しつけ・ケア

ペットの心身の健康に主体的に関わる~ホリスティックケア~ 第2回 ハーブでペットの体調管理

 

ペットの心身の健康に主体的に関わる
~ホリスティックケア~

第2回 ハーブでペットの体調管理

 


 まだまだ豊かな自然が残されていた昔、主に野外で生活していた犬や猫などは、それぞれの必要に応じて草木や雑草を口にしていました。今でも飼い犬や飼い猫が草を食べる光景を見るのは珍しいことではありません。お気づきの方も多いと思いますが、彼らはやみくもに植物を口にしているのではなく、選んでいます。動物は本能的に、どの植物が自分の必要を満たしてくれるのかをちゃんと知っているのです。

ハーブとは何か

 ハーブはラテン語のHERBA(薬草の意)を語源とする言葉です。人間も太古の昔から、世界中の至る所で身近な植物を利用してきました。生活の彩りや料理のスパイスとしてはもちろん、薬としても。そして経験的に、どの植物にどんな働きがあるのかを学んできたのです。現在も使われている医薬品の多くは、ハーブに含まれる成分の中から有効なものだけを抽出し、人工的に合成することで生まれました。例えば、キナの木の樹皮から抽出された“キニーネ”は鎮痛・解熱剤として、コカの葉から取れる“コカイン”は麻酔薬として、またポピーの種から取れる“アルカロイド”は、強力な鎮痛剤“モルヒネ”として有名です。

一般的な医薬品が単一成分なのに対して、ハーブには非常に多くの成分が含まれています。だから特定の部分に作用するのではなく身体全体に働きかけ、そのバランスを整えるのが大きな特徴。即効性があるとはいえませんが、正しく使えば、その穏やかな作用は医薬品よりも格段に負担が少ないのです。ただ、ハーブのような自然のものを利用する際にありがちなのは、“自然のもの=安全なもの”と勘違いすること。使い方によっては、ハーブといえども必ずしも全てが安全というわけではありません。人間よりも身体の小さな動物に与えるならば尚のことです。

ハーブを安全に利用するために

今回は、ハーブを含めたホリスティックケアに大変詳しい、獣医師の牧口香絵先生にお話を伺いました。ハーブを安全に利用するために押さえておきたいポイントをお伝えします。

‐ハーブには一般的に生とドライがありますが、どちらがいいのでしょうか?

ドライハーブをお薦めします。プランターで栽培している生ハーブももちろん使えないことはありませんが、ドライハーブに比べて大量に摂取しなければならないのです。食事と一緒に与えるのは、ペットに負担を強いることになりかねません。

‐どのように与えるのですか?

動物の種類によって違いがありますが、犬や猫など肉食系の動物は植物の消化が得意ではありません。食事に混ぜて与える場合は、ミルミキサーなどで微粉末状に粉砕して消化しやすい形にする必要があります。その動物にとって害のある成分が含まれず、また香りや味を好むものならば、ハーブティーをお水の代わりに飲ませてもOKです。例えば「リンデン」のお茶は香りが良く味がまろやかで動物にも比較的好まれるハーブティーです。水分を取らせたいけれどお水はなかなか飲んでくれないというときには試してみてください。リラクゼーション効果も期待できます。

‐外用としては使えますか?

はい。温湿布としても使えます。ハーブティーにタオルを浸して、固く絞って患部に当てるだけでも効果があります。例えば痛みには、炎症を抑える作用が期待できる「ジャーマンカモミール」が有効です。乾燥による痒(かゆ)みには、同じく「ジャーマンカモミール」のほか、保湿効果のある「マシュマロウ」なども効果的です。また、シニアの床ずれ対策や身体の清浄には、フローラルウォーター(植物から精油を抽出する際にできる副産物)を使うといいでしょう。香りによるリラックス効果も期待できます。

‐食事に取り入れる場合、どのくらいの期間与えればよいのですか?

ハーブは正しい選択をすれば、その動物の年齢を問わず、また期間を限らず、ずっと継続して健康管理に用いることが可能です。季節に合わせてハーブの選択をすることで、特定の時期に起こりがちな不調に備えることも出来ます。例えば、冬は代謝が落ちて体温が下がる傾向がありますが、寒くなる1ヶ月前から腎臓のケア・身体を温める・乾燥対策などに的を絞ったハーブを与えることでトラブルを回避することが可能です。逆に春は代謝が上がり、解毒臓器が活発に働き始めます。と同時に、ワクチン接種やフィラリア予防などが始まる季節でもありますから、リンパと血液の浄化・腎臓と肝臓のサポートを考慮してハーブを選ぶといいでしょう。健康上トラブルのある子の場合は、まずは3ヶ月続けてみてください。ハーブの効果は緩やかですから、ある程度の時間をかけて身体に変化をもたらします。おおむね3ヶ月経過した頃に血液検査などの数値を確認して、改善が見られなければ他のハーブに変更するなどして対応します。いずれにしても、何らかの症状のある動物にハーブを与える場合は、ハーブに詳しい専門家に相談することが大事です。もちろん健康な子でも、体調の変化を注意深く見守ることが必要です。

‐毎日の食事にプラスできるお薦めのハーブはありますか?

特に健康状態に問題がなければ、犬にお薦めなのが“基本3種”と呼ばれている「ダンデライオン」(ビタミン・ミネラルの補給、便通を整える)・「ネトル」(腎臓のケア・体質改善)・「ローズヒップ」(ビタミンCとEの補給)です。また、基本的な免疫機能がきちんと働いていることが前提になりますが、「エキナセア」は免疫力アップに役立つハーブとして有名です。

‐ハーブを購入する際に注意することはありますか?

店舗で購入する場合は、きちんと管理されているかどうかをよく確認して下さい。花や葉がきれいなもの、新鮮なものを購入するようにしましょう。ハーブは湿気や光・熱に弱いので、無造作にガラス瓶などに入れて日向に陳列しているようなお店は避けたほうがよさそうです。

‐お薦めのネットショップはありますか?

生活の木(http://www.treeoflife.co.jp/)やグリーンフラスコ(http://www.greenflask.com/)はきちんと管理させており、お薦めできます。

‐ハーブに興味のある方に、お薦めの書籍があれば紹介してください。

一冊挙げるとすれば『Herbs for Pets ペットのためのハーブ大百科 SECOND EDETION』(グレゴリー・L・ティルフォード、メアリー・L・ウルフ著 / Nanaブックス刊)でしょうか。専門的で高価な本ですが、ペットに特化したハーブの使い方についてかなり詳しく記されているので勉強になると思います。

 

牧口香絵先生は、ご自身でもペットのためのメディカル・ハーブ講座やホリスティックカウンセリングを随時開講しています(下記HPおよびblog参照)。ハーブは使い方を間違えれば毒にもなりうるもの。ぜひ正しい知識を身に付けて、ペットの健康管理に役立ててください。


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牧口香絵先生プロフィール

1998年麻布大学獣医学部獣医学科卒業。動物病院にて一般診療に従事後、渡米。NY州コーネル大学獣医学部Animal Behavior Clinicにて、犬・猫・馬の行動学・しつけ・行動治療を学び帰国。現在は神奈川県内の動物病院で犬・猫の問題行動の治療を専門に臨床に関わる傍ら、全国各地でセミナー・講演活動などを行っている。

著書「愛犬をやさしく癒すクリスタルヒーリング」
HP:http://pet-consul.com/ / blog:http://ameblo.jp/pet-consul/

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