お悩みグセ解消エクササイズ
1時間目「チャイム吠え」
里見 潤 (ドッグコーチ)
縄張り(家)に近づき入ってくる人を、吠えて知らせる、追い払う番犬としての能力は家族からありがたく思われていた頃がありました。しかしマンションなど飼育住環境の多様化、ご近所との関係が希薄になったことで、吠え続けることは家庭で犬を飼う中での問題と考えられるようになりました。家や家族(群れ)を護ることは犬が生来持つ本能です。犬が悪いわけではなく、家族から喜ばれ、認められていたことが問題となったことに原因があります。とはいえ、吠え続ければ近隣からの苦情に繋がり、犬と生活する飼い主にとっては頭の痛い問題です。
チャイムに吠えることは犬にとって生来持つ大事な家族、縄張りを守るための本能であることを理解して受け入れ、その上で軽減させるベーシックなトレーニングをご紹介します。
(犬のタイプや性格、住環境やご家族のタイプによりトレーニング 方法は大きく変わりますことをご理解ください。また練習には協力者が必要です)
食べることが大好きな仔はオヤツを使います。遊ぶこと(ボール投げやオモチャ引っ張りっこ)が何より大好きな仔はボールやオモチャを使います。
【 判断テスト 】 オヤツを一粒づつ与えながらチャイムを鳴らしてもらう。
そのとき、チャイムに一旦吠えるが、すぐにオヤツの方が気になって欲しがるか、それとも吠え出すとオヤツどころではなく全く止まらないかどうかを観る。遊ぶことも同じようにテスト。愛犬にとってチャイム音と比べて何をすることが勝るのかを判断し、やり方を決めます。
大きな音に敏感で苦手な仔の場合はしっかりと止めるやり方を使います。
【 判断テスト 】 テーブルから落とした食器の音や金属音にとても怖がるなど、普段の愛犬の様子から大きな音に対する反応具合を観て判断する。
金属の缶の中に小銭を20枚程入れて振ると大きな音がなります。
しっかりと止めるほうが向いているタイプの仔には「小銭入り金属缶」を使います。
愛犬に向いている方法が分かったら早速トライしましょう。
大好きなオヤツを用意し、予め10数粒を手に持っておきます。チャイムが鳴ったら愛犬が音に反応して吠え出す前に手に持っているオヤツを愛犬の側に落とします。チャイム音よりもフードが落ちた音に反応するよう勢いを付けて落とすのがポイント。
チャイムが鳴り、吠え出したらすかさず金属缶を上下に強く振り大きな音を鳴らし、驚かせて吠え止ませます。数回練習し、チャイムに吠えなくなったらオヤツをあげるようにします。家族にとって良くない行動(吠える)は止め、良い行動(吠えない)をしたときに褒めるようにし、いけいないことと、してほしいことの両方を教えましょう。
【 注意 】
鳴らす大きさは愛犬がビックリして吠えが止まる程度。
元々怖がりな仔には怖がらせすぎないよう注意して下さい。
テーブルを叩くなどの音で十分に止まる仔などもいます。
※3以降はどちらのタイプでもやり方は一緒です。
何度か練習したら次はチャイムが鳴った後にすぐオヤツを落とすのではなく、一呼吸置いてみて下さい。チャイムが鳴った後、玄関の方やチャイムを見、吠えるのではなく飼い主さんに注目するようになっていれば、警戒心から吠えることよりも、チャイム音に期待感を持つようになってきたサインです。
以前は・・
チャイム音 = 誰かが縄張りに来る → 追い払いたいから吠える
これからは、
チャイム音 = 待っていればオヤツが貰える → 吠えない方が得
3まで確実に出来るようになったら次のステップ。予め手に持っていたオヤツをタ ッパーに入れ、犬の届かないところに置きます。チャイムが鳴ったらタッパーに入っ ているオヤツを手に取り、2と同じように落とします。実際の生活ではチャイムがいつ鳴るかは分かりません。オヤツを落とすまでの時間を段々延ばす練習をします。
チャイムが鳴ってからオヤツが貰えるまで30秒は静かにしていられるようになったら次のステップ。ここからは愛犬が出来ることや向き不向きによって方法を変えます。チャイムが鳴った後、吠えなかったことのご褒美としてオヤツを一つあげてからa、b、cの中から愛犬に向いている対応を選び練習します。
予め玄関から少し離れたところにマットを置きます。愛犬をマットまで連れて行き、マットの上でスワレかフセ。その姿勢のままマテを掛けます。飼い主は訪問者と対応します。その間、動きそうになったときはすかさず「マテ!」を掛け、勝手に動いたり、吠え出したりしないよう練習して下さい。練習時は長い時間待たせるのではなく途中で一旦愛犬の元に戻り、褒めてご褒美をあげ、愛犬の気持ち、集中を切らさないようにしましょう。訪問者がいなくなるまで静かにマテができたら沢山褒め、ご褒美(オヤツor遊び)をあげてください。
愛犬をハウスさせます。食べるのに時間が掛かるガム、オヤツが入ったコング(中が空洞でオヤツが詰められるゴム製のオモチャ)を入れ扉を閉めます。それから飼い主は玄関に対応に行きます。訪問者への対応が終わった後静かであれば褒め、ハウスから出してあげましょう。
愛犬にリードを付けて、玄関まで一緒に行きます。訪問者に匂いを嗅がせ落ち着いていれば褒めて、オヤツをあげます。
小型犬の場合は抱っこをしても構いません。ただ、抱っこをすることによって余計に興奮してしまうタイプの仔は抱っこは止め、リードを付けましょう。訪問者によっては犬が苦手な人もいます。その点を十分に考慮しながら相手にとって無理強いはしないよう対応してください。
最後まで上手に対応出来たらご褒美(オヤツor遊び)をあげて下さい。
チャイムで吠えられると飼い主さんも慌ててしまいがちです。バタバタと慌てながら玄関に対応することで愛犬にチャイム=一大イベントと印象づけてしまい余計興奮させてしまいがちです。練習の時から飼い主自身も慌てず淡々と対応するよう意識しましょう。
全く吠えないようにすることを目標にすると家族にも犬にも負担が大きく逆にうまくいかないことがあります。吠え出してもある程度で納まる、「フッフッ」と声が漏れる程度は許容する、吠え続かないことなどを目標にし、完璧を目指さないことも大事です。
※スワレ、フセ、ハウストレーニングについては、「愛犬としつけエクササイズ」をご参考ください。
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