世界の動物事情

外国で犬と暮らす―フィリピン中部ボホール島―

外国で犬と暮らす
―フィリピン中部ボホール島―

尾上未夏さん・ヒメちゃん

    


 日本でペットを飼っていた人は、海外に住んでもなおペットとの暮らしへの思いは強いものです。そしてもし、周囲の協力があり環境が整っていれば、ペットと暮らせる可能性は十分あります。今回は、フィリピン中部ののどかな島ボホールで暮らす、スキューバダイビングのインストラクター尾上未夏さんとチワワのヒメちゃんをご紹介します。

ヒメちゃんとの出会い

 未夏さんがボホール島で愛犬のヒメちゃんと暮らして、のべ4年がたちます。未夏さんとヒメちゃんは毎日一緒に出勤しており、同じアパート内には職場の日本人スタッフも住んでいます。ショップでのヒメちゃんはダイバーのお客様の人気者ですが、お昼寝好きで鳴くこともなくおっとりした性格のため、未夏さんの仕事中ものんびり過ごしているようです。
 ヒメちゃんは、お隣セブ島の大型モール内にあるペットショップから未夏さんの元へやって来ました。未夏さんは日本でも実家に常に犬がいたため、ボホール島でも犬の居る生活がしたいと職場で訴えていたところ、オーナーがサプライズでヒメちゃんを買ってきてくれました。その時から未夏さんが実質的な飼い主となり、自宅で育てることになりました。
 「こっちでは、一緒に出勤できて一緒に帰れる環境でよかったです。逆にそういうことができず、犬をずっと家で留守番させたままという状況なら飼わなかっただろうと思います」と未夏さん。未夏さんが一時帰国の際や仕事で留守の時にも、職場のスタッフがサポートしてくれるので安心です。

日本と違うこと

 現在のフィリピン中部では、賃貸物件はほぼペット飼育可となっています。ペット可や不可という決まり自体がありません。野良犬や番犬以外の、ペット犬というものが現れたのもごく近年のことです。それゆえ、フィリピン人のおおらかな性格も相まってか、まだ良くも悪くも公共マナ―はゆるく、厳しくありません。
 未夏さんがヒメちゃんの散歩中、フンを拾ってごみ袋に入れていたら、周囲から「犬のフンなんか拾ってどうするの?!」と驚かれ、異様な目で見つめられるそうです。現地では飼い主がフンの始末をする習慣がなく、そのまんまです。

ペット犬を飼う人が急増中

 また、純血統種の犬を飼っているのも、外国人やごく一部の富裕層のみです。「ボホール島でチワワを飼っている人はほとんどおらず、一歩外へ出れば子どもから大人までが近寄ってきて、ヒメは人気者です」と未夏さん。
 犬に服を着せている人もほぼおらず、フィリピン人の感覚にはまだしっくりこない様子。ヒメちゃんはダイビングショップのユニフォームと同じデザインの服を、現地の仕立て屋さんが作ってくれ、それを着ています。

 実は、ヒメちゃんが買われてきたセブ島のペットショップも、現地では生体も商品も高額ですから、庶民向けではなく富裕層や外国人向けです。中部地方では珍しく、日本のペットショップに近い作りの店舗で、仔犬から小動物、珍しい熱帯魚類、ペットグッズまで品ぞろえが豊富です。
 未夏さんは、この数年を振り返ってこのように語っています。「現地の人の生活レベルが向上してきて、みんな豊かになってきました。TVや芸能人などの影響もあってか、犬を飼う人が増えてきました。こちらでは、犬を飼うのは車を買うのと同じように、自分のステータスを表すものでもあるんです。」

気を付けてきたこと

 現地では、日本にはない苦労もあるようです。「散歩の時に、うろうろしている野良犬や放し飼いの犬を見つけたら、大回りして出くわさないように避けています」と未夏さん。いきなり噛みついてくることはないそうですが、興味津々で匂いを嗅ぎに来て、取り巻かれてしまうと言います。外の犬との接触では、ノミや皮膚病などが移る危険性もあります。
 ペットを飼う人の急増に伴って、今では動物病院も増えつつあります。幸い、ヒメちゃんは重い病気にかかったことはなく、動物病院では狂犬病やフィラリアなど規定のワクチン接種や爪きり程度。「でも、ヒメを飼い始めた当時は動物病院が1軒しかなく、選ぶ余地がありませんでした。いずれにせよ、いざ病気になった時にヒメのことを覚えてもらっておけるように、大した用がなくても爪切りがてら、普段からちょこちょこ顔を出すようにしていました」と、関係づくりも怠りませんでした。
 「犬を育てるのは、日本でも海外でも基本的には同じで、最初のしつけが肝心です。それさえしっかりやっておけば大丈夫です」と未夏さん。「フィリピンだからということで、これまでヒメとの生活で、特に困ったという経験はなかったです」と振り返る。「むしろヒメとの生活は楽しいことばかりで、毎日ヒメに癒されて暮らしてますよ!」と、笑顔で語ってくれました。

○ヒメちゃん:2007年5月生まれのもうすぐ8歳。体重約3キロ。
○尾上未夏(オガミ ミカ)さん:33歳。GOOD DIVING SHOPのスキューバダイビングインストラクター。マリンダイビング誌のダイブ&トラベル大賞2013年、2014年でベストガイド部門1位に選ばれ、今年3連覇を目指しているはつらつ女性。


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