動物の適正飼養管理方法等に関する検討会を重ね、
すべての人が納得がいく数値基準は難しくとも、
その中でも、関心が高い「繁殖回数と帝王切開手術の回数」について。
今回の数値規制では、犬の生涯出産回数は6回までとなりました。
そして、帝王切開の回数に関しては、見送られることになりました。
医学的な知識と技術を備えた獣医師でなければできない外科手術である「帝王切開」を一部のブリーダーが行っているという現状があると聞きます。
今後、どうやって数値化を具体的にしてこのようなブリーダーをなくすべきなのかを考える前に「帝王切開」がどのような手術で、どんなリスクがあるのか?
今回の世界の動物事情は、動物愛護について、動物虐待や違法行為などに関する「獣医法医学」を修了した認定法医学獣医師であり、アメリカ在住の現役臨床獣医師、シェルターメディシンでもある西山ゆう子さんの話から学んでいきましょう。
GORON 吉川奈美紀
西山ゆう子さんの情報サイトより(2020年10月26日)
https://yukonishiyama.com/cesarean-age-safety/
犬と猫の出産、および帝王切開について、多くの方から質問を受けました。
以下、臨床獣医師としての私の個人的な考えを述べたいと思います。
帝王切開とは
妊娠している母犬・母猫が、子を出産する時に、膣から出産するのを「経腟分娩」と呼びます。
一方、外科手術で腹部を切開し、子宮を切って子を分娩する方法を「帝王切開」手術と呼んでいます。
犬・猫の場合、経腟の正常分娩である場合は、獣医師や動物看護師の立ち合いが行われず、自宅などで、飼い主(あるいはブリーダー)の監視下のもとで行われることが一般的です。
一方、帝王切開は、りっぱな外科手術です。
手術の手法、無菌的操作、麻酔の導入とモニター、覚醒後の個体管理、疼痛管理、術中術後の感染予防など、獣医学知識と熟練したトレーニングが必要です。
それゆえ、帝王切開の手術は、獣医師のみ、施行することが許されており、通常は動物病院で行われます。
帝王切開手術が選ばれる理由
大きく分けて、2種類の帝王切開の手術があります。
・1つは、『緊急帝王切開手術』です。
正常分娩が期待されていたにもかかわらず、分娩経過が正常ではなく、胎児あるいは母体の生命を維持するためには、帝王切開をしなくてはならない、という場合です。
これを、緊急帝王切開手術と呼びます。
正常に出産することができない状態ですので、緊急に帝王切開をして、胎児を取り上げなければ、母親も、胎児も、死亡してしまう危険があります。
このような緊急時に行われるのが緊急帝王切開です。
陣痛が弱い、胎児の異常な体位などで、胎児が産道から出ることができない、あるいは、母体の体力がなくて弱ってきた、母体に内科的な異常が起こった、など、複数の理由で緊急帝王切開が選択されます。
・もう一つは、『計画的帝王切開手術』です。
これは、あらかじめ正常分娩が無理であろうと決断された場合に行われます。
退治のサイズが大きく、物理的に難産が予想される場合、過去に陣痛が弱く、正常分娩ができないと判明している個体があります。