しつけ・ケア
猫のしつけとケア 第1回.猫のしつけ
猫は周りとの関係性を気にしない自由気ままな性分で、服従心がないため、しつけが非常に難しい動物です。でもしつけもコミュニケーションの一つ。ただやみくもに怒っても効き目がありませんし、猫との関係が悪くなってしまうこともあります。猫の習性や行動を理解したうえで、それらを上手に利用したしつけが必要になります。そこで、ここではしつけのカギとなるポイントをいくつかご紹介します。
現場・現場で「感情」を押さえる
猫を正しい行動に導くためには、行動に感情を伴わせた経験をさせることが必要です。感情を伴った記憶は強く残ります。そこで良い行動を行なったときには快な感情になるように、悪い行動を行なったときには不快な感情になるようにさせてあげるのです。こうすることで、猫は自然と快な感情になる行動を選択するようになります。人間も悪い気分になることをあえてやろうとは思いませんよね?こうした動物共通の行動心理を利用した方法です。
たとえば、のぼってはいけない場所にのぼった瞬間に、顔に霧吹きなどで水をかけ、不快な感情をつくります。一方で、叱ったあとは、のぼってもよい場所を教えて欲求を発散させることで、快な感情をつくってあげるとよいでしょう。叱る際に、時間がたってから叱ったり、時間をかけてガミガミ叱ったり、また、たたいてしまったりしては逆効果です。猫の記憶力は決して長くはありませんから、自分の行なった悪い行動を忘れてしまい、叱られたことだけが不快な感情として残ってしまいます。飼い主自身に対して不快な印象をもち、近づいてくれなくなります。留守中の猫の行動を飼い主が帰ってから叱るのも効果はありませんのでご用心を。
名前は呼ばずに「ダメ」を使って
猫を叱るときにまず名前を呼んで、猫の行動を止めさせる飼い主も多いはず。しかし、上の例からも分かるように感情を伴った記憶の力は強いもの。名前と叱られるときの不快な感情がセットになってしまうと、名前に対する印象も悪くなってしまいますので、名前を呼んでも来てくれなくなる猫もいます。ですから、何か言葉をかけて叱るときは「ダメ」などの短い否定語を使うようにしましょう。
一貫した態度で接する
ごはんをせがまれたり、外出したいとせがまれたり、何度も猫に鳴かれるとつい許してしまいそうですが、これも要注意です。「今日は特別」といって食べ物を与えたり、外に連れ出したりすると、それを覚えてしまい、その次も猫は同じことを要求するようになります。外出を許せば、事故などの危険もいっぱい。食事などをいったん特別に許したりすると、騒ぎ方がエスカレートしていくこともあるかもしれません。どんなにせがまれても無視することが大切です。飼い主からの反応がなければ、そのうち猫もあきらめます。また、家族によって異なる対応をするのも禁物。常に一貫した態度で猫と接するようにしましょう。
参考文献
『かわいい猫との暮らし方、しつけ方』小島正記監修、成美堂出版
『うちの猫のキモチがわかる本』学研
『ネコの“本当の気持ち”がわかる本』今泉忠明監修、ナツメ社