アニマルライツ
イヌに教え、教えられ 第28回 互いに成長する関係
シェットランドシープドッグの「たら」は、元保護犬。
成犬になってから新しい家で飼われるようになりました。
里親家族と保護犬のマッチングをしていた私には、8歳と5歳の兄弟がいるKさん家族の和やかな雰囲気が、たらの性格に合うと感じてました。
今まで犬を飼ったことがないKさん家族。5歳の弟くんは、犬が苦手でした。
たらと初めて会った時、お兄ちゃんの陰に隠れて顔だけ出し様子をうかがっていた弟くん。
触りたいけど、怖い・・ 怖いけど、触りたい・・
たらが違う方を向いているとき、サッと触ってすぐ離れる。
こんな感じにKさん家族とたらの犬生活はスタートしました。
Kさんの家に、たらがやってきた初日。
部屋の中をクンクンと匂いながら熱心に探検するたら。
そんなたらが近づくと、「きゃぁ~」っと子供特有の甲高い声を出しながら逃げる弟くん。
【牧羊犬であるシェットランドシープドッグの気質は】
「大きな声・急に動く」ものに、反応し興奮して追う
もちろん、たらもその気質にもれることなく、本能で逃げる弟くんを追いかけていました(笑)。
私は、まず子供たちに犬を興奮させない接し方・声の掛け方・触れ合い方、興奮したときの落ち着かせ方をひとつづつ勉強してもらいました。
そして、次に練習したのが「おすわり」「おもちゃ遊び」「ハウス」です。
正式譲渡になるまでの数日間、
家庭訪問をする私に、たらとの練習の成果を「見て!見て!」といわんばかりにやってくれるお兄ちゃんと、徐々にたらと一緒にいることが楽しそうになっている様子の弟くん。
私は、そんな兄弟とたらをみて、「大丈夫、一緒に暮らしていける」と確信しました。
譲渡から2年経った頃。
お兄ちゃんとたらは、余裕いっぱいでとてもいい関係に、弟くんとたらは、時々兄弟喧嘩をする年齢の近い兄弟のような関係になっていました。
また、弟くんが他の犬(大型犬にも!)に自分から寄っていき、飼い主に確認をしてから、犬を怖がらせないように下からゆっくり手を差し出し挨拶できるようになれたとお母さんが報告してくれました。
子供の変化とたらの影響力の大きさに驚きました。
兄弟とたらは、互いに成長し合う関係になってくれていたのです。
そして、譲渡から6年が経った今年の夏。
ふとKさん家族とたらを思い出して連絡してみると、お母さんが明るく声でたくさんの嬉しい報告をしてくれたのです。
たらを通して、捨てられる犬の現実や保護活動に興味を持つようになった高校生に成長したお兄ちゃんの将来の夢は、私の想像を超えて膨らんでいました。
「保護犬を救うために県単位で条例つくっていては遅いから、自分が政治家になって法律を変えないと駄目だ!」から始まり最近は、
「MBAを取って起業して、お金持ちになり、犬を救う!」に変わったそうです。
また、尊敬している高校の担任先生のような「学校の教師もいいかな~」とも。
将来、そんな想いの一端を何らかのかたちで犬や動物のために使ってくれるようになってくれるかも・・と密かに期待しています。
若さとは、『自由と可能性の宝庫』
次、彼がどんな夢を思い描くのか・・楽しみです。
6年前、幼い2人と約束したのが「散歩をきちんと手伝う」ことでした。
学業・部活・遊びに忙しい毎日の中、時々さぼっちゃうこともあるらしいけれど、交代でたらの散歩に行ってくれているとお母さんが教えてくれました。
続けるって簡単なことじゃないからこそ、とても嬉しい。
そして、犬を怖がることがなくなった弟くんの日課は、毎日たらにチュッチュすることなんだって。初めて会った時、犬が苦手でキャーキャー言いながら走ってお兄ちゃんの後ろに隠れていた頃からは、想像がつかな位とってもいい関係になっていて、これまた嬉しくなりました。
お兄ちゃんが所属しているサッカー部の練習試合にたらを連れて行くと、みんなからかわいいと言われ鼻が高いとのこと。
話を聞いているだけで私の笑いが止まりません。
家族も、たらも、どっちも楽しそうなのが伝わってきます。
まぁ、たらがそれをどう思っているかは分からないのですが(笑)