アニマルライツ

犬や猫の出産と帝王切開を考える 「帝王切開手術に関する疑問」

西山ゆう子さんの情報サイトより(2020年10月26日)
https://yukonishiyama.com/cesarean-age-safety/

【質問1】 帝王切開は、安全な手術ですか?

帝王切開による、母体(母犬、母猫)の致死率は、0から2パーセントと報告されています。
また、胎児の生存率は、一般に、70-90パーセントとされています。
(S. Anthony Kahn, DVM) もし緊急帝王切開をしなければ、胎児も母体も死亡してしまう可能性を考えると、手術をすることで、胎児と母体を高い確率で救うことができることになります。
帝王切開手術をすると、胎児にも麻酔が影響し胎児の死亡が問題だと聞きましたが、帝王切開手術のためには、麻酔が必要です。
母体に麻酔をすると、胎児にも麻酔がかかってしまいます。
それゆえ、昔は、なるべく軽く麻酔を導入し、母親が軽い麻酔状態で手術をするということが行われた時代もありました。
しかし、現在では、疼痛管理や痛みのコントロールが発達し、軽い麻酔で帝王切開をすることは、倫理的に受け入れられなくなっています。
現在では、帝王切開手術時には、母体に局所麻酔や、硬膜外麻酔を併用し、母体が痛みを感じることなく、かつ胎児への麻酔影響を最低限に、帝王切開手術を行われるようになってきています。
私自身、過去30年間、臨床現場で帝王切開や様々な外科手術を経験していますが、疼痛管理の分野では、本当に医学の発展は目まぐるしく、どの外科手術でも、安全でしかも痛みを最低限にした麻酔方法がどんどん開発されて、それが、スタンダードになってきています。

【質問2】 帝王切開手術の合併症は何ですか?

やはり外科手術ですので欠点もあります。
手術時、および術後の子宮からの出血・子宮内膜炎・腹膜炎・皮膚切開部分の感染、そして疼痛などがあげられます。
また、子宮切開した部分が、その後、腹腔内組織との癒着を起こすこともあります。
癒着の程度や部位などにより、生きるのに差支えない程度の癒着から、腸の機能を阻害したり、腎臓や膀胱に影響を及ぼす場合もあります。

【質問3】 帝王切開手術は、何回もやってよいのでしょうか?
(何回までという医学的な制限はありますか?)

犬・猫の帝王切開手術を「生涯何回まで」と制限するという科学的なデータはありません。
帝王切開後の回復や後遺症は、個体差が大きいことなので一般理論として何回までと決めるのは難しいと思います。
一般に、帝王切開手術後、素早く回復できる犬もいれば、母体の体力の回復に相当な時間を要する個体もあります。
一般論として、犬の出産は、犬のサイズが大きいほど、年齢が若い(1歳から5歳程度)ほど、また妊娠出産した胎児数が少ないほど、そして授乳期間が短いほど、母体の回復が早いとされています。
しかし、勿論例外もあります。
また、帝王切開のほうが、正常分娩の時よりも、一般に回復に時間がかかります。
しかし、人間と同じでどれも個体差が大きいのは事実です。
一度帝王切開の手術をした犬・猫が、再び妊娠することは問題ないでしょう。
(子宮破裂など合併症がある場合など一部を除く。)
しかし、母体が完全に回復し、妊娠授乳によって失った体内貯蓄の栄養分を十分に補ってから、再び妊娠するべきです。
帝王切開手術は、一度行うと子宮の切開部分に瘢痕が残り、その部分の張力がやや弱くなります。
また、子宮の切開痕に腸間膜などが癒着し、さらに次の帝王切開をする時に、出血などのリスクが上がることがあります。
帝王切開手術は、回数を重ねると手術の難易度が上がり、合併症も起こしやすくなると言われています。
ただし、やはりこれもケースバイケースでしょう。

 

犬や猫の出産と帝王切開を考える 「帝王切開とは?」

犬や猫の出産と帝王切開を考える 「生涯出産回数や頻度に関する安全性について」

吉川 奈美紀

吉川 奈美紀

投稿者の記事一覧

(きっかわ なみき)

ヨガ・ピラティス・空中ヨガ インストラクター
メディカルアロマアドバイザー

関連記事

  1. 多頭飼育のお宅訪問レポート!7匹の保護猫との暮らし《後編》
  2. 犬フンゼロ宣言!! ゆりのきワンコまつり「ここから」
  3. 『パックウォーク』のすすめ – 2
  4. アメリカの動物事情 第9回 TNR(地域猫)
  5. 「犬と音楽」犬にいい影響をあたえる音楽
  6. 殺処分ゼロを目指して~「ちばわん」の活動から~ 第8回 私たちに…
  7. 猫のトレーニングをしてみよう!
  8. 2020年動物愛護法改正を基に非獣医の帝王切開手術を考える「法律…

今月の人気ランキング

PAGE TOP