オモチャを追いかける、引っ張り合うことは犬にとって楽しい時間であり、「動く獲物を追う、捕まえる、振り回す」という犬が本来持っている行動欲求(狩猟本能)を満たす遊びであり、あり余ったエネルギーを発散させ、飼い主との絆をより強くする大切な時間です。ただし、楽しい中にもルールを教えてあげないと遊び上手にはなれず、要求的な行動が出たり、オモチャを取り上げようとすると「渡さない!」とオモチャを守るようになったり、オモチャ遊びをすると興奮しすぎて飼い主さんがコントロールできなくなったりすることもあります。オモチャ遊びには「楽しさとルール」の両方を教えて、犬との生活がより快適になるようにしましょう。
用意するオモチャ
紐やコットンを骨型に編みこんだオモチャ。長いロープ状に編みこんだエナジーロープ。紐付きのボール。キューキュー鳴るぬいぐるみタイプのオモチャなど愛犬の好みと噛む力の強さを考え、簡単には壊れないオモチャを選びましょう。
※オモチャに1m前後の紐を結び付けると手で持つ側と愛犬が噛み付く側の距離が離れ、遊んでいるとき、間違って手に歯が当たることを防ぎます。遊びのときに愛犬が興奮しすぎてちょっと怖いと感じる方にも犬の歯と持ち手の距離が離れることで怖さが軽減されるのでお勧めです。
- 愛犬の好みのオモチャを取り出し、地面をはうように右に左に動かしたり、愛犬の目の前に出した後、背中の後ろに隠してみたり、オモチャをくねらせたり、細かく左右に震わせたりして興味を持たせましょう。オモチャをあげてしまうのではなく、逆に逃げることで犬に「追いたい、捕まえたい」と思わせることがコツです。
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オモチャを右に左に動かし、追わせるなかでくわえさせます。
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くわえさせたまま大きくゆっくりと8の字を書くようにオモチャを動かしたり、グーッと自分の方に引っ張っておいてパッと緩めたり、細かく速く8の字を書くように動かして愛犬の「捕まえたい、振り回したい」本能を刺激しましょう。
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オモチャを口から離すことを教えます。○引っ張ると緩める○大きくゆっくり8の字○細かく速く8の字をランダムに織り交ぜて遊んだあと、オモチャを持った手の動きをピタリと止めます。
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噛んでいる側の根元近くに手を持ち替え、愛犬に引っ張られてもオモチャが動かないようにしっかりと固定します。愛犬と飼い主さんの単純な力関係(愛犬の体の大きさや引っ張る力の強さ、または人間側が女性)からどうしてもオモチャが動いてしまう場合などは膝を立て、膝の上にオモチャを置いて動かないようにすると固定しやすいでしょう。
- 「動きのある獲物」を捕まえたい振り回したい欲求のある犬にとってオモチャの動きがピタリと止まり動かなくなることは「獲物が動かなくなった(死んだ)」ことを意味します。動かなくなったオモチャ(獲物)に、愛犬は段々とつまらなくなり噛んでいる力が弱まってオモチャを離します。そのときに「ちょうだい、アウト」などの言葉をかけましょう。
- 愛犬がオモチャを離したら、オモチャを持っている手を胸のあたりまで上げ、愛犬が一旦落ち着くのを待ちます。このときに愛犬が飛びついてきたり、吠えて遊びを催促している間は絶対に遊びを再スタートしてはいけません。
- 愛犬が催促せず、落ち着いて待っていられたら遊びを再開。1~7を繰り返します。
WAN!ポイント
- 力加減に気をつけよう
- 引っ張る力加減を最初から強くし過ぎてしまうとオモチャが愛犬の口から離れてしまい、犬によっては楽しくないと感じて諦めてしまう子もいます。最初はちょっと引っ張ってはすぐに緩めてあげ、「引っ張れば獲物を奪い取れる。もっと引っ張りたい」と思わせましょう。引っ張る力加減を段々と強くしていくのがポイントです。
- 遊びの決定権は飼い主が持つ
- 愛犬が遊んでとオモチャを持ってきたから遊ぶ、ちょうだいの後に犬が催促するから遊び再開、犬が飽きたから遊び終了など、遊びの決定権を愛犬に持たせるのは飼い主さんとの関係においてよいことではありません。大好きなオモチャ遊びのルール、決定権を飼い主が持つことで犬は飼い主により注目し、言うことを聞いた方が得だと考えます。「遊びのスタート」「ちょうだい」「再スタート」「遊びの終わり」を飼い主が決めるようにすると愛犬の飼い主さんを見る目が変わってきますよ。
- 言葉ではなく、態度(行動)で伝える
- 「ちょうだい」を教える時、遊びで興奮している犬に言葉で言っても伝わりません(「ちょうだい」のコマンドが完成している犬は別です)。なかなか放さない愛犬に対して「~くん、ちょうだい」や「離して!」と言葉で説得しようとすると伝わらないだけでなく、飼い主さんもなんとか離させようと段々と言葉使いが強くなってくることもあり、よくありません。「動くものを追いかけ捕まえ、振り回したい」「動かないものには興味が沸かない」という習性を上手に使い、オモチャの動きをピタリと止めておくことだけを意識しましょう。
次回は、7時間目「子犬のトイレトレーニング」をお送りします。