イヌに教え、教えられ
第13回 ほどほどの努力で65点を続ける
スタッフォードシャーブルテリアが入ったミックス犬のレオンは、前の飼い主から捨てられた保護犬だった。今は、新しい飼い主が決まり、家族と暮らしている。
体重28kg、筋肉質な身体の馬力はものすごい。散歩ではグイグイと引っ張り、他犬を見ると強く興奮し、吠え掛かろうとする。
身体が大きく、力が強いレオン。レオンに悪気があるわけではないけれど、パパとママはそんなレオンと散歩をすることに怖さを感じ、出張トレーニングを依頼した。
トレーニングは、3段階に分かれる。
① 訓練士が、レオンに教える
② 家族が、散歩訓練のやり方を覚える
③ 家族が、レオンを訓練する
家族が散歩するときも訓練士と同じルールだと教える
外では興奮しやすいレオンにとって、食べ物を使った訓練は現実的ではなかった。
訓練は、
レオンがグイグイ引っ張ったり、興奮して吠え掛かろうとしたら、リードを一瞬ピッっと引き、「やって欲しくない」と伝え、お利口に指示通りに行動できたら、周りの目を気にせずたくさん誉めて、我慢する事を教えていく。
正しく叱り、目一杯誉めないと何が良くて悪いのかイヌには分かりづらい。学生時代に剣道をしていたパパは間合いを見て、ここというタイミングでやるのが上手く、レオンはすぐにパパに合わせ、引っ張らず、吠えかからないようになり、私はとても驚いた。
女性と男性、そして小型犬と大型犬では力の差がある。
大型犬のレオンをママが落ち着いて散歩できるようにすることは、決して簡単ではない。
パパと同じやり方ではなく、ママが続けられるやり方で、ママが困らないで散歩ができることを目標に約5ヶ月間練習し続けた頃、レオンとママに訓練の卒業の兆しが見えてきた。
まだレオンが身体半分前を歩いているが、引っ張らずにママのペースで歩けるようになった。
まだ他犬を見るとソワソワソワソワするレオンだが、興奮し過ぎたり、吠えたりせずに我慢できるようになった。
ピッタリ横に付いて歩き、他犬がいても落ち着いていられるのが100点ならば、今は65点。ママは、散歩が十分出来るから今のレオンと自分自身の状態でもいいと思っていたが、訓練士である僕に「これではダメ」と言われると思っていたらしい。
レオンとの散歩が怖かったママが「時間はかかったけれど、最初の頃を思い出すと今このようにレオンと散歩できることが夢のようです」と言ってくれた。
レオンと一緒に歩くママの姿に不安そうな様子がなくなった。
僕は、それが嬉しい。
レオンとの訓練がとてもうまく出来たパパと比べてしまうと、ママは日々の練習でうまくいかないことも多くあったはず。それでも続け努力をしてきたから今がある。
終わったら忘れてしまう試験前の一夜漬けより、毎日30分の勉強を続ける方が「身に付く」。これが、簡単でないことではないと私自身がよく分かっている。
レオンとのLessonは終わったが、毎日の散歩はこれからずっと続いていく。これからが本番だ、毎日の散歩こそが訓練のようなものです。
毎日ほどほどの努力を続けて、65点を出し続ける。これがママに出した一番難しい宿題かもしれない。
今回この話を記事にしたいとお話した時、「ダメダメ飼い主の私がメインになるのかな?すんなり終われば記事にすることもたいして無いですからね。書く事も満載でしょ」と明るく快諾してくれたママ。
そんなママならやってくれるでしょう!この宿題、レオンのためにもママに頑張り続けてもらいたい。
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