飼い主が「部屋を歩く」「身体を触る」「抱っこをする」とき、強く咬むチワワのレニー。
首輪やリードをつけられず、散歩をすることもできない。
家族はレニーの様子をうかがいながら、互いにストレスをためながら暮らしていました。
そんなレニーと家族と噛まれずに世話ができることを目的に、5年前トレーニングを始めました。
「咬む」行動を矯正するトレーニングは、とても難しく内容です。
「噛まないようにレニーを躾ける」のではなく、「レニーと折り合いをつけ、家族が噛まれずに世話ができるようになる」ことを選択し、そのための方法を考えました。
首輪やリードの付け外し・適切な遊び方・散歩練習・トリミングや医療を受けるための口輪練習など、当時の自分がもつ全てを使いレッスンをしました。
レッスンを通し、徐々にできることが増えていきました。
気を抜くと噛まれることもありましたが、リードを付け外しできるようになり、散歩ができるようになり、家族が部屋を普通に歩けるようになり、世話できるようになってきたことで、レニーのQOLも上がりました。
でも、普通に撫でて可愛がることはできないままレッスンが終了。
レッスン終了した後も、私は、ときどきフォローレッスンをしたり、家族が旅行の時にレニーを預かったり、レニーと家族と関わり続けていました。
レニーは、家族の足元で寝転び寛ぐことが好きな犬です。
人と関わりを持つことが嫌いというわけではないはず。
今の自分ならば、5年前と違うアプローチもできたのではないか・・・
ずっと心に引っ掛かっていました。
そんな思いをもちながら過ごしていた今年の夏、レニーに変化が。
レニーを預かり世話をしている時のことです。
表情が柔らぎ身体が弛緩たレニーが、ゆっくりと背中を寄せてきたのです。
今までと違うレニーの態度を観て、「撫でられるかも・・・」と感じました。
まぁ、咬まれてもそこまで痛くないしいいかと、トレーナーとしてはいけない考えなのですが、、、そのままゆっくり腰回りを撫でてみると、、
・・触らせてくれる。
怒らない、むしろ少し重心を私に預けてくるレニー。
撫で続けても、表情は柔らかいまま。
年齢を重ねて丸くなったのか、トレーニングの成果なのか、わかりません。
それでも、今こうして撫でられ身体をゆだねるレニーがここにいる。
それからも預かっている間、何度か撫でてコミュニケーションを取ってみたところ、一度も噛むことがなかったレニー。
帰宅した飼い主さんのもとにレニーをとどけた時、今までと同じようにレニーを撫でてみると、当然飼い主さんはとても驚かれました。
縄張り意識がある自分の家だと怒るかとも思いましたが、大丈夫。
レニーの様子や態度は、預かっている間、私の家で撫でていた時と同じでした。
その様子を見て、飼い主さんもレニーを撫でてみることに。
撫でてみる、、、
レニーは、怒らずゆらゆらと尻尾を揺らすだけ。
自然と「あー」とか「お~」と声が出てしまう飼い主さん。
そしてレニーは、柔らかい表情のまま、飼い主さんに撫でられ続けていました。
こんなに力の抜けたレニーの笑顔は初めてかもしれない。
これが、これからもずっと続くかは、分からないかもしれない。
今この時、レニーの気まぐれなのかもしれない。
それでも、トレーナーとして、こんなに嬉しい事はありません。