第3回 「ペットに関する法令」編
ペット先進国・ドイツからのレポート。今回は、ドイツの犬に関するさまざまな法令についてお伝えします。
犬に大切にする法令のあれこれ
法治国家の原点でもあるドイツ。動物たちの権利もしっかりと法によって守られています。たとえば、こんな法律。
「仔犬を生後8週齢以下において母犬から引き離してはならない。ただし、獣医学的な判断による場合を例外とする」
さらにこの法律では犬を飼う場合の飼育条件を細かく制定してあります。
たとえば、犬を屋内で飼育する場合、昼夜の生活リズムを確保するために、採光窓の大きさや新鮮な空気を確保すること。屋外であれば、犬舎(檻)は一辺が2m以上であることや、犬舎内の安全が確保されていること。生後12ヶ月以内の犬や妊娠後期及び授乳中の母犬、病気の犬などは鎖につないで戸外で飼育してはいけないこと。車に乗せる場合、車中における新鮮な空気と適切な温度を確保すること。
さらに、断耳・断尾された犬の展示(ドッグショーへの参加及び開催)の禁止。ドイツ人でない人たちが連れている犬の中にはもちろん段耳や段尾されている犬もいます。生活の中で、そういった犬がドイツ人から非難されるようなことは決してありません。ただ、ドイツで開催されるドッグショーへの参加は不可能となっています。
ほかにも、一般的な犬の飼育方法として「一日に数回飼育管理者により犬の共同生活者としての必然的な欲求を満たすために長時間犬を外部環境に導く可能性を与えることが保障されなければならない」。つまり一日数回(または長時間にわたり)外に散歩に行くことも、法によってきちんと定められているのです。
もちろん飼育者だけでなく、ブリーダーに対しても法が整備されています。
「繁殖犬10頭とその仔犬に対し一人の飼育管理者を配置することを条件とし、飼育管理者は繁殖における知識と能力を管轄の役所に証明した者であること」。
こうした様々な法によって、ドイツのわんちゃんたちは安心して暮らしていけるのですね。
危険な犬の飼育が規制されている-「獰猛犬および危険な犬の条例」-
『獰猛及び危険な犬の条例』というのがあります。公共の場で人や他の動物に危害を与える恐れのある犬種について、飼育に関する条件をかけ、思わぬ事故を防ごうというもの。これは、ドイツの州の警察管轄によってまちまちです。例えば、バイエルン州では、あてはまる犬種を2つのグループに分けて挙げられています(2002年)。
グループ1は、格闘犬としての素質が備わっている、すなわち、格闘犬とみなされる犬種(交雑種も含む)5種。これらの犬を飼うためには、管轄の市当局の許可書が必須です。幾種類ものの証明書を提出した上で、口輪の常時着装などの条件つきでやっと飼うことができます。それに伴い高額な犬税も課せられます。
ピット・ブル/バンドッグ/アメリカン・スタッフォードシャー・テリア/スタッフォードシャー・ブル・テリア/土佐犬
グループ2は、格闘犬としての素質が備わっているが、管轄の市当局の鑑定人によって格闘犬の素質がないと証明される『否定証明書』か、又は、専門の獣医による素質テストに合格することによって格闘犬とみなされない犬種14種。
アメリカン・ブルドッグ/アラーノ/ブルマスティフ/ブルテリア/カネ・コルソ/アルヘンティーノ/フレンチ・マスティフ/マスティフ/スパニッシュ・マスティフ/ナポリタン・マスティフ/ドゴ・カナリオ/ペロ・デ・プレサ・マヨルキン/ロットワイラー
実際、上記の犬種にも含まれているマスチフ系やブルドッグ(闘犬として使われた歴史のある犬種)などは、あまり見かけたことがありません。ドイツ原産であるのにあまり見かけないというシェパードはこういった条例が理由で飼う人が少ないということなのかもしれませんね。
法整備の面でも日本とは比較にならないほど行き届いているドイツ。もちろんその精神は、動物の保護活動の場面にも見られることができます。
次回は、ペットを保護する施設『ティアハイム』について、それから日本とはだいぶ様子の異なるペットショップやペットホテルについてお伝えします。