飼い主だから分かってあげたい!
ペットのSOS
Part(2) 多飲・多尿
前回に続き飼い主が注意しなければいけないSOSのパート2、今回は多飲・多尿についてです。
「うちの子はお水をいっぱい飲んで、おしっこもよくするのよ」。
「だったら、健康じゃないの!」。
こんな会話、どこかで耳にしたことありませんか? 確かに、お水をよく飲んで、おしっこもいっぱいするのはけっして悪いことではありません。しかし、
「この水の量がいつもの2倍になったら要注意」
というのは、「みずほ台動物病院」の兼島孝院長。
しかも、ある時から急に増えたとしたら、次にあげる病気のシグナルかもしれないというのです。
多飲・多尿で考えられるのは、まず1番に糖尿病です。人間同様、運動不足や栄養の偏り、ストレスなどが原因によるペットの生活習慣病が近年増えてきています。その代表選手が糖尿病。糖尿病とは、血液中のブドウ糖の血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンの作用が弱まる病気です。
ペットが糖尿病になる原因としては、不適切な生活習慣のほか、性ホルモンのバランスのくずれなどが考えられます。目立った症状がないため、①異常に水を飲みたがる(いつもの2倍以上)、②おしっこの回数が増える、③体重が減る、という状態が見られれば、糖尿病かもしれません。ペットがほしがってもおやつなどは禁物。かわいいあまりに餌を与えすぎたり、甘やかしたつけが少なくとも影響しているので、飼い主さんとしても我慢のしどころといえそうです。
さらに症状が重くなれば、食事療法に加えてインスリンを1日1~2回注射し、血糖値のバランスを整えます。完治は難しいので、インスリンの接種は生涯続くことになりますが、毎日継続的に習慣づけていければ、安定した状態で生活していくことも可能です。
糖尿病を予防するためには、十分な運動と栄養バランスの取れた食事、特に糖分や塩分、脂分の多いものをあげないようにして、太り過ぎに注意することです。定期的な血液検査も有効です。尿検査で早めに発見することもできます。
もう一つ、子宮蓄膿症も多飲・多尿をともなう病気です。
中高年齢期のメス犬に多く見られる子宮蓄膿症とは、通常無菌状態である子宮内膜に細菌が感染し、炎症を起こす病気を「子宮内膜炎」といいますが、その炎症が悪化して子宮内に膿汁が溜まってしまうのが「子宮蓄膿症」。子宮だけでなく病原菌の毒が全身に回って悪影響を及ぼす恐い病気でもあります。
症状としては、食欲の低下、嘔吐、脱水、発熱など。子宮内の膿汁の量が多ければ腹部がぽっこりして、最悪溜まった膿汁で子宮が破裂し、腹膜炎になる危険もあります。子宮口から膿汁が出たり、尾っぽの裏や陰部周辺の毛に膿汁が付着して悪臭を放つこともあります。さらに細菌による毒素が腎臓にダメージを与えることから、多飲・多尿も見られるようになるのです。
予断ですが、犬にも“想像妊娠”というのがあって、妊娠に失敗すると発情後にホルモン的に妊娠した場合と変わらない状態の「偽妊娠」になることがあります。通常は1~3週間で治まるので心配はいらないのですが、この偽妊娠が強くあらわれる犬は、子宮蓄膿症を発症するリスクが高いという結果も出ています。
治療としては、手術で卵巣と子宮を切除するのが一般的。早い段階で避妊手術を行えば、100%予防できる病気ですが、子犬を産めなくなるという現実があるので、飼い主さんとしてはどちらを選ぶかが悩み。細菌の働きを抑える抗生物質を投与するやり方や、子宮の収縮を活発にさせて膿を排泄させ、子宮内で細菌の感染しやすい環境を作る黄体ホルモンの働きを止める薬剤を注射する方法もありますが、再発率が50%以上と高めです。どうしても避妊手術をしたくない場合は、獣医師と相談して、正しい健康管理の仕方をアドバイスしてもらいましょう。
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