アニマルライツ

アメリカの動物事情 第3回 アニマルレスキューグループ(動物愛護団体)

      アメリカの動物事情

      第3回 アニマルレスキューグループ

                (動物愛護団体)

    


   シェルター(施設)を持たない愛護団体の事。
   時にシェルターと呼ばれる事も。

 

日本と同じように、保健所から収容動物を引き出し、譲渡会やオンラインでの動物の譲渡を目的としている団体で、シェルターとアニマルレスキューとの関係は密接です。

アニマルレスキューは、シェルターや他のレスキュー同士で連動して殺処分ゼロを目指しており、キラーシェルターにとっても、レスキューとの繋がりは動物を救う上で欠かせない存在です。

たとえば闘犬で有名なピットブルは「性格の如何にかかわらず即日殺処分」と州法で決まっているシェルターがあります。
そのシェルターではピットブルが収容されると、職員が即座にピットブルに対する規制が弱い他州のアニマルレスキューに連絡を入れ、州をまたいで1匹の犬の保護に励みます。

 


▲ピットブル。州によっては譲渡はもとより飼育そのものが禁止されていることも。

 

ピットブルに限らず、猟犬、シェパード、小型犬専門のレスキューや、ブリードレスキューと呼ばれる特定犬種だけをレスキューする団体があり、アニマルレスキューも日本に比べると細分化されているように思います。たとえばダルメシアンが収容されると、優先的にダルメシアン専門の団体に連絡が入り、運動量や懸念される特定疾患などの情報提供や保護支援を得ます。
 
また、負傷した動物の治療費が高額になった場合には、複数の愛護団体が協力して呼びかけを行なったり、パピーミル(動物を大量生産する悪質ブリーダー)や閉鎖するシェルターからなど、保護する動物が多いケースでは、全米からアニマルレスキューが終結することもあります。

 

   アニマルレスキューの仕組み

アニマルレスキューはシェルターと違い施設を持たないため、動物たちの安全が確保できる一時預かりのフォスターホーム(一般家庭のボランティア)を多く抱えています。
保健所から引き出した動物たちは、ボランティアの運送で各家庭に持ち込まれます。(レスキューによっては、フォスターホームに対し、餌やトイレ、おもちゃ、首輪などを支給しているところもあります)
米国でレスキューを開設する際、レスキューと提携している獣医がいることを証明する必要があり、証明できないと設立はできません。その獣医は、譲渡前のすべての動物に避妊・去勢手術と狂犬病予防接種を行なうよう、定められています。
施設を持たないレスキューでは主に、ウェブサイトやペットストアでのアダプションイベント(里親譲渡会)で、譲渡希望者と動物たちを引き合わせています。

 


▲ペットショップで週末に開催されるアダプションイベント

 

   アニマルレスキューから動物を譲渡

しかしどのレスキューでも、ネット上だけのやりとりや譲渡会当日での譲渡はしていません。譲渡希望者は申し込み用紙を記載し、マンツーマンで面接が行なわれます。
申し込み用紙には家族構成や職業、住宅環境はもちろん、年収や犯罪歴(家族含む)、獣医の記録(支払い状況や、過去のペットがどのような形で死亡したかが調査されます)、家族全員のアレルギーの有無など、細かい情報の提示が求められています。
アメリカではプライバシー保護がうるさく、就職時の履歴書でさえ家族の経歴を訊かれることはありませんが、動物の譲渡では、人間の子どもを養子にするのと何ら変わらない条件が求められるのです。
 
里親の申し込み用紙にはしつけの仕方や健康管理についてQ&Aで答えるフォームがあり、誤った回答をすると譲渡を拒否されることも少なくありません。申し込み用紙が受理されてからも家庭訪問や連帯保証人の調査があり、申し込み用紙を提出してから実際に動物が家に来るまで、2週間~1ヶ月ほどの時間がかかります。
 
参考:アメリカの譲渡申し込み用紙の例(RECYCLED LOVEより)

 


▲子供のいる家庭では成犬をすすめる事が多い

 
このようにどのレスキューも譲渡者に対して非常に厳しい制限を設けています。
難易度の高い審査を通過すること、譲渡までに長い時間を要することで、衝動的に動物を飼おうとする希望者を抑制し、譲渡希望者に飼い主としての自覚を芽生えさせる効果があるとも言われています。
レスキューから譲渡を受けた場合、多くはトライアル期間があり、譲渡から2週間~1ヶ月後に再び審査が入ります。その際に、動物との相性が悪かったり、動物と飼い主さんの運動量がつり合わなかった場合はレスキューが再び動物を回収し、ベストマッチな飼い主が現れるまで面接を繰り返します。
万が一、トライアル期間を過ぎた後にでも、譲渡動物をリホーム(手放すこと)する時は必ずレスキューに連絡を入れるよう、誓約書にサインする決まりになっています。
 
このように厳しい面ばかり挙げるとレスキューからの譲渡に躊躇しますが、どのレスキューでも経験豊かなスタッフがペットの飼育経験がない人や、ペットを飼いたいがどのような動物が自分と相性がいいかわからない希望者に対してカウンセリングや相談窓口を設けています。
そして譲渡希望者の不安や不満を解消し、動物の種類(極端な話、犬の譲渡希望者に猫を勧めることもあります)、サイズ、運動量を目安に、めぼしい動物がレスキューに保護されると連絡が入るようなシステムを作っているところもあります。
 
また大きな利点としてレスキューグループで保護されている動物はフォスターホームで保護されているので、シェルターの動物よりも大変リラックスしており、人と暮らした際の癖や性格が正確に把握されています。必要な子にはトレーニングも済まされているため、シェルターの動物よりも返却率が低く、譲渡者の満足度もレスキューグループからの譲渡が一番高いと言われています。

 

   保健所収容動物検索サイト

米国全土のシェルターやアニマルレスキューに収容・保護されている動物が、一度に観覧できるウェブサイト。犬、猫、うさぎ、馬、牛、爬虫類、性別/年齢/犬種/毛の色・長さ/で検索できるようになっています。また、ハイキラーシェルターに収容されている、収容期限間近の動物だけを検索できるサイトや最寄りの保健所を検索するサイトもあります。


▲保健所検索サイト(Animal Shelter Org)
www.animalshelter.org
▲シェルターの保護動物検索(Pet Harbor)
www.petharbor.com
▲ハイキラーシェルターの収容されている犬の検索サイト(Dog In Danger)
www.dogsindanger.com
▲アメリカ全土のシェルターと愛護団体を網羅した検索サイト
www.petfinder.com
www.pets911.com
www.adoptapet.com
 

 

次回は、仔犬/仔猫の社会化について。

 

【Dear Paws】
「アメリカの動物事情」より 2012/10/12引用

http://dear-paws.com/

【注意】このテキストは2010年9月の情報です。告知なく変更や訂正をする事があります。また、文中アメリカと表現していますが対象はメリーランド州に限定しています。アメリカの動物に対する取り組みや考え方は州法や自治体、生活形態により違いがあるため、内容が全米に共通している訳ではありません。

アメリカの動物事情
第2回 シェルター(保健所)

アメリカの動物事情 第4回
仔犬/仔猫の社会化と
狂犬病と避妊/去勢について

Dear Paws 神野あきら

Dear Paws 神野あきら

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(かみのあきら)

ライター

アメリカ・メリーランド州在住。
現地で10年以上アニマルレスキュー活動に携わり、保健所の収容動物の保護やしつけ直し、スラム街での地域猫活動などを行う。
2010年アメリカNPO団体「SUNSHINE SMILE」を創立。
2013年メリーランド神奈川姉妹州委員会・動物福祉コミッティ委員長

Dear Paws ホームページ:https://dear-paws.com/

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