子犬時に保護し、今から1年前に譲渡した「しらす」
先日、その家族からお便りが届きました。
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早朝の散歩に限り、家の周りの細い道はシッポをピンと立てて、真ん中を歩けるようになりました。
この時は、かなりのドヤ顔「僕だって出来るもん」てな感じです(笑)。
子供が苦手?なのは相変わらずですが(笑)
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活発で遊び好きな一面とシャイで怖がりな一面を併せ持っていたしらす。
保護した時、いい子に育てると意気込んだ私は社会化(※1)を積極的に行いました。
慣れない人が苦手だったしらすには、対人の社会化が大事だと考え、大人にも子供にもあいさつする機会を設けるようにしていました。
その時は、人としらすの間に私が入り、相手の人にシャイな犬との挨拶の仕方を伝え、しらすにとって他人との関わりが緊張や不安ではなく、安心や興味に繋がるよう気を配ってやりました。
最初の頃は、順調に進んでいた「慣れていく」こと。
そのまま少しづつ、しらすの個性に合わせたペースで進めていればよかった社会化トレーニング。
ある時こんなことが・・
よく声を掛けてくれる小学4年の男の子仲良しグループ。
その日も彼らと挨拶をしていました。
「待ちの姿勢で先に嗅がせて」
「しゃがんで下から」
「ゆっくりと」
「おやつを使いながら」
この子達とは何度かやっているので、しらすも調子が良く「えへへ」と笑っている。
もう少しこのままで・・・と続けていた時、一人の男の子が「あっちで○○遊びしようぜ!」と勢いよく立ち上がり、急に走り出しました。
それにつられて他の男の子もバッと立ち上がり走り出す。
そして、しらすは驚き、その場から逃げようとしました。
私は、慌てずにリードを持ち、しらすが落ち着くのを待ちました。
10歳前後の男の子は好奇心いっぱい、気持ちが他のことにパッと切り替わり、急に動き出すのは普通のこと。
もう少し慎重に、私がその可能性を考えていれば、引き際を選べたはずでした。
「しらすに、いい経験をさせよう」と欲張ってしまったことが、原因です。
シャイなタイプの犬は、いい経験以上に怖かった経験の方が印象強く残ります。
シャイな犬に社会化トレーニングをする時は、慎重さが必要なのです。
以降、同じ男の子達と会うと尻尾は内側に入り、反対方向に離れようとするようになったしらす。
それからは、無理はせず、しらすが怖がらない程度に社会化は続けました。
足し算ばかりがいいわけではない。
その犬の適性やキャパシティをよく観察して、頑張らないことも大事。
「いい経験をさせることだけが社会化ではなく、嫌な経験をさせないことも社会化」
このことを改めて痛感しました。
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甘えた顔やふてくれされた顔など、表情も豊かになって来たように思います。
しらすは、家の者以外に可愛さが伝わりにくいワンコですが、夫婦ふたりの生活には欠かせない存在です(笑)
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こんな風に、しらすのシャイで怖がりな個性を理解し、受け入れてくれた上で、共に暮らしたいという家族に恵まれたしらすは幸せ者だなと、お便りを読んで思いました。
しらすとの社会化トレーニングの反省は、またシャイな子犬を保護することがあれば、私が活かすことでしらすに返していこう。
※1 社会化:
生後30日~90日前後(個体差あり)の物事に慣れやすく、受け入れやすい時期において、人と共に暮らす上で経験するであろう社会的刺激(車、バイク、人、動物、子供など)を怖がらず、過度に興奮しないように慣らしていくことを社会化という。
犬と生活する上でコマンドトレーニングより大事と考えられる。