アメリカの動物事情
第4回 仔犬/仔猫の社会化と
狂犬病と避妊/去勢について
狂犬病と避妊/去勢について
犬は群れで暮らす動物であることから、意思の疎通や感情の理解といったコミュニケーション能力が発達しています。 猫は明確な群れを作るわけではありませんが、ゆるやかな集団の中で独自のコミュニケーションをとっています。
このコミュニケーション能力は生まれつき備わっているものではなく、生後3週~12週くらいまでの「社会化期」と呼ばれる時期に母親や兄弟と過ごすことで培われていくのです。
社会化期は、その過ごし方が犬や猫の一生を左右すると言われるほど重要な時期です。健康面での問題はもとより、この時期に親犬や兄弟と離して他の犬・猫との触れあいを経験せず、人間(飼い主)としか接していないと、精神的に安定しないまま成長してしまい、様々な問題行動を起こす可能性が高くなるのです。
しかし、日本ではまだ仔犬や仔猫の社会化期については認知度が低く、生後8週間未満の生体が展示販売されていることも珍しくありません。
アメリカでは、犬や猫の問題行動・健康問題は、幼少時の社会化期が大きく影響していると考えられており、わたしの住むメリーランド州をはじめ、ほとんどの州では、生後8週間未満の動物の売買や譲渡は法律で禁止されています。そして社会化を育むためにシェルターではパピークラス(仔犬の保育園)と言う教室が主催されており、ここでは犬同士、他の飼い主とのふれあい、基本のコマンド(おすわり、待て、伏せ)を教えてもらうことができます。
アメリカは狂犬病の発生国です。ですから狂犬病の予防接種は飼い主と動物を譲渡するシェルーやレスキューに義務づけられています。そしてMD州では避妊去勢に関しても早期の避妊・去勢手術が一般的で、生後8週間または一定体重を超えると手術が行なわれ、シェルターやアニマルレスキューの譲渡動物は避妊・去勢、狂犬病の予防接種が義務付けられています。
国を挙げて保健所収容動物の削減を目的とした避妊・去勢手術を推奨しているので、シェルターやアニマルレスキューでは譲渡の際に避妊・去勢手術が義務化されています。不妊手術を広めるためにシェルターに併設されたクリニックでは普通の動物病院より安い価格で(2,000円~3,000円程度)で実施、狂犬病の予防接種は500円程度で受けることができます。
日本の常識ではなかなか感情面で受け入れ難いことですが、私の住む州では、生後2ヶ月を過ぎた動物には避妊・去勢手術を実施しています。
動物病院では保健所収容動物の削減以外にもペットたちの健康面での不妊手術のメリットを飼い主さんに説明したり、ペットホテルやドッグラン、グルーミングを利用する時には、狂犬病の予防接種と避妊・去勢手術を済ませた動物しか入れないケースも多く、自然と予防接種や避妊・去勢手術に対する認識が高くなる仕組みができ上がっています。
次回は、成犬成猫の譲渡と、マイクロチップ・迷子札の普及について
【Dear Paws】
「アメリカの動物事情」より 2012/10/26引用
【注意】このテキストは2010年9月の情報です。告知なく変更や訂正をする事があります。また、文中アメリカと表現していますが対象はメリーランド州に限定しています。アメリカの動物に対する取り組みや考え方は州法や自治体、生活形態により違いがあるため、内容が全米に共通している訳ではありません。
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