しつけ・ケア

ドイツのペット事情 第4回.ペットの保護活動(ティアハイム)、ペット産業

ドイツのペット事情

第4回「ペットの保護活動(ティアハイム)、ペット産業」

岡村理英(AKC認定トリマー)


路面電車(トラム)Photo by Kira

 これまでお伝えしてきましたように、日本とドイツではペットについて違う面がたくさんあります。その一つがペットショップ。

 日本では、ペットショップといえば、元気いっぱいのかわいい子犬や子猫たちがいて、新しい飼い主さんを待っている…そんな光景が当たり前ですよね。しかし、ドイツのペットショップは、ショーケースに入った犬を販売するお店ではありません。

 ドイツでいうペットショップに売られているのはペットフードやゲージ、ベッド、玩具、グルーミング用品など。こういったお店ではもちろんペットホテルのような業務も一切していません。

 では、犬を飼いたい場合はどうするのかというと、ブリーダーもしくはティアハイムという保護施設より譲渡してもらうのです。

ドイツには殺処分は存在しない-ティアハイムの役割-

デュッセルドルフ市内のライン川沿い
photo by Naoko.H

 ドイツにはいくつものティアハイム(Tierheim="動物の家"の意)というペットの保護施設があります。私の住むデュッセルドルフにももちろんありますが、ドイツ最大のものはベルリンにある施設です。
 ご存知の方も多いと思いますが、ドイツには動物の殺処分はありません。何らかの事情で飼い主とお別れすることになった動物は、ティアハイムに保護され、新しい飼い主との出会いを待つことになります。最終的に新しい飼い主さんのもとへ行けない子達でも、この施設で最後まで生活することができるのです。
 このティアハイムは主に、会員になっている人の納める年会費や募金といった寄付金で運営されています。

心を豊かにし、社会復帰につなげる- 路上生活者と犬の関係 –

 ドイツではホームレスのほとんどの人たちが犬を飼っています。犬を飼っているホームレスには国から補助金がだされているのです。中にはそういったお金を目的に犬を飼う人もいるようですが、「一頭でも多くの犬を救うこと。そして動物を育て共に生活していくことで、心を豊かにし、社会復帰へとつなげて欲しい」というのが国の目的のようです。こんなことからも、ドイツに暮らす犬たちが、社会の一員として立派に認められているということが伺えますね。
街の大型スーパーなどにはペットフードの寄付箱が設置されています。寄付金ならぬ寄付フードです。集まったフードはティアハイムや路上生活者の飼う犬たちへ寄付されます。

長期休暇のライフスタイルと充実したペットホテル

 ペットショップでは犬や猫を預からない、ということは述べました。では、犬や猫を預けたい場合はどうするのかというと、ペットホテル専門の施設、トリミングと併設しているホテル、個人で自宅で面倒を観てくれる人、という選択肢があります。夏季休暇やクリスマス休暇など、とにかく長い休暇をとるヨーロッパはもちろんドイツ人も例外ではありません。犬を一緒に連れて行く人もいれば、預けていく人もいます。ですから、ドイツではペットを預ける施設がとても充実しています。

 日本のようにトリミングサロンがホテル業もやっているというところはあまりありません。ホテルはホテル専門でやっているところがほとんどです。形態や金額も幅広くあり、個人でやっていて自宅で預かってくれるタイプ、郊外の庭付き一軒家で預かり専門でやっているところ、ホテル専門の建物があってそこで働く人が面倒を見てくれるところなどがあります。

 金額も一泊13ユーロ~80ユーロと大きく差があります。

 一昨年の12月、世界初の高級ドッグホテルといううたい文句でミュンヘン北部に犬専用のホテル「カニス・リゾート」(※1)がオープンしました。暖房つきの犬舎9棟に最大45匹の受け入れが可能だそうです。
20人のドッグシッターが毎日24時間体制でグルーミングやヘルスケア、送迎までのフルサービスを提供。料金は1日の時間預かりが65ユーロ。宿泊が80ユーロだそうです。空港への送迎サービスも行っているということです。
 ちなみにそのミュンヘンの高級ドッグホテルのホームページです。


年2回のドルトムントのドッグショー -ペット産業・イベント-

 ドイツのペットグッズは日本のように充実していません。というより、日本で販売されるような商品を必要としていないようです。例えば玩具。猫用も犬用もドイツで取り扱いのあるものほとんどは日本で見たことのあるものばかりです。
 フードも同じで、ペットショップで手に入るものは日本で販売されているものとほとんどかわりませんし、ドイツの方が種類が少ないくらいです。
 ドイツ特有のものと言えば「Hunde Bier(犬のビール)」。ビール大好きのドイツ人らしい商品ですね。もちろん犬用なのでノンアルコールでビーフ味だと書かれています。
 犬に関するイベントは年間で数多く行われていますが、猫のイベントはあまり聞いたことがありません。イベント告知のポスターでさえも見かけることはありません。
毎年5月と9月にドルトムントという街で室内ドッグショーが行われます。かなり大きなショーなので、ドイツ国内から沢山の犬が集まります。会場にはワンちゃんはEUの犬用パスポートを持参していないと入ることができません。
 一般の飼い主さんも参加できるイベントは年間数多く開催されています。

筆者と犬たち

参考リンク
http://www.canisresort.com CANIS RESORT ホテル
http://www.hunde-bar.de/272/schwanzwedler-hunde-bier-2/ 犬のビール

ドイツのペット事情
第3回 ペットに関する条例

岡村理英

岡村理英

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(おかむら りえ)

AKC認定トリマー

短期大学卒業後、青山ケンネルカレッジ美容科を経て、ドッグショーの勉強を兼ねオーストラリアのグルーミングサロンに勤務。その後、東京のペットショップに店長として勤務。現在、ドイツにて出張トリミングなどのサービスを活動中。
掲載 『はじめてのペットサロン&ショップオープンBOOK』(技術評論社)、東都読売新聞など。

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