殺処分ゼロを目指して
~「ちばわん」の活動から~
~「ちばわん」の活動から~
第4回 一匹でも多く助けるためには
‐ペットを取り巻く社会的な課題はどのようなところにあると思いますか?
まずは一般の人の意識の問題があるのではないでしょうか。日本人は流行に流されやすいので、映画やテレビなどのメディアで使われるとその種類がとにかく売れるようになります。売れるとなれば、悪質なブリーダーはその種類だけ繁殖させて、流行している間にできるだけ利益をあげようと躍起になります。販売する側の規制ももちろん必要だとは思いますが、買う側の意識が変わることがまず第一ではないでしょうか。売れなくなれば、悪質な業者は自然と別の仕事にシフトしていくと思います。彼らは決して動物が好きでやっているわけではないですから。
‐メディアの問題もありそうですね。
テレビを見ていると、とにかく子犬や子猫がたくさん出てきますよね。欧米では決まった週齢以下の動物の赤ちゃんをメディアに登場させることを虐待とみなす国もあるくらいですが、日本では出演者が喜んで「かわいい!」と連発していたりしますからね。
‐「かわいい」という気持ちに流されて、覚悟もないまま衝動的にペットを買ってしまうということにもつながりますね。
そう思います。愛護センターに収容されている犬や猫は、飼い主が自ら持ち込むケースも非常に多いんです。不妊・去勢手術をせずに「生まれちゃったから」と何度も子犬や子猫を持ち込んだり、「引っ越すから」などという理由ともいえない理由で、簡単に今まで一緒に暮らしていた動物を持ち込む人がいます。動物と一緒に生活を始める前に、一生面倒を見ることができるのかをよく考えてほしいです。
‐千葉県動物愛護センターとはどんなところなのですか?
飼い主が「飼えなくなった」と持ち込んだり、放浪しているところを捕獲された犬や猫の保護施設です。もちろん終生保護できるわけではなく期限が来れば殺処分されます。持ち込まれる数も、捕獲される数も非常に多いので、そうせざるを得ないというのが現状です。
‐安楽死でしょうか?
いいえ。二酸化炭素ガスによる窒息死です。でも誤解しないでいただきたいのは、愛護センターの職員さんたちも泣く泣く処分しているということです。愛護団体のスタッフやボランティアに「この子はとてもいい子だよ」「あの子もいい子だよ」と声をかけ、ぜひ保護してほしいと訴えます。一匹でも多くの子に生きるチャンスを与えたいという気持ちでいるのです。
‐愛護センターを知らない一般の人の認識とはギャップがありそうですね。
本当にそうですね。愛護センターの職員の方々が、動物たちのためにどのくらい尽力されているか知ってほしいと思います。センター主催の譲渡会なども開催されていて、積極的に新しい飼い主さんを探そうと活動しています。センターには「なぜ犬を殺すのか」という苦情が多く来るそうですが、ぜひやめていただきたいです。犬や猫を死に追いやっているのはセンターの職員ではなく、かつてその犬や猫を飼っていた人たちです。
‐捕獲される犬は野良犬が多いのでしょうか?
いいえ。迷子はもちろん、捨てられたケースもあると思います。多くの犬は首輪をつけていますし、人慣れもしていてお手やおすわりができるなど、あきらかに人に飼われていたらしい子が多いんです。ただ、首輪がついていても鑑札や迷子札が付いていることはほとんどありません。放浪の末、首輪も迷子札もなくなっているということもあります。そういう時マイクロチップが役に立つのですが、千葉県で捕獲される犬でマイクロチップが入っている例はほとんどありません。連絡先さえわかれば飼い主のもとに戻れるのですが。
‐飼う側の意識の低さこそが問題なのですね。
久しぶりに外気に触れる
そうですね。人気の犬種がどんどん繁殖されて売られている一方で、多くの犬が殺処分されているという現状を、どこかおかしいと感じてほしい。まずは知ることが大事だと思います。そして、ペットを飼う人だけでなく、社会全体がペットを取り巻く問題に目を向けるようになってほしいと思います。
‐飼い主の意識を向上させるにはどうすればいいでしょうか?
ひとつには、獣医さんから一般の飼い主への教育が大切だと思います。獣医さんからはもっと積極的に不妊・去勢手術やワクチンの重要性を伝えていただきたいと思います。被災地の支援でも感じることですが、都市部以外では不妊・去勢手術を受けているケースが非常に少ないです。また、混合ワクチンやフィラリア予防について知らない飼い主さんがたくさんいます。都会では15年くらい生きられる犬も、地方だと9年くらいで亡くなることが多いのですが、ほとんどフィラリアや感染症です。家族に愛されている幸せな犬も、飼い主に予防の知識がないために長生きできないということもあるんです。
次回に続きます。
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