたいという考えで、猫を連れてくる方もいます。そこには、こちらの良心を利用するずるさが見えます。本当に猫が好きなら、飼えなくなったとしても、猫が安心して暮らせる場所が見つかるまで責任を持つべきです。
-活動の場を広げていく-
もっと人が集まるところで里親会ができないかと考えています。大型デパートなどにも、おもむいてみたい。竹ノ塚だけでなく、人が集まる場所を検討しています。基本的には猫を里親宅までお届けすることにしており、静岡まで届けたこともあります。竹ノ塚以外の人がこの活動を知ってくれる機会にもなりますし、インターネットで見てきてくれる人もいますので、開催場所の開拓は課題の一つです。イベント会場やショッピングセンターでもできないかと考えています。
預けた先のお宅がゴミ屋敷のような家で、猫の幸せを考えて取り戻したことがあります。取り返すよりは、最初から預けないほうが猫の精神的な負担にもなりません。ですから、すぐに誓約書を書いてもらわずに、双方に遺恨が残らずに猫を取り戻せるように配慮しています。
この活動をしていると、相手の気持ちを傷つけないように断らないといけません。対人的に何かと気を使わなければならない活動です。その場ですぐ決めてもらわずに、時間をかけてじっくり話をするようにしています。「飼えばエサ代もかかりますし、手術や病院などでお金もかかりますよ」などと啓発することもあります。
みんなでやっているからこそできる |
猫を拾うときは、心が痛み、辛いなと思います。「好きなのよね」と言われたりするのですが、それは違います。猫を拾うのも、保護するのも仕方なくやっていることです。しかし、猫を届けたご家庭で、猫が幸せに過ごしているのをみると、瀕死の状態から救い出したのを思い出しながら、「あの時保護してよかったな」と思います。この活動をしていて本当によかったと思う瞬間です。
1匹の猫の避妊・去勢の手術でも、みんながやれば不幸な猫の誕生を減らすことができます。このような活動は、みんなでやっているからこそ助けることができます。最初は個人でやっていたから孤独でした。今は仲間が増えて、心強く思います。
次回は本連載のしめくくりとして、お二人にペットをめぐる社会的な課題と、今後のご活動についてお話しをうかがいたいと思います。
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